■■あなたの居る場所 3■■



天井が見える。
真っ白…ううん少しピンクがかった色をしてる。お花の模様も少し…
ここ、何処?
背中が少しふかふかしてる。
布団の感触?
あれ…私、もう家に帰ったんだっけ?それにしては見慣れない天井。
まぁいいか。
眠いんだもの…
…
そう言えば、池上さんはどうしたんだろう?いつ彼と別れた?
ころんと寝返りをうてば、人の気配。
んん?

「みのりさん、ミネラルウォーターでも飲む?」
誰の声?男の人
景ちゃんじゃない
「んー要らない…眠いの…」
ころんとまた寝返りをして、声の主に背中を向ける。
するとその人は私をやんわりと抱きしめてきた。
「ね?眠らないで…少しだけ、起きていて」
「うー…ん…どうして?」
「みのりさん。ここがどこだか判ってる?僕が誰だか判ってる?」
「そんなの…知らない」
ちゅっ…
首筋にキスの感触
「あ…ん…やだぁ…」
私にそんな事をするのは、やっぱり景ちゃん?
背後から胸を揉まれる。
「あーん、もぅっ…今日は、しないー」
だって、眠いんだもん…
「今日が駄目ならいつなら抱かせてくれる?」
「いつって…なんでそんな事聞いてくるの?いつでも私…」
「誰と間違えてる?景ちゃん?」
「え?」
景ちゃんじゃないの??
さらりとした金髪が顔にかかった。
顔を上げると、端正な顔立ちの人が私を見下ろしている。
パープルアイが私を見つめている。
誰?
知っている人。
あぁ、池上さんだ。
「池上さん?」
「…そう、僕だよ」
「池上さん…どうして…私…ここ、どこ?」
「ホテルだよ」
「ふぅん…ホテルだったんだ…」
ホテル、
ホテルね。
ホテル?
池上さんの手が私の前髪をかき上げる。そうしながら私の額に手を乗せたまま
唇を私の唇の上に押し当てて来た。
アルコールと…煙草の香りがした。
「何、するの?」
「セックス」
「…えー…」
「ねぇ…僕を見て」
「僕…僕って…イケガミさん?」
「透也って呼んでご覧」
「とーや?」
「ん…いい子だ」
首筋に唇の感触。
少しだけ動いて、そしてそれから舌先がそこで踊った。
「んっ!ふ…ぁっ」
その感触に私は身震いした。
くすぐったくてゾクッとする。
「やー…」
逃れるように身じろぎすると、彼の腕が私をしっかりと抱きしめた。
「駄目…離さないよ」
耳元でそんなことを囁かれる。
低くて甘いトーンの声。
そんな声…や…
「みのりさん?判っているよね?僕だって事」
「わ…ってる…池上さん…」
「透也だよ…」
透也
セーターの中に手が入り込んでくる。
ぱちんと、ブラジャーのホックが外された。
胸が楽になる。
ほっとした瞬間、彼の手が私の胸に触れた。
彼の手の温度、すべすべした皮膚の感触―――――
前にも思った。
しっくりときて、気持ちが良いって。
「ん…」
胸の先端部を弄ってくる。
敏感な場所がぴんと硬さをもって立ち上がる。
「ん…や…ン」
ぶるっと身体が震えた。
そんな風に私の身体に触れないで。
セーターが捲り上げられて、素肌に空気を感じまた震えた。
柔らかな舌の感触が先端部に感じられた。
まわりを舐め回してその実をきつく吸い上げる。
じんっとした僅かな痛みと、甘い感覚
「んっ、あっ…」
思わず身体を起こしかけたけれども、彼の体重によってそれが阻まれる。
ふわっと彼の香りを鼻腔に感じる。
清潔そうで、それでいて甘く誘い込むような香水の匂い。
私が反応を見せたのを良いことに、彼は執拗に私の先端部を攻めてくる。
それに対して私は反応せずにはいられない。
声を上げると、たっぷりと唾液を含ませた舌先で私の実をちろちろと舐める。
そんな風にされると…嫌だ…
声がいっぱい出てしまう。
「胸が相当良いみたいだね」
「やーっ…やだぁ」
