■■その愛の名を教えて 1■■


神が存在するというのならば、神は何故僕にこんな運命を背負わせたのだろう
僕は前世でかの人の逆鱗に触れるほどの事をしたのだろうか?
何故孤独の闇を抱きしめて生きなければならない?
その理由を教えて
この苦しみから僕はいつ解放される?

******

息苦しさから目が覚める。
何か悪い夢を見た。
夢の内容は覚えていない。
だけど酷く後味の悪い、精神を病んでしまいそうな気持ちにさせる夢だった。
身体を起こし、額に手を置く。
少し汗ばんでいた。
息を吐いて隣を見る。
僕の隣で、みのりがすやすやと寝息を立てながら眠っている。
愛らしい子。
彼女の白い頬に短くキスを落とした。
柔らかな彼女の温もりが唇に触れる。

ベッドからそっと抜け出して、戸棚の引きだしにしまってあるピルケースから
薬を一錠取りだして口に含み水を飲んだ。
こんな薬なんて、ラムネ菓子の様なものだ。
効きはしない。
だけど敢えて飲んでしまうのは、まだ正常でありたいと思う気持ちからなのか。
煙草に火を付ける。
こんな姿、みのりには見せられない。
そう思うのならば、彼女を自分の家に住まわせなければ良かったのに、彼女に
姿を消されてしまった反動で少しだって彼女から離れる事が出来なくなってし
まった。
僕をかき乱す困った子。
だけど彼女無くしては生きられない。
彼女が居るから生きられる。

彼女を起こしてしまおうか?

