結婚の二文字に優月が呆けていると、織川はまた笑った。 「嫌だなんて言わないよね?」 「い、嫌じゃないけど、急だから驚いて、なんて言えばいいのか」 「“はい、判りました”で、いいと思うけど」 織川は薄く微笑んだ。 「あ、う……ん」 優月はシャンパングラスに沈むダイヤのリングに目を落とす。 「……で、も、瀬那は海外に行っちゃうんでしょ?」 「ああ、あんなの嘘だよ」 「え?」 「親が海外に居るのは本当だけどね」 「なんで、嘘ついたの? ひどいよ」 「嘘をついてでも揺さぶらないと、優月が気持ちを決めてくれそうになかった からだよ」 「……ひどい。私は本当に瀬那がどこかに行っちゃうと思って悲しかったのに」 「だから、ずっと傍に居てあげるって言っているだろ?」 織川の長い指が優月の顎をくすぐった。 「それをおまえが本当に望んでいるのかってことを今確認しているんだけど?」 「私……で、いいの?」 「おまえでなければ嫌だ」 そう言って織川は彼女の手の中にあるシャンパングラスを取り上げ、それを 飲み干した。 唇に、ダイヤのリングだけが残る。 彼の咥えたリングを、優月は答えるようにして唇で受け取った。 その様子を織川は満足げに微笑む。 「可愛い、優月」 彼女の咥えるそれを指で取りあげ、あるべき場所に持っていく。 優月の左手の薬指へと――――。 「撤回はさせないからな」 「……私を、貰って欲しい。瀬那に」 「……何ソレ。興奮する」 くくっと彼は笑い、優月を強く抱きしめると奪うようなキスをする。 「ふ、ぅ……ン」 彼女を抱きしめていた手が優月のバスローブへと伸び、結ばれている紐を解 いた。 「せ、瀬那」 「俺を酔わせて。ワインやシャンパンなんかじゃ少しも酔えないよ」 シャンパンで濡れたリングにキスをしてから、はめられている指を舐めていく。 濡れた舌が皮膚を這っていく甘い感触に優月は震えた。 「あ、あ……」 「指も感じる?」 彼はじっと優月を見つめながら行為を続ける。 “見られている”と思うと彼女は余計に神経が過敏になり、与えられている 甘さをより強く感じた。 すっきりと切れ上がった織川の瞳はきつく優月を見つめている。 いつもの柔らかさがないことにも彼女は胸が締め付けられるような思いがし ていた。 強く求められれば求められるほどに、高まる胸の音。 気がつけば、彼の舌は指から胸へと移動していて淫猥な音を立てながら彼女 のそこをしゃぶっていた。 「……ん、ぁ……」 「綺麗な形だよね……優月の胸。大きさも、凄く好きだ」 織川の言葉にどう答えていいのか判らないまま、優月は彼の愛撫を受け入れ る。 柔らかな指の動きも濡れた舌の感触も、どれも彼女はいいと思えた。 時折強く吸われたり、甘噛みされる感覚にも酔わされ、溶かされていく。 そして下腹部に伸ばされた織川の指は、優月が蜜を溢れさせていることを知 らせるようにして花芯から蕾までを何度もぬるぬると往復する。 「あ、ぁ……瀬那……そんなに……しな、いで」 「“しないで”じゃなくて、俺を欲しがって。下さいって、その可愛らしい口 でおねだりしてみせてよ」 「瀬那……意地悪、だよ」 「言えないの? この部分はもう我慢出来ないって言っているのに?」 そう言って織川はゆっくりと指を蕾の中に挿し込んだ。 「あぁっ……」 「凄い濡れてる」 覚えたての快感を、また思い出させるような指の動きで彼は優月を翻弄する。 彼女が声を上げるのには、そうは時間はかからなかった。 「……瀬、那」 「欲しいのか」 「ほ、しい……よ」 「やらしい声。もっとやらしい声で啼かせてあげようね?」 織川はそう言うと、着ているもののフロントをくつろげて屹立している部分 を引きずり出した。 初めてはっきりとその部分を見た優月は、少しだけその大きさや形に怯んだ ような表情を浮かべる。 「大丈夫……痛くはしない」 織川は柔らかな声で告げて、椅子に座ったままの優月の足を大きく広げ自分 の身体を彼女の中心に合わせた。 「う、ぅ……んっ」 ゆっくりと彼の男性器が優月の中に挿し込まれていく。 入っていく様子を見つめながら、織川が甘く息を吐いた。 「ああ……優月」 興奮に濡れ、掠れた彼の声に優月は震える。 「瀬那だって、やらしい、声……っ、してる」 「そういうふうにさせているのは、おまえだよ? 優月だから俺は」 ぐぐっと奥まで突き上げられる感覚に優月は声を上げる。 「あああっ……」 「ああ、堪らない、気持ち良くて……狂いそうだよ」 彼の言葉に呼応するように内部は収縮し侵入者を締め付けた。 織川は彼女が座る椅子の背もたれに手をつき、一瞬天を仰いだ。 「優月、俺とセックスしてるって自覚してる? やらしいことしてるって意識 してる?」 腰を揺らしながら、織川は優月に視線を戻して聞く。 卑猥な台詞をわざと言い、彼女の興奮を煽った。 喘いだ口での反応よりも遥かに優月の身体は正直に反応をしてみせる。 内部は彼を逃すまいときつく締まった。 「優月の中って、男……初めてって思えないぐらい、凄くいい動きをする、よ ね」 織川は身体を一度、ぶるりと震わせた。 「夢中になるなってほうが……無理だ」 「ああっ!」 彼が腰をくねらせながら彼女の内部に出し入れをさせると、優月は従順にそ れに反応する。 それが余計に織川を煽り、段々と動きが激しくなっていった。 「あ、ぁ……や、ぁっ……あぁ……」 「は……っ、優月……ああ……っ」 「あ、あ……瀬那、瀬那ぁ……好き、よ」 「――――っ」 「んぅっ!!」 優月の最奥まで突き上げると、織川はそこで一度身体の動きを止めた。 「……ふ、優月……もっと、したい、もっとめちゃくちゃにおまえを犯したい、 いいか?」 快感に唇を震わせながら優月が頷くと、彼女を立ち上がらせすぐ傍の窓に手 をつかせた。 「多少の加減はするけど、痛かったら言えよ」 優月は腰を掴まれ、背後から織川に貫かれた。
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