■■SWEET×SWEET■■


「今度の日曜日、俺の家に来ねぇ?」
金曜日の昼休み、ふたりで御飯を食べていると
ヒロ先輩はそんな風に言ってきた。
「先輩のお家ですか?」
「そう」
聞き返す私に、ヒロ先輩は、にこっと笑って答える。
「いいですけど…」
「日曜日さ、うち、誰も居ないんだ」
「はぁ…」
先輩は、ペットボトルのお茶を開けてそれを飲む。
その姿を見ながら、私が呆けているとヒロ先輩は人差し指で私の額を押した。
「俺が言ってる意味判ってんの?」
「え?意味って…」
「家に誰も居ねぇってことはつまり、ふたりっきりだって事なんだぜ?」
「え、あ…ふ、ふたりっきり…」
今更ながらにその言葉に慌てる。
いや、別に慌てなくても、私はちゃんと”そういう”覚悟は出来ている。
ただちょっと恥ずかしくなって、セーラー服のタイを意味もなく弄った。
もじもじしている私の手をヒロ先輩が握ってきて、微笑む。
「この間の続き、しようね」

私はサッカー部の部室で胸を先輩に弄られたことがある。
あのとき、最後までいかなくてよかったと思う。
やっぱり学校でっていうのはよろしくないと思えるし、
初めては、ちゃんと布団の上がいい…かな?と思えた。
…うっ照れるっ
顔がかぁっと熱くなった。
「…嫌なら今のうちに言う様に」
「嫌なんて事は、ないです」
「そう。それは良かった」
だって、先輩に触れられるのは気持ちが良い。
性的にっていう意味もあるけど、なんだろう…なんていうか
堪らなく心地が良いのだ。
「まだ付き合って日も浅いし、時期尚早っていう気もするけど、
でも、欲しくなった気持ちを止められそうにもないんだよな」
と、ヒロ先輩は独り言のようにして言う。
「いいですっ、先輩と、その、そうなっても、私全然構わないと思ってますし」
そういう風に私が言うと、ヒロ先輩は私をじぃっと見つめた。
くりっとした茶色の瞳が瞬いている。
「俺、本当に、真雪のこと好きだな」
自分に確認するようにヒロ先輩は言った。
小さく息をついて、またその瞳に私を映す。
「早く、その口が俺を好きって言ってくれるようになるといいんだけど」
「す、好きですよ?」
「うん…さんきゅ」
ヒロ先輩は私の言葉に照れるようにして言葉を返してくる。
好き
多分、ヒロ先輩が私を想ってくれているほどの想いは
まだないのかもしれないけれど、私は彼が好きだ。
ちらっと彼を見上げると、にっこりと人なつっこく笑ってくれる、
その顔が最高に好きだ。
背はすらりと高いし、顔も良いし、細く引き締まった腰がいい!