こんな夜は、彼女を抱きたい。
彼女に包まれたい。
あの温かな体温で。

煙草を灰皿に押しつけて火を消した。
そして彼女の眠るベッドに戻る。
そっと彼女を揺すってみた。
「みのり…」
「…ん…ぅ…」
彼女が眉をひそめる。
眠りの森の深いところに居る様で、彼女は目を覚まそうとしない。
「…」
僕は構わず、彼女の首筋に舌を這わせる。
みのりがぴくりと反応した。
彼女のパジャマのボタンをひとつひとつ外していく。
露わになったキャミソールの下には下着をつけていない様で白いキャミソール
の生地には彼女の胸の先端部が薄く透けて見えていた。
その透けて見えている赤い実を唇で挟んだ。
生地の上からそっと舌を這わす。
彼女のキャミソールの一部が、僕の唾液で濡れていく。
「ん…んふ…」
みのりが小さく息をつく。
彼女の膨らみを揉んだ。
柔らかな弾力を手のひらの中で感じる。
しばらくそうやって揉んでいると、先端部が硬さを持って立ち上がってくる。
僕はそれをこりこりと指先で転がした。
「ん…は…ぅ…」
「…みのり…」
キャミソールを胸の上までたくし上げ、直に彼女の実を口に含んだ。
小さく何度も吸い上げて、舌を這わし、また吸い上げる。
「ぁ…は…」
みのりがぴくりと震えた。
彼女のパジャマのズボンに手をかけて、下着と共にそれを彼女の身体から抜き
取る。
みのりの裂け目が少し潤んでいた。
彼女の繁みを分けて蕾の部分を露出させると、僕はそこに舌を這わせた。
「や…ん…」
先程よりも大きな反応を見せる。
何度も何度も舌を這わせ、往復させていると彼女の腰がふるふると震えた。
足が開かれていく。
これがもし僕でなかったら一体どうするつもりなのだ?
まだ眠りの森に迷い彷徨っている彼女をちらりと見た。
「…ねぇ…みのり…」
もう一度彼女を揺すった。
「…ん…うン…?」
みのりが僕の声に応える。
「…ピル、ちゃんと飲んでる?」
「ん…飲んでる…よぉ…」
「今日も飲んだ?」
「うん…飲ん、だ…」
「…そう」
僕は自分が着ているパジャマを脱ぎ捨てて、熱く硬くなっている自分のそれに
手を添えた。
…僕は…
潤っている彼女の入り口に僕自身をあてがった。
「みのり…何も着けないで、君を抱くよ?」
寝返りをうちそうになる彼女の身体を押さえつけて、ゆっくりと彼女の身体の
中に自分を埋め込ませていった。
ダイレクトに彼女を感じる。
温かな肉壁が僕を押さえつけてくる。
「ン…」
僕の身体がぶるっと震えた。
みのりの中に僕が居る。
息を吐いた。
「…みのり…」
初めて感じる生の体温。
触れ合う刺激に僕の腰が熱くなっていく。
彼女の足を大きく開かせて、彼女と繋がっている箇所を見つめた。
今確かに彼女と繋がっている。
僕のあれが、彼女の中に深々と差し込まれている。
息を吐く。
何度か出し入れすると、僕のものがみのりの体液で濡らされて、てらてらと妖
しく光る。
動きを止めると彼女が腰を浮かせてきた。
もっと深く僕を差し込めと言う様に。
望みのままに深く僕を差し込むと、みのりが甘い声で啼いた。
そう…その声が聞きたい。もっと聞かせて。
深く挿入したまま腰を動かす。
「あっ…ああっ…」
みのりが仰け反って、シーツをぎゅっと握りしめた。
ね…そろそろ目を開けて僕を見てよ…
彼女の顔に両手を包む様にして添えると、みのりの唇に僕の唇を重ね合わせた。
薄く開いたその口の中に自分の舌をねじ込む。
そうして彼女の舌に自分の舌を絡めた。
僕が自分で飲みきれない唾液を彼女の方に流し込むと彼女の喉がごくりと動く。
こうやって自分のものを彼女に飲ませる行為にも興奮させられた。
「みのり…」
「ん…ふ…」
彼女のしなやかな腕が僕の身体に回される。
彼女が包むように抱きしめてくれる。
「とう…や…」
みのりが僕を呼んだ。
「ごめんね?」
彼女の眠りを妨げた事を一応詫びる。
「んー…もぉ…」
みのりがその愛らしい瞳を開けて見上げてくる。
「…ごめん」
「透也の…えっちぃ…」
「そうだね」
ふっと笑った。
「でもそんな僕も好きでしょう?いや、そんな僕だから君は好きなのだろう?」
「ばかぁ…」
「ふふ…もっと叱って。今日は僕、生で君を抱いちゃっているし」
「えっ?」
「一応断ってから入れたけど、君が聞いていたかどうかは別として」
「…ダメじゃない」
「ピルを服用しているんだろ?」
「飲んでるよ」
「じゃあ問題ない。大丈夫、僕は病気を持ってたりしないから」
「そんな心配はしてないよっ」
「…愛してるよ、みのり」
ちゅっと彼女の頬に口付ける。
「…透也…」
「君も僕を愛している?」
「うん…愛してるよ」
彼女の瞳が少しだけ潤む。
こういう表情が堪らなく可愛い。
「君はずっと、僕の傍に居てね」
頬を撫でると彼女はうっとりと目を閉じた。
「ずっと傍に居るの…」
「本当に可愛いね、君は」
僕はそう言って動き始める。彼女の身体がふるふるっと震えた。
「とう…やっ…」
「そんなに感じる?僕を」
「…熱い…よぉっ…」
「…何が?」
「透也の…透也の…」
「僕の何?」
「透也の…アレ…」
”アレ”…ね。
もっと卑猥な事を言わせてやろうかと考える。
彼女の花の様に愛らしい口で。
「アレって何?」
「…い、意地悪ぅ…」
みのりは顔を赤くさせる。
「僕のは大きくて逞しいとかいう事は言えちゃうのにそのモノの名称は言えな
いんだ?」
「ばっ…馬鹿馬鹿!そういう事言わないでよっ」
「抜いてしまおうかな?」
「やだっ」
「じゃあ言って?」
「…うー…」
彼女は小さく唇を動かす。
僕はふっと笑う。
「言えるじゃない」
「言わせないでよっ」
「君ってエロいね」
「透也が言わせたくせに!」
みのりは益々顔を赤くさせた。そんな様子が可笑しい。
「可愛いよ」
彼女の手を握りしめて腰を揺すった。
みのりは足を限界まで広げて僕を最奧に招き入れる。
ぎゅっと目を瞑り、甘い声を上げる彼女。
今その瞳を閉じて抱かれながら何を考えているの?
ちゃんと僕の事を考えている?
違う男の事なんて考えていたら許さないよ?それが例え芸能人でもなんでも。