「可愛い胸をしているね。感度が良くって、もっともっと弄りたくなる」
「や…やだよ…」
「ここだけじゃ、嫌だって事?」
フッと彼は息づいて私のスカートを捲る。
私は膝を閉じて内股に力を入れた。
「そんなに…ん…力、入れないで」
胸に与える快感は忘れずに、彼は私の太股を撫で回した。
「や…はぁっ…ん…」
彼の皮膚の感触が心地良くて、小さな抵抗が奪われていく。
開かれた僅かな隙間に彼の手が入り込んできて、ショーツの上から私を撫でた。
「ふっ…やっ…」
びくんと私の身体が反応し知らず彼の逞しい身体に腕を回し抱き寄せてしまう。
「あぁっ」
「足を開いて、学校じゃないから…出来るよね?」
「と…や…、嫌、やなの…」
「僕に、身体を預けてしまって」
「やだ…駄目だよ…」
「ねぇ、聞いてみのりさん…僕は、あなたが好きだよ…」
「っ…は?」
「聞こえた…?」
「聞こえな…い」
ふるっと頭を振ると、耳元に唇を寄せてきた。
「みのりさん、好きだ」
「はっ…やっ…」
私の身体の敏感な場所に指を押し当てて、くりっと弄った。
的確で、効果的な力加減で。
もう一度、と、私の身体が反応する方法で。
「あっ…あっ…」
退きかけていく彼の指を追うように、自分から押し当てに行くように私の腰が
彼を追った。
「初めて寝るのに、そんなにイイ反応をしてくれるのは君が初めてだよ」
もう一度、彼がその指を私に押し当ててくる。
優しくその芽を愛でてくる。
「ん…ふっ…」
「快楽に従順なんだな。そんな風に仕込まれたって事だ」
「透也…」
「中は、どうなっているの?」
ショーツの隙間から指を差し入れてきた。
直に指が私の芽を摘む。
「はっ…あっ…あぁ」
私はぎゅうっと彼に抱きついた。
身体が小さく震えて、その震えが彼に伝わるぐらい身体を密着させる。
彼の指がぬるっと私の入り口の周りに触れた。
その感覚で、自分がもう濡れてしまっている状態であることに気が付かされる。
「もう何も必要が無い位、濡れているね」
彼の指が、クッと私の体内に入れられる。
「ひゃっ…あっ」
私の体内が彼の指との摩擦に反応して、じわわっと甘い快感をわきたたせた。
彼がもう一本指を差し入れる。
そして前後運動をさせた。
「良いね…この内部の感触…温度とか、上部のざらつき感とか…」
ざらつき感??
なに、それ
「この肉壁に擦り合わせたら…堪らないんだろうね」
彼は私の体内の上部を執拗に擦ってくる。
「い…やぁん…」
「ここ…この部分。男なら、誰でもはまってしまう様な内部だ」
「あっ…あんっ…」
「…参ったな…僕が負けてしまったらどうしようか?そうしたら立つ瀬がないね」
そんなことを楽しげに彼は言っている。
「景ちゃんは、入れたら割と早めにイッてしまわない?」
…なんでそんなこと、判るのよぅ…
「君、良いよ…凄く…混じり合ったときの事を考えたらゾクゾクする」
そう言って彼は指を引き抜くと、私のショーツを身体から抜き取った。
「服も、もう要らない」
彼は私の身体を起こして、あっと言う間にセーターとかスカートを脱がす。
そして自分のシャツやズボンを脱ぎ捨てた。
それから、激しいキス。
私が応えきれないほどの激しさで口腔内をまさぐる。
舌が、柔らかくて気持ち良い。
煙草の少し苦いフレーバーがスパイスになって余計に感じてしまう。
透也…煙草を吸う人なんだ。
私と居るとき、吸っていなかったから気が付かなかった。
…液体が流し込まれてくる。
透也の唾液だ。
私の喉が鳴る。
「ふは…ぁん…」
「…いい子だ…君からもしてご覧、僕が飲み干してあげるから」
「え…でも…」
「ほら…」
透也が私の下になって、私の頭を押して自分の元へと導く。
唾液を、流しこめって事?