ああ、なんだか、ぎゅーっとされたい気分になってくる。
抱きしめて、抱きしめられて、互いの温度を感じ、
ヒロ先輩の香りを思いっきり堪能したい。

「…和也先輩、本当におまえのこと諦めたのかな」
不審そうにしてヒロ先輩は言った。
…和也先輩が私を好きだって言ったのは気の迷いだと思う。
水本先生に振られたショックで自暴自棄になって、
たまたま同じ香りを漂わせた私に、先生をちょこっとだけ
重ねちゃっただけなんだと私は思う。
今は、元の鞘に収まって、先生との関係を修復したみたいだから
私の事なんて気にする必要は、もうどこにもない。
「大丈夫だと思いますよ」
「なんでそんな風に言える?」
「え…えーっとなんとなく、ですけど」
「あてになんねぇな」
「そんなことないですよぉ」
「根拠があるの?」
「な…ないですけど」
和也先輩と水本先生のことは、
それが例えヒロ先輩であったとしても言えない。
だってそれが和也先輩との約束だから。
ヒロ先輩は憮然とした表情をする。
納得がいっていない顔だ。
「和也先輩だって、私のことはもう諦めたって言ったじゃないですか」
「それはそうだけどよ…」
「だから、もういいじゃないですか」
「おまえはどうなの?和也先輩のこと…」
「え?どうって…」
「いいなって思ってたんだろ?」
「…それは、でも…」
「和也先輩が諦めても、おまえのほうは…」
じろっと睨まれてしまった。
うっ…
「や…やだなぁ、私が好きなのは…ヒロ先輩だけですよ」
「ふぅん、本当に?」
「本当!本当です!」
「…」
「もういいじゃないですか。忘れましょうよ」
「ま、いいけど、そういうことでも」
こつんと頭を小突かれる。
一時は、私も自分がわけ判らなくなっちゃったけど、でも、今は。
私は、きゅっと先輩の手を握りしめた。
「信じているからね」
確認するように言うヒロ先輩に、私は微笑んだ。
「うん」



―――――日曜日。
私達は、先輩の家の最寄り駅で待ち合わせをした。
私とヒロ先輩の家は同じ沿線にあって、駅で3つしか違わないところにあった。
暁大学付属高校は私立校だからあっちこっちから通ってくる生徒が多い中、
こんなにご近所さんなのは奇跡に近い。
先輩の駅に着くと、改札の所ではもうヒロ先輩が待っていてくれた。
真っ白いセーターにジーンズ姿。
足が長くて、お尻が小さいのでジーンズがよく似合う。
うひゃあ、格好いい。
私はバーバリーチェックの茶系のワンピースを着ているが、
似合っているだろうか?
「すみません。待たせちゃいましたか?」
私がヒロ先輩のもとに駆け寄ると、先輩はにっこりと微笑んだ。
「ううん。そんなに待っていないよ。さ、行こうか」
「…駅から遠いんですか?」
「いや、歩いて5分ぐらい」
「あ、近いんですね。うちは10分ぐらいかかりますよ」
「へぇ」
雑談しながら歩いていると、あっと言う間にヒロ先輩の家に着く。
グレーの外観の6階建てのマンションだ。
分譲っぽい造りだなぁ…
ヒロ先輩はオートロックの扉を開けた。
入ってすぐの所にあるエレベーターのボタンを押し、
私達はエレベーターに乗り込んだ。
先輩は”5”のボタンを押す。
…五階なんだ
「…」
なんとなく無言になってしまう。
ちょっと気まずい。
落ち着きのない感じがした。
エレベーターが五階について、歩き出し”503”のところで立ち止まった。
「ここ」
ヒロ先輩はそう言って、黒い高級感のある扉を開けた。
「どうぞ」
「…お邪魔します…」
先輩は私を先に部屋に入れてから扉を閉める。
そして鍵を閉めた。
防犯上、ごく当たり前の行為なんだろうけど、どきりとした。
先輩が後ろから私を抱きしめる。
思わずぴくんっと身体が跳ねてしまった。
「シャワー浴びる?」
「い…いきなり、それですかっ」
「だって、おまえを抱くことを考えながら別の話が出来るほど、
俺は器用じゃないよ」
”抱く”と言われて心拍数が一気に上がる。
身体が、かぁっと熱くなった。
「そ、それじゃあ、シャワーを使わせてもらいます」
「うん、おいで」
先輩は部屋に上がって歩き出す。
入って3つ目の茶色の木の扉を開けた。
「ここがお風呂場だから」
そう言ってヒロ先輩は洗濯機の上にある棚からバスタオルを取り出して
私に渡す。
「…ありがとうございます」
「俺は、そこの居間で待ってるからね」
「…はい」
「じゃあ、使い方判らなかったら呼んで」
ぱたんと扉が閉められる。
私はワンピースの前ボタンに手をかけた。
なんだか、緊張する。
本当にヒロ先輩としちゃうんだと思ったら、顔が熱くなった。
ワンピースや下着を脱いでから、
洗面台にある鏡に自分が映っていることに気が付く。
見慣れたその貧相な体付きに、私は思わずがっかりしてしまう。
もうちょっと胸があったらなぁ…
…ヒロ先輩も、一度はこの胸を見ているのだから
今更がっかりとかしないよね?
