■■あなたの居る場所 4■■



「月曜日って、ちょっと怠いよなぁ」
「…」
「みのり?」
「…」
「おい、みのり?どうした呆けて…バカになったか?」
景ちゃんが私の目の前に手をかざして振った。
私は、はっとする。
「あ、うん?何?」
「何ボケボケしてんだよ」
「あは…ごめん…」
景ちゃんの指が、こつんと私の頭を小突いた。
「遊びすぎて、体力無くなってんじゃねーぞ」
「…」
「日曜は、みのりと逢えなくて暇になっちまったろ?だから高校の時のダチと
遊びに行ってきた」
日曜日、と景ちゃんが言ったとき、胸がどくんっと音を立てた。
「へ…へぇ。何処に行ったの?」
「東雲海岸で、バーベキュー。寒かったぞ」
「ふ…ふぅん…」
「でも冬の海っていいな。静かでさ。今度行こうぜ?連れて行ってやる」
「うん…行きたいな…」
ノートに走らすシャーペンが少し震えた。
私、この人を裏切った。
初めて…景ちゃん以外の男の人に、身体を許した。
淫らに喘いで、求めて、朝が来ても抱かれて…何度もあの人の名前を呼んで…
そう、ほんのついさっき。
登校する少し前まで、私は他の男と情事にふけっていたのだ。
まだ身体が熱を持っているように火照っている気がした。
「今日はこの後午後の講義まで別々だな」
「あ…うん、そうだね」
「昼は学食な」
「うん」
「…」
ふにっと景ちゃんが私の頬に人差し指を突き刺してくる。
「やだぁ、何するのよ」
「おまえ、可愛いなぁって思って」
「え?」
「はっ…バカみてー、一日逢わなかっただけなのによ」
そう言って景ちゃんは、そっと私の手を握った。
「今日の夜は空いてんだろ?」
「…う、うん」
「俺の家、来いよ」
どきんっとした。
行くって、即答できなかった。
「…いいだろ?」
「う、うん」
くしゃっと私の頭を撫でて、景ちゃんは正面を向いて講義に気持ちを向けた。
胸がどきどきした。
張り裂けそうに痛い。
景ちゃん、ごめんなさい…謝って許される事では決してないっていう事は判っ
ていた。
だけど、自分の犯した罪の深さに懺悔せずにはいられなかった。

******

二限目、石田教授の講義。
私の隣に髪を一つに束ねて眼鏡をかけた池上さんが座って来た。
金髪という派手さはあるものの、こうして見ると普通の男の子という感じがす
る。
昨夜私を抱いた人物と同じ人とは思いがたかった。
「目赤いね。昨日少ししか寝られなかったからかな?」
ぽつりと彼が言う。
それに対して私は返事をしなかった。その代わり違う言葉を吐く。
「池上さん、あの…もう、私に関わらないで欲しいんです」
私の言葉に対して、彼は薄茶の瞳だけを動かして私を見た。
「…今の発言に対して僕はふたつ君に言わなければいけないね」
「え?」
「まず、”池上さん”じゃない。”透也”だ。何度も言わせるな」
「…」
「それから、もう関わるなというのは約束が違うんじゃないの?」
「だ…って、私には、景ちゃんが居て…これからも、仲良くしていきたいの」
「ふぅん」
ふっと彼は笑った。
「仲良くすれば?けーちゃんと」
含みのある言い方を彼はする。
「だ…だから、貴方とは…もう…」
「僕を呼んで、僕を求めて、寝る間も惜しんで抱き合ったのをもう忘れたの?」
「そっそれは…」
「先に出会った方に君を奪う優先権があるなんて僕は思わないよ。君は確かに
僕を求めた。僕を欲しいってね」
「言わ…ないでよっ」
「事実だ」
「…」
「今日は何コマ目まで講義あるの?」
「4限」
「僕もだ。今日その後、時間を空けろ。いいね?」
「今日は駄目、景ちゃんと約束があるの」
「僕の誘いは断るなと言った筈だけど?」
「だって、無理だもん。それに貴方だってお店があるじゃない」
「店に行く前に時間がある」
「…駄目」
「駄目じゃないよ。君が自ら時間を作らないって言うのなら、僕にも考えがあ
るよ」
「な…なにそれ…どういう意味?」
「景ちゃんの目の前で君を連れ去ってやる」
「そんなこと、やめてっ」
「だったら自分から僕の所に来い」
「そんな…意地悪、言わないでよぉ」
涙が滲んだ。
「泣けば許して貰えるとでも思っているの」
ワントーン低い声で彼が言う。
「も…許して…」
「許さないよ」
「透也ぁ…」
ちらりと彼がこちらに視線を送って来た。
薄茶の瞳が無表情に私の姿をとらえる。
「景ちゃんと約束があるって言うことは、君は今日、奴に抱かれるって事か
?」
「…」
「昨日あれだけ僕と交わり合ったのに、今日はもう違う奴と寝るんだ」
私はそれに答えられずに俯く。
涙が滲んでぽたぽたと落ちた。
「ふっ」
透也は肩を揺らして笑った。
「やってみなよ、そうしたら君は知ることになる。僕と奴との決定的違いをね」
「…と…や…」
「っていうか、もう君は判っているんじゃないのか?昨日の時点で」
「その自信、どこからくるの…女の人、いっぱい抱いたことがあるから?」
「気持ち良かったんだろ」
「っ…」
息を詰まらせる私に、彼は薄く笑った。
「当たり前だ…僕が君に与えたのは身体の快楽だけじゃない。僕の、想いを
与えた」
透也は私をじっと見つめてくる。
「愛していると言った…忘れたの?」
私は首を振る。
必死にそれを否定するように。
「貴方の想いは、私には届いてないよ」
「届くまで、教えてやろうか」
薄茶の瞳が甘く滲む。
彼の眼鏡のレンズには怯えた私の姿が映し出されていた。
「もぉ、やだよ…どうして私なの?貴方だったら、私じゃなくてもいいじゃな
い」
私のその言葉に、彼はフッと笑った。
「君でなければいけない理由を知りたいのは君じゃない、この僕だ」
「…え…」
「君でなくても良いのなら、僕は君を抱かなかった」
「…」
「僕がどれほど君に焦がれているか、知らない君が許せなくなった」
低い声で、感情を抑えるようにして透也が言う。
「僕の存在すら気が付かない君に僕を知らしめたかった…ずっとね」
「…」
「もう忘れろと言うのは無理だ…僕は君を知ってしまったから。君が僕をどん
な風に包んで求めてその激しさをぶつけてくるかを知ったから、どんな風に僕
の熱に対して従順に応えてくれるのかを知ってしまったから逃す事は出来ない」