「僕の名前を呼んで」
「…ん…透也ぁ…」
「もっと呼んで」
「透也…透也っ…ああん…」
「僕の事だけ考えて…」
そうやって彼女に囁くと、みのりの耳を甘噛みした。
「ふぅんっ…」
ぴくんっと彼女が反応する。
揺れる度に上下する彼女の白い胸の先端を吸い上げる。
舐めてくすぐるように舌を這わす。
みのりの内壁がきゅっと締まった。
もっと感じて。
僕は彼女の身体に快感を与え続ける。
首筋に、鎖骨に、胸に、脇腹に…
でも一番敏感な蕾の部分には触れてあげない。
クリトリスでイかれてしまったらつまらない。
彼女を僕自身の高ぶりで擦り上げながら深い身体の奧にあるスポットでイかせ
たかった。
その方が気持ち良いのだろ?
「あっ…あんっ」
みのりが一層高い声を上げる。
ココか。
反応が変わるので彼女は判りやすかった。
彼女の内壁が僕を求める様に締め付けてくる。
みのりの内部のおうとつが、激しく絡みつき僕に快感を与えてくる。
少女の様に何も知らなそうな顔をして彼女の身体は凄い。
普通の男なら、彼女が満足するまで抱く事は出来ないだろう。
だから余計にクリトリスには触れない。
そんな小手先の手段で彼女をイかせたくない。
僕は他の男とは違うのだという事を彼女に教え込まなければならないからだ。
―――――景とは違うだろ?
君を満足させる事が出来るのは、僕だけだと彼女に知らしめなければ、安心す
る事が出来ない。
こういう発想自体が常軌を逸しているのだが、他に手段を知らない。
一体僕の何が彼女を繋ぎ止めておけるのかが判らなかった。
僕の身体だけが好きなのだろ?
かつては、そうやって女を侮蔑してきた。
だが今の自分は何だ?
結局身体で彼女を落とし、身体で繋ぎ止めているではないか。
愚かしい事だ。
「いっ…あっ…」
みのりの腰が激しく揺れる。
「…イクの?」
「…イっ…ちゃ…う…」
「良いよ」
「あっあ…ああん!透也ぁっ」
彼女の腰を押さえつけ身体の奧に僕を押し込む。
「やああああんっ」
みのりの内部がぎゅううっと締まった。
僕は眉を寄せる。
この瞬間が一番ツライ。
激しい射精感に襲われる。
…堪えろ。
僕は僕の内部に命じる。
彼女がイった後でも、更なる快感を彼女に与えなければならない。
じわっと汗が浮く。
「ん…は…」
みのりが小さく息を吐く。
彼女がイク時の顔は何とも言えずやらしくセクシーだ。
「エロいね」
ふっと笑ってそう言うと彼女が困った様な顔をする。
「…一応誉め言葉」
「エロいって言われても嬉しくないよぉ…」
赤く染まった頬で彼女が言う。
「うん…まぁ、そうかもね」
僕はまた笑う。
少しだけ見つめ合って、それから軽い口付け。
触れ合うだけのキスを何度も繰り返す。
彼女の唇の感触。
その柔らかな弾力は、何度味わっても僕に”足りない”と思わせる。
もっと、もっと、もっと僕の唇で感じたい。
「透也…」
彼女の腕が僕の背中を撫でる。
滑るその指先は動けと命じているのか
「動くよ?」
「う…うん」
少しだけ彼女が身体を硬くする。
更なる快感を受け入れる事への緊張なのか
僕は緩やかに腰を動かした。
「んっ…くぅん…」
ぴくんぴくんと彼女の身体が小さく跳ねる。
「好きだよ…みのり」
溺れるほどに。
みのりは僕を見上げる。感情の溢れた様な瞳で見つめてくる。
「好き、だよぉ…大好きなの…」
見る見るうちに彼女の瞳に涙が溜まっていく。
「どうして泣くの?ダメだよ泣いちゃ、益々君を泣かせたくなってしまうから」
「だって…透也に抱いて貰えるの、嬉しいんだもん」
彼女の頬に手を置く。
”抱いて貰える”という言い方だと、立場が僕の方が上で彼女が下という風に
聞こえる。
そんな事はない。立場が上なのは彼女の方だ。
彼女に溺れさせられて自分が何者かを判らなくさせられる程に狂わされている
のは僕の方なのだから。
「僕的には”抱かせて頂いている”という気持ちなんだけど?」
「どうして?」
「それだけ君が好きだって事、かな」
直に誰かを感じたいと思うのも初めてだった。
感じる体温を手放したくないと思ったのも彼女だけ。
僕はゆっくりと動き始める。
彼女と擦れ合いながら出入りを繰り返す。
入れる時は何処までも奧に誘導するように、
出ていく時は逃さないように、
彼女の内部がそんな風に動く。
「あ…あ…あんっ!」
初めて彼女を抱いた時よりも、今の彼女は色っぽい表情をする様になっていた。
普段の時もそうだ。
少女の様に愛らしい表情の中に色香を感じる。
参ったな。
僕がそうしてしまったのかも知れなかったが、花薫る君に悪い虫が寄って来な
ければ良いのだけれど。
「あっ…あぁ…透也…透也ぁ…」
「愛しているよ…」
「う…うんっ…愛してる…っ」
彼女にキスをする。
深いキス。
快感に呼応する様にその舌の動きも大胆になっていた。
「ああん…ああっ…ああ…」
みのりが辛そうに眉根を寄せる。
内部がきゅうっと僕を締め付ける。
「もう限界?二度目は早いね?」
「はっ…あっ…透也…んんんっ…ダメっ、イっ…ちゃうっ」
僕は彼女の腰に自分の腰を打ち付ける。
「…一緒にイこうか」
「うんっ…うん…透也も…来てぇ…」
身体を揺らすと、彼女の腰も揺れる。
激しく混ざり合う様に求め合った。
「あっ…あああっ…やあんっ」
「…ふ…っ…」
腰が熱い。
僕の何かが爆発しそうになっている。
奥の方から迫(せ)り上がって来るもの。
まだ僕自身を解放するのは早いか?
彼女の様子を窺う。
抱きしめてくる彼女の指先が震えている。
「んっ…あ…イ…はぁあんっ!」
彼女が僕をぎゅうっと抱きしめた。
「…僕も、イクよ?」
「透也…来てっ…」
激しく腰を使う。
感じる。
彼女の温もりを、その柔らかな肉の感触を。
ダイレクトに感じる内部に、一層の快感を覚える。
「みのり…んっ…」
器官に何かが通っていくのが判る。
弾ける様な一瞬の勢いでそれは通っていく。
それが僕に快感を与えた。
腰がゾクッとする。
呻いて、彼女の深い場所に僕を押し込んだ。
「んんんぅっ」
みのりが仰け反る。
その肩を強く抱いた。

