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LOVEですかッ ACT.26

 

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 ほんのひととき、眠っている間に見た夢は、柔らかで温かな夢だった。 内容までは覚えていなかったが目が覚めても暫くは幸せを胸に感じることが 出来た。 「あ、ごめん」  ベッドルームの扉が開いて、そのすぐ後に謝罪の声が響く。 優月が頭を動かして声の主を見ると、織川が立っていた。 「さっきまで、隣で寝てたんだけど」  彼はベッドに腰掛けて、彼女の頭を撫でた。 「ん……っと、何が、ごめん?」 「セックスの後に目が覚めたら男がいないとかって、嫌じゃない?」  ふっと織川は小さく笑った。 「……あ、う、ん……そうなのかな」 「ごめんな」 「ううん」  顔に影が落ちてきて、織川の唇が優月の額に触れた。 「お腹すかない?」 「……うん、ちょっとだけすいたかな」 「よかった。ルームサービスで食事を用意してもらったところだから食べよう?」  手をとられ、ベッドから起こされると、優月はちゃんとバスローブを羽織っ ていてそれを彼が着せたのかと思ったら彼女の頬が熱くなった。  そして織川は服を着ているのに自分はバスローブだけというのも恥ずかしい 気持ちだった。   ベッドルームから出ると良い香りがしてくる。 大きな窓の傍にテーブルがあり、その上にはクリスマスらしくはあるけれど 高級そうな料理がずらりと並んでいた。 「……瀬那」 「何?」  彼はシャンパンを手際よく開けると、グラスにそれを注ぎ入れた。 「料理もそうなんだけど、このお部屋も、多分凄く高いよね?」 「高いって何が? グレードがって意味?」 「その、お金が」 「ああ、金か」 「大丈夫なの?」 「大丈夫って何が?」 「……えっと、その……無理したんじゃないかなぁって」 「この程度は別に」 「で、でも」 「ラーメンのときみたいにおごり返すとかしてくれなくていいし、ああ、でも 礼をしてくれるなら優月の身体で返して欲しいかな。優月の身体は気持ちいい し、感度もいいから俺としても……」 「わ、わっ……もうそれ以上言わないで」 「何で?」 「恥ずかしい……よ」 「え? あんなにあんなだったのに?」 「そっ……そういうこと言わないでぇ」  赤くなった顔を隠すような仕草を彼女がすると、織川は薄く笑った。 「今夜は寝かせないから」 「……そんなにいっぱいは無理」 「聞こえないなぁ」  シャンパングラスをかちんと合わせ、乾杯をする。 「メリークリスマス、優月」 「あ、メリークリスマス」 「――――で」 「うん?」 「今日はねぇ、俺の誕生日なの」  織川はにっこりと笑ってそう言った。 「え? あ、そうだったの? おめでとう」 「ありがとう」 「……そういうのも言っておいてよ。私何も準備出来なかったじゃない…… 瀬那って秘密主義なの?」 「ああ、そうだよ」 「……そうだよ……って」  優月は苦笑いをして彼を見上げた。 「基本的には人のことなんて信用しないし、どうでもいいし、そういうのだか ら自分の素性とか明かすわけないし」 「私……も、そうってこと? だから何も言ってくれなかったの」 「いや、優月に関しては圧倒的に時間が足りなかったのと、ちょっとしたトラ ブルが起きたから、色々誤算があった」 「トラブル?」 「ああ、仕事上でな」 「会社で何かあったの?」 「いや、あの会社じゃなくて」  シャンパンをひとくち飲んでから彼は言葉を繋いだ。 「ホテルの経営をしててー」 「え? 誰が?」 「俺が」 「へっ?」 「何、その反応」 「え、だ、だって、契約社員で働いてたじゃないテレアポで」 「うん、まぁなんていうか30を前に一年ぐらい自由な時間があってもいいか なぁって思ったんだよね。かといって遊び歩くのもなんだから色んな業種をや ってみようかなと」 「え? 30って?」 「え? の意味が判んないんだけど」 「30って30歳って意味?」 「そうだけど?」 「瀬那って30歳なの!?」 「いや、今年29で来年30かな」 「う、嘘でしょ」 「あれ、優月って年上嫌いなの? まぁ、嫌いだろうがなんだろうが知ったこ っちゃないけど」 「そうじゃなくて、同じぐらいかちょっと上ぐらいだと思ってたの」 「優月と?」 「うん」 「んー、成人式なんてとっくに済ませてるんですけどねぇ」  織川はそう言って笑った。 「この一年で、何も起こらなければもう諦めて一生独身でいるかなって思って いたんだけど」 「――――え?」 「最後の最後で、奇跡が起こったって感じ?」 「あ、の……」  織川はゆっくりと優月に歩み寄り、彼女が手に持つシャンパングラスにダイ ヤのリングを落とした。 「え?」 「誕生日プレゼントに“何か”なんて欲しくない。俺が欲しいのは優月だけだ」 「……う、うん?」 「おまえを俺にくれる?」 「うん……」 「じゃあ、結婚するよ」 「え?」 「俺の“嫁”にする。ずっとそう言っていた筈だ」  織川は、にやりと笑った。

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