私は胸を寄せてみた。
谷間が出来る。
いつもこのぐらいあればいいのにな…
はぁ、と溜息をついた。


シャワーを浴び終えて、私はまたワンピースに着替えて
ヒロ先輩が待っている居間に向かった。
「あの…その、お待たせしました」
「ああ、うん」
先輩は見ていた雑誌を閉じて私の傍に寄ってくると、そっと肩を抱いた。
「じゃ、俺の部屋に行こうか」
「…は、はい」
また胸がどきどきしてくる。
ヒロ先輩の部屋は、玄関から入ってすぐの所だった。
その部屋に足を踏み入れる。
ベッドが置いてあって、机があって、
ミニコンポがローチェストの上に置かれていた。
全体的にすっきりとしていて片付いている(片付けたのかも知れないけれど)
クローゼットの扉の所に、暁の白い学ランがハンガーに掛けてあって
見慣れたスポーツバッグがぽんと無造作に置かれてあったりして
それらが、この部屋の主がヒロ先輩なんだということを主張していた。
「真雪」
「…は、はい…あ…」
先輩が私にキスをしてくる。
短いキスをちゅっとして、それから長いキス。
唇を合わせあいながら舌を絡める。
ヒロ先輩の舌が、私の口の中のあちこちに触れ、
その行為が、私の官能を刺激した。
こういうキスをされると、頭がくらくらしてしまう。
「ん…ふ、は…」
少しだけ逃れるように身体を退くと、先輩が追ってくる。
抱きしめられて、口の奥の方まで舌を差し込まれた。
キスを続けながら先輩が私の胸に触れ、揉み始める。
あまり厚みのない私の胸は、先輩の手の中にすっぽりと収まってしまっていて
なんだか彼に申し訳ない気持ちになってしまう。
…なんて私が意識をそらしていると、
先輩がひょいと私を抱え上げ、ベッドまで運んだ。
私とヒロ先輩の重みに、ベッドのスプリングが軋む。
ぷちぷちと、ワンピースの前ボタンが先輩の手によって外されていく。
首筋には彼の唇の感触。
軽く吸うように先輩は私の肌を辿っていくので、
そのくすぐったいような感覚に私は肩をすくめた。
「何?」
「…だって、くすぐったい…」
「くすぐったい…か」
私の言葉を受けて、ヒロ先輩は困ったような表情をした。
だけど行為は続けていく。
胸元の前ボタンを全て外し、そこから先輩は手を入れてきた。
下着越しに胸に触れられて、ゆったりと揉まれる。
ふにふにと揉まれるその感触が心地よくて、
私は漏れそうになる声を押し殺す。
息を呑んで、唇を噛んだ。
「…痛いのか?」
少し焦るような先輩の声に、私は首を振った。
「…い、いいえ」
「そう」
ふぅっとヒロ先輩は息をついた。
「痛かったり、…その、嫌だったりしたら言って。
俺には、真雪がどう感じているか判んねぇから」
「あ、はい…」
先輩は相変わらず困ったような表情をしながら私の胸を揉んだ。
「…ワンピース、脱いじまおうか」
「えっ、あ…はい」
私が起きあがると、先輩はワンピースを捲り上げ、脱がした。
私はキャミソール姿になる。
服一枚無くなるだけでも、なんだか心細い気持ちになるから不思議だ。
私が身体を抱えると、ヒロ先輩はふんわりと私を抱きしめる。
「…好きだよ」
私も彼の身体に腕を伸ばしてヒロ先輩を抱きしめる。
セーター越しでも、彼の温度を感じることが出来た。
ぬくぬくとしてて温かい。
その温もりが、私の不安を少しだけ消してくれる。
「先輩…私も、好き」
背中に手を回されて、ぱちんとブラジャーのホックが外されると、
カップの部分が胸から浮き上がって、少し風通しが良くなる。