そんなのしたこと無い
ちろりと彼が私の唇を舐めて、開くように促してくる。
私は少しだけ自分の口の中でそれを溜め込むと、彼の口の中に流し入れた。
彼は宣言通りに私のそれを飲み込んだ。
…変なことをさせる。
「中腰になって立てる?膝をついて」
「ん?え…」
私は彼の身体を脚の間に置いたまま、膝を立てて身体を起こした。
ちょっとぐらっとする。
アルコールに浮かされているからだ。
透也は身体を下げて、私の股の下辺りに顔を持ってくる。
「え、あ…なに?」
彼の顔が私の繁みに埋められる。
柔らかな舌先が私の蕾をちろりと舐めた。
「透也っ…ああんっ」
私は身体を前に倒して手を付いた。
身体をちゃんと支えていないと、自分のそこを透也の顔に押しつける格好に
なってしまう。
「いやっ…そんな、所から見ないでっ」
自分が上になって透也にそこを舐められるというのは、なんだが自分が彼に
それを強要でもしているような感じがして淫らだと思った。
「もっと腰を落としていいよ?僕の唇に擦りつけるように動いてみなよ」
蕾と入り口との小道で彼は舌を往復させた。
ぞくんってする。
「あ、あふぅん…」
「溢れてきてる」
ちゅっちゅっと彼はそこを吸い上げた。
「あはぁっ…ううぅ…ン」
「気持ち良い?」
彼は私の裂け目を開いて舌を押し入れてくる。
入り口に差し入れした。
中途半端な体内への愛撫にもどかしさを感じる。
気持ち…良いけど、だけど、もっと熱くて、硬くて、しっかりとした形を持っ
たものをそこに入れて欲しい。
指じゃなくて、舌じゃなくて、もっと大きくて太いものを。
私の中で欲望がむくむくと頭を持ち上げてくる。
私はそっと後ろを振り返って覗き見る。
彼の、身体の下の方を。
カルバンクラインの黒のボクサーパンツの柔らかい生地を押し上げるように
彼の欲望が天井を向いている。
彼の、透也のそれ。
あれを、私の身体の中に沈めて欲しい。
「とう…透也ぁ…」
「…欲しく、なった?」
彼は私の何もかもを見透かすように笑って応える。
私はこくこくと頷いた。
「欲しいなら欲しいって、ちゃんと口で言って」
笑いを含む声で彼は私に言わせようとする。
望む言葉を。
「とう…や…欲しいの…」
「何を?」
「…貴方の、あの…アレ…」
「”アレ”ね」
ふっと彼は笑う。
「良いよ…入れてあげる」
透也は身体を起こした。
彼はセカンドスキンを素早く身につけると、私の身体にそれを押し当ててきた。
入り口に彼の熱を感じた瞬間、私は、はっとして腰を退いた。
私…
「や…やだ」
「みのりさん?」
「だめ…や、やっぱり…しない」
「どうして?」
「だって、私…景ちゃんしか知らないんだもの、私ずっと、景ちゃんしか…」
私は景ちゃんが初めてだった。それからずっと浮気なんて勿論したことがなか
った。
私に触れるのは彼だけだった。
「それが…なんだって言うのさ」
「これからだって…私は…」
「そんなの知らない。これからは、僕だけ知っていればいい」
「やっ…いや…やだっ…透也、待って」
「待たない…君を、奪うよ…みのり」
「いや…やぁ…」
「何も考えるな、僕に抱かれること以外は。他の男の事なんて考えるんじゃな
い」
私の言葉を奪うように彼は私に口付けて来て、舌を絡みつかせてくる。
舌の根まで吸われるように吸い上げられて、激しく口腔内で蠢かせる。
身体の中心に硬くなっている彼の熱を感じて、そして一気に突き上げられた。
彼を受け入れる準備が出来ていた私は、易々と彼を呑み込む。
ずしっと彼の重みを感じた。
「ひっぁ…あぁっ!」
「みのり…僕は、どう?」
腰を揺らしながら彼は言う。
「僕のはどう?…彼と、比べて」
「けー…ちゃ…」
「他の男の名を呼ぶのは止めて。みのりは今、僕に抱かれているんだよ」
自分の存在を主張するように彼は前後に腰を動かして私を激しく揺する。
「ああぅっ」
彼の体温が私の中に侵食してきて全てを吸い上げて行きそうな勢いだった。
最奧に彼を感じて私が声を上げると、彼はピンポイントにそこを攻めてくる。
「…判ったよ…ここが、君のイイところなんだね?」
「と…透也ぁっ」
「いつもはどうやって抱かれてる?入れてる時にクリトリスも触って貰ってる?