「あぅん…」
みのりが溜息をつく。
僕の体勢はそのままで
彼女がちらりと見上げてくる。
「…あの…抜かないの?」
僕はまだ彼女の体内に居る。
みのりの内部がひくついているのが判る。このままにしておけば、恐らくまた
勃ち上がるだろう。
「抜かないで何回位出来るか、してみようか?」
「えぇっ」
「どう?」
「だ、ダメだよ!私は明日もバイトだし、透也だって一限目から講義があるで
しょう?」
「僕は寝なくても平気な人だよ」
「私は寝なくちゃダメな人なの!」
「うーん駄目か。じゃ、それは休みの前日にでも実行するか」
「と…透也ぁ…」
みのりが困った顔をする。
僕はフッと笑った。
「そんな顔も可愛いよ」
僕が彼女から身体を抜くと、みのりの内部からとろりと白い液体が零れ落ちる
卑猥な光景だ。
ティッシュを手元に引き寄せて彼女を拭った。
それから僕自身も。

「あ…えっと…」
「何?」
「今更、遅いと思うんだけど」
「…何が?」
「透也、お誕生日おめでとう」
僕は彼女のその言葉に、プッと笑った。
「本当に今更だね」
「と、当日は…その…言えなかったし…」
「僕から逃げていたからね」
「ご、ごめん…」
「朔の記憶力に感謝してる。君とは一度しか逢っていないのに君の顔と名前を
覚えていた」
みのりをぎゅっと抱きしめる。
「二度目は許さないからね?」
「うん…もう何処にも行かない。透也の傍に居る」
それから彼女は言った。
「透也…生まれてきてくれてありがとう」
僕は、ぴくりと反応した。
「私、神様に感謝するの…今生の地で透也と出逢わせてくれてありがとうござ
いますって」
彼女の言葉に薄く笑う。
僕はその神を少し恨んでいるのだけれどね。

だけど、彼女が喜んでくれるので有れば、この世に生まれた価値があると思え
た。
君が存在する事を許してくれるから僕は生きられる。

自分が抱きしめている闇が、彼女の光によって薄らいでいく様な気がした。

みのり、君が僕の全て―――――。

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