それがまた、私を不安な気持ちにさせていく。
隠そうとする私の腕を先輩が掴んで押し倒し、
キャミソールの中に手を差し入れてきて、
締め付けているもののない私の胸を直接触る。
胸の先端部に、ヒロ先輩の指の感触があった。
こりこりと弄られると甘く切ない感情がわき上がり、
身体が熱くなっていく。
「んんっ…あ」
ヒロ先輩の指の動きに身体が震えた。
私の先端部は、なんて敏感なんだろう、少しの摩擦でも甘い感触を放つ。
その放出されるものに私は戸惑いながらも、受け入れる。
先輩の手、大きい。
皮膚がすべすべしてて、なんて気持ち良いんだろう。
揉まれたり弄られたりする感触に翻弄されていく
するりとキャミソールが上までたくし上げられて、
私の素肌が先輩の目の前にさらけ出される。
やっぱり恥ずかしいという気持ちがあって、私が隠そうとすると
腕を掴まれて固定される。
ヒロ先輩が私を見ているのが判って、羞恥心に身体が熱くなった。
先輩の吐息が先端部にかかる。
ちゅっと小さく吸い上げられた。
「は…あ…んっ」
少し先輩の唇が触れただけなのに、電気を流されたかのように身体が痺れる。
その甘い痺れに眩暈がした。
ヒロ先輩が私の先端部を口に含む。
柔らかな彼の唇の感触を敏感な場所に感じて否応なしに声が上がってしまう。
「あっ…あ…や…ん」
「…こうされると、気持ち良い?」
艶っぽいヒロ先輩の声が耳に響く
少し息が上がったような彼の声音に何故か興奮を覚えた。
「どう?」
「ん…いい、です」
「そう」
また、彼の唇が私の先端部に触れる。
唇で摘むような感じで弄られ、その間にも舌先でちろちろと舐められる。
その感覚は、我を忘れそうになるほど気持ちが良かった。
空いている左の胸にも先輩の手が添えられて、揉まれたり先端を弄られたりする。
二重の快感で、私の足の付け根よりも深い場所が熱を帯びた。
「は…ぅ…ん…」
胸、すごく気持ちが良い。
ヒロ先輩の舌や唇の温度が更に私を高めさせていく
熱い。
私の身体も、先輩の身体も…
思考がふにゃふにゃに溶けた頃、下腹部にヒロ先輩の指を感じた。
そっとくすぐるように、ショーツ越しに辿っていく。
「ひっ…あ…ん!」
蕾の場所を先輩が指先でくすぐっている。
胸を触られるよりも何倍もの甘さが身体中に広がっていくが、
私は羞恥心に駆られて足を閉じた。
「…こうされると嫌だ?」
嫌じゃない
私は首を振る。
「じゃあなんで足を閉じちゃうのさ」
「だって…恥ずかしい…」
「恥ずかしがることない。もっと真雪に触れさせてよ」
私が震えながら足をそっと開くと、ヒロ先輩はまた触れてきた。
彼の指が、私の蕾を行ったり来たりする。
その度に自分の意思とは無関係に身体がひくっと跳ねた。
「あっ…あぁ…ん」
ヒロ先輩が大きく息をつく。
「…下着、脱がせちゃってもいいかな…」
「や…見られるの、恥ずかしいです」
「…脱がせるよ。見たいんだ…真雪の…」
「や…先輩…先輩っ」
ヒロ先輩の指が私のショーツにかかる。
私は少しの抵抗を試みたが、そんなものは無駄で、
私の下着はするりと身体から抜き取られていった。
「あっ…いやっ」
ヒロ先輩はまた大きく息をついた。
「足…開いてよ」
「見ない…で、下さい」
私は足を閉じて、自分の繁みを手で覆い隠した。
「…」
ヒロ先輩は私の膝を折って立たせようとする。
開かれちゃう
私は藻掻いた。
「真雪」
先輩の身体が足の間に割って入ってくる。
私の身体は難なく開かれてしまった。
「やっ」