どうして貰いたい?ねぇ…みのり」
「あっあぁっ…やんっ」
「ぴっちり僕に吸い付いてきてるよ。このままがイイの?」
「とう…やっ…」
腰が、彼と同じようなリズムをもって動き出す。
同じ律動を繰り返し、時にはそれを乱して、お互いの性を貪った。
「みのり…そんなに僕って気持ちいい?」
私の中で彼の欲望が一層膨らんだ。
もうこれ以上無いと言うぐらいに私達は密着しあった。
私が、こんな風に男の人を求めるなんて初めてだった。
退こうと思うのに退けない。より一層深い繋がりを求めてしまうなんて。
「…膣の中だけでイッた事ある?…あるよね?知っているから求めるんだよね」
ぐっと深く彼は私に侵入してきた。
「し…しらな…」
「じゃあ教えてあげる」
彼は出し入れするだけじゃなく、円を描くような動作も入れながら私をかき乱
してくる。身体いっぱいに彼を感じて、私達はひとつだった。
見上げると、パープルアイが私を見つめている。
私の行動や変化をひとつも逃そうとせずに見つめている。
目が合うと、少しだけ眉をひそめて微笑んだ。
「みのり…」
満足そうにも見えるその笑顔。
彼は、私をどうしたいの?
指先やつま先に甘い痺れを感じる。
それが徐々に強くなっていって、その感覚に呼応するように彼がまた動いた。
激しく私の中をかき混ぜた。
白い波が来てる。意識の遠いところから。
何度も動く彼の身体に調子を合わせるように私も動いて
「あっ…あーっああっ」
「良いよ…みのり…はっ…」
くちゅくちゅっと私達が混ざり合う音が部屋に響く。
凄く濡れているのにきつくて、張りつめている彼の欲望は私が思うよりもうん
と大きかった。
同じ男の人なのに、全然違う
私が限界に近いところに追い上げられているというのに、透也はまだ余裕の
ありそうな表情をしてる。
時々、甘く溜息をつくだけで。
「透也、透也っ」
「イッていいよ。もう…我慢出来ないだろ?」
「あふぅっ…あっ、ああん!」
「みのり…あぁ…凄く良い…」
来る。
大きな波。
私を飲み込んで突き上げていく波が。
「あああああんっ」
絶頂の瞬間、彼は最奧まで自分を私に突き刺して動きを止めた。
私がぎゅううっと彼を締め付けているのが判る。
まだしっかりとした形を保っている彼のものに私の内壁がびくんびくんと反応
する。
「はぅ…ううぅんっ」
絶頂の後も小さな波が立ち上がって来て私の身体がひくついた。
その間、彼はじっとして動かない。
私の波が満ち引きしているのを楽しんでいるように、見下ろしていた。
「は…はぁん…」
「…落ち着いてきた?」
「…まだ…うごいちゃ…や…」
「あぁ…」
彼が私をそっと抱きしめる。
まだ熱を持ったままの肉体で。
私の体内がイッた余韻でひくひくと透也を震わせる。
「…透也」
「まだ、反応してる。ぴくんって」
「あぁ…んっ」
彼がゆるゆると腰を退いていく。
そしてまたゆっくりと私の中に入ってくる。
「うぅんっ…」
「凄く、締め付けてくるよ。まだ足りない?」
「やー…ん…」
身体が欲求するものは満ち足りてはいた。
これ以上なんて私は知らない。
「もう一度位イケそう?どう?」
ゆっくり、ゆっくりと彼は動き始める。
手放したはずの快感が身体によみがえってくる。
「透也…もぉっ…駄目…」
「まだイケる。君なら…」
「い…やっ…」
言葉とは裏腹に、腰が動いて、彼が奧に侵入しやすいように私は足を開いてし
まう。
彼が、ふっと息をついた。
「最高の反応だね…」
「もう、やぁっ」
「身体は欲しがってるよ」
彼はそう言って巧みに私の中をかき乱す。
透也が言うように、本当に身体は彼を欲していて、彼が揺れるように私も身体
を動かしてしまう。
「んー…とう…やっ」
「もっと、欲しいんだろう?僕が」
「ああっ」
透也は抜けるか抜けないか位の場所まで自分を私から遠ざけた。
「欲しいと言ってご覧よ」
「抜かない…でっ」
「入れて欲しい?」
「あっ…入れて、欲しいよっ…」
欲望が身体の中をぐるぐる渦巻いていて、体内の喪失感に耐えられそうに無い。
また私の中をいっぱいにして欲しいと強く願ってしまう。