「…」
ヒロ先輩が、私のその部分を眺めているので
私は慌てて手でそこを隠した。
「隠さないでよ…綺麗だよ」
「…そんなこと、ない…」
私が身体を硬くさせていると、先輩が足元でごそごそとした。
自分の着ているセーターとシャツを脱いだのだ。
私はヒロ先輩をそっと見る。
先輩は上半身裸になっていた。
筋肉がほどよくついて鍛え上げられているその肉体は、
思わず見惚れてしまうほど美しい
着衣の状態でもしなやかで綺麗に見えたその身体は
思った通りに美麗だった。私は思わず、息を呑む。
”綺麗”というのはこういうものを形容するのであって
私のアノ部分に対して使うのは間違っていると思う。
私が呆けた状態になっているのを見計らって、先輩は私の膝を折った。
ヒロ先輩の目の前で、私の足はM字の様になり
最も隠したい部分がさらけ出されてしまった。
「やっ。こんな格好…」
「真雪、おとなしくしていて…」
先輩の顔が下げられる。
あろう事かヒロ先輩は私のそこに口を付けてきた。
「あっ…あぁっ」
柔らかい先輩の唇が、ちゅっとキスをするように蕾の上に置かれた。
羞恥の熱さと、なんとも言えない甘い感覚がぶわっと身体中に広がっていく
抵抗したくても出来なくなるような快感に身体の自由が奪われる。
その事に気を良くしてかヒロ先輩は更に舌先を使って私のそこを攻めてきた。
「あっ…あ…はぁっ…ん」
「気持ち良い?真雪」
「や…こんな…」
「嫌なの?」
もっとして欲しい気持ちと、恥ずかしいから止めて欲しいという気持ちが交差する。
だけど生温かな彼の舌の感触に屈してしまう。
蕾を軽く吸われ、私は高い声を上げる。
こんな感覚は初めて体験する。
抵抗なんて出来ない。
身体中が甘く痺れていく
私は何度も声を上げた。
そしてヒロ先輩を呼ぶ。
感覚の全てが彼に持って行かれてしまったような気になってしまう。
舐めながら、先輩は私の内部を探ろうと指を差し入れてきた。
「あっ……ぅ」
ぴりっとした痛みを内部に感じる。
触れられる事に慣れていないそこは、彼の指を受け入れようとはしなかった。
「…痛いの?」
ヒロ先輩のくぐもった声が下から聞こえる。
「痛いかもしれないです」
「我慢できない?」
「…少しなら」
「…ごめんね。少し我慢して」
ヒロ先輩は指を出し入れする。
鈍い痛みがわき上がるが、先輩が舌で蕾を愛撫しているので
感覚同士が身体の中でぶつかり合い、溶けてしまう。
蕾に与えられる快感の方が強いのかも知れない。
私は息を乱した。
先輩の指と、私の内部が馴染んできたかなと思い始めた頃、
ヒロ先輩は身体を起こした。
「真雪…そろそろ、いい?」
私は先輩を見上げて頷いた。
ヒロ先輩はジーンズを脱ぎ捨てて、ごそごそとなにかしている。
天井を見上げて私は自分の身体を抱きしめた。
いよいよその瞬間がくるのかと思ったら
未知の体験に少しだけ怖い気がした。
目の前に先輩の顔が来る。
「…ヒロ先輩」
「大好きだよ」
「はい、好きです…」
ヒロ先輩はいつものように人なつっこく微笑むと、私の頭を撫でた。
「入れるよ」
「…は、はい」
身体の中心に、先輩の身体を感じる。
それからゆっくりとヒロ先輩は私の身体を押し開くようにして進んできた。
分け入られる度に、鈍い痛みを感じる。
痛い
―――――噂には聞いていたけれども、本当に痛い。
さっきの指の何倍も内部に圧迫感があって、それが痛みに繋がっていく。
「ん…ぁ」
あまりの痛みに私はそれから逃れようと無意識に身体をずり上げてしまう。