「ねぇっ…透也っ」
私が自分から腰を押しつけようとすると、彼は身体を浮かして遠ざかる。
「…僕ね、君とのこと、今夜限りにするつもりは無いんだ」
「え…?」
「もっと抱きたい。もっと淫らな君が見たい」
「…」
「また逢うと約束して?」
「そ…そんな…の…出来な…」
つぷっと先端だけを私の中に差し入れてくる。
そして快感の種を開かせるように腰を揺すった。
そんな入り口だけへの刺激じゃ全然足りない。
くすぶっているのはもっともっと奧だ。
彼の欲望で擦り上げて欲しいのは、もっと中だ。
私は腰を起こして自分から彼を招き入れた。
今度は彼は退かなかった。
「ああ、もう…入れちゃって…」
「欲しいの…」
「判るよ。僕も、君が欲しい」
「透也ぁ…」
「そんなに可愛い顔をして僕を誘うの?」
「動いて欲しいの…もっと、さっきみたいにして」
「いいよ…だから、約束をして?僕が誘ったら断らないって」
「う…う…」
「約束、だよ」
私はこくこくっと頷いた。
「僕の目を見て」
私は彼を見上げる。
艶やかに輝くパープルアイが私を見つめ返してくる。
「ね…愛してると言ってご覧」
「…」
「僕は、愛しているよ」
「私、は…」
「愛しているから抱きたかった」
甘く艶やかな表情で彼は微笑む。
私の唇が震えた。
透也が私を愛している??
…だけど、私は…
「言えない…言えないよぉ…」
涙が溢れてこぼれ落ちた。
それは言えない。
その言葉は、それだけは言えなかった。
どんなに欲望に屈していても。
「みのり…」
「う…うっ」
涙を堪えようとしても嗚咽が漏れる。
それを見下ろして透也は私の頭を撫でた。
「ごめん」
ぐっと奧に彼は身体を押し込んできた。
そして、彼に知られてしまった私の感じる場所に彼の欲望が触れた。
「ひぅっ…」
「欲張りすぎた…何もかもを一度に手に入れられるなんて思っていなかったの
に」
「あっ、はぁん…」
私はぎゅうっと彼の身体に抱きついた。
混ざり合う肉体に心をどこかに置いてしまいながら。
現実に目を瞑った。
今だけ、今この時間だけ良かったらそれでいい…
透也はぴったりと私の身体に下半身を押しつけて何度も揺れた。
無駄な動きなんて何一つ無い。
彼の動きのひとつひとつに私は確実に翻弄されていった。
今だけなら、何処までも連れて行って―――――
二度目の絶頂の予感がしたとき、彼は余裕のない表情をして身体を前後させた。
「はぁ…はぁっ…みのり…ん…ふ…ぁ」
甘い溜息混じりに私を呼ぶ声。
耳の傍に彼の唇を感じながら私は彼に動きを合わせる。
「みのり…っク…」
彼は眉をひそめて、彼自身のその時が近いことを私に知らせた。
私の身体も、もう一度絶頂へと持ち上げられていた。
もう、その限界に。
息を詰めた。
透也のその部分にだけに集中をして私は身体を動かす
彼の動きが一層早くなった。
「みのり…みのりっ」
「透也…い…くっ…ンっ」
「僕もだ…僕も、もうっ…」
「いくっい…ちゃうっ…あああっ」
「出すよ…みのり…」
「う…うんっ…」
「みの…りっ」
ぐんっと彼が身体を強く押し込んできた。
その感覚に私の中に有ったものがぱちんと弾けて意識が真っ白になった。
「とう…や…ぁ」
びくんびくんっと跳ねる身体を、透也はしっかりと抱きしめていた。
今度は私の余韻の波を待たずに身体の中から彼自身を抜き出していった。
ちゅっと唇を重ねてくる。
「最高…ゾクゾクした。イク時鳥肌がたったよ」
身体をさすって彼は目を細めた。
「君、凄いな。思っていた以上だよ…」
透也だって、凄かった。
私は今まで自分が知らなかった性に目覚めさせられた気分だった。
透也が優しく微笑んだ。
私は彼のその笑顔に応えられずに背を向ける。
…このまま…このままずっともしも彼とふたりきりの世界が待っているので
有ればどんなにいいかと思った。
私は、明日からの世界に不安を覚えながらも瞳を閉じた。
抱きしめてくれる彼の身体を背中に感じながら…。

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