「痛いか?」
「痛いです」
「…」
ヒロ先輩は動きを止めて私を抱きしめた。
そして口付けてくる。
「痛いなら、止める?」
「…でも」
「我慢できそう?」
「…我慢…する」
私は先輩のしなやかな身体に手を伸ばして抱きつく。
…だって、この身体に抱かれたい。
ヒロ先輩に抱かれたい。
「じゃあ、我慢してね」
先輩は大きく息をついた。
再びヒロ先輩が私の中を進んでくる。
裂かれる痛みに声を上げそうになったけれども、私は堪えた。
堪えながらも息を漏らし、そしてとうとうヒロ先輩が私の最奧まで辿り着く
身体の奥深い場所が、じんっと痛んだ。
「んふ…せ、先輩」
「真雪、ごめん…」
「え?どうして謝るんですか?」
「…おまえは痛い思いをしてるのに、俺は、気持ち良いから」
ヒロ先輩はそう言ってふっと笑った。
ああ、先輩は気持ちが良いんだと思ったらなんだかほっとした。
痛いのは私だけで十分だ。
「動くと真雪は痛いんだろうな?」
「…動くんですか?」
「動くよ」
「…」
「ごめんな」
「あんまり、痛くしないで下さいね?」
「…そうだな」
先輩が少し動く。
ベッドが、ぎしっと軋んだ。
ヒロ先輩の熱が、私の最奧で膨らむ。
「んーっ」
「真雪…」
ヒロ先輩が苦しそうな声を上げる。
彼を見上げると、ぎゅっと眉根を寄せた。
「どうにもこうにもなりそうにないぜ」
「え?」
「すっげ苦しい…おまえの中、すげぇ熱くて…柔らかくて」
先輩はそう言うと苦しそうに息をついた。
「…真雪」
私に口付けを与えると、ヒロ先輩はゆっくりと動き始める。
出し入れされると、口では言い表せないような痛みが私を襲ってきて、
悲鳴に近い声が出そうになった。
私は口元を手で押さえてそれを堪える。
「…はぁ、真雪、もう少しだけ…」
「ん…ん…だいじょう、ぶ」
とは言ったものの先輩のひとつひとつの腰の動きは私に痛みを与えてきていて
私は、痛みに震えてしまう
ヒロ先輩の肌は気持ちが良かったが、
身体の奥深いところへの刺激には我慢が要った。
「…真雪、ごめん…」
先輩はそう言うと、腰の動きを早くした。
強い刺激に私は声を上げる。
「いっ…」
本能的にその痛みから逃れようとすると、
ヒロ先輩に抱きすくめられ、身体を押さえつけられてしまった。
「や…ン…あ…」
「…真雪…くっ…」
先輩が、ぐぐっと私を突き上げる。
身体の奧の、更に奧まで入り込まれた気分だった。
その突き上げる行動を何度かして、先輩は動きを止めた。
「はぁっ…はぁ…ごめん」
ヒロ先輩はまた謝って私をぎゅっと抱きしめる。
「…終わったんですか?」
「…うん」
そう言って先輩は私の体内から自分を引きだした。
圧迫感がなくなって、身体が楽になる。
「好きだよ…真雪」
いつも以上に甘さが混じった声で、先輩は私に言葉を与えてくれる。
「…私も」
手を伸ばして先輩の身体に身を寄せると、
ヒロ先輩は頭を撫でてくれて、その後キスをしてきてくれた。
キスも抱擁も気持ちが良かった。
…これで痛みがなければいいのに…
「真雪とこうなれて、嬉しい」
頬に先輩の大きな手が添えられる
「私も嬉しいです」
「本当?」
「はい」
ぎゅーっと抱きしめられた。
「ヒロ先輩の体温、気持ち良いです」
「真雪も…中も外も最高」
「や…やだな…えっち」
私は凄く痛かったけれども、
先輩が喜んでくれたのなら、まぁいいかと思った。
まぁいいかと思うその気持ちが、なんだか幸せだった。

−END−

TOP小説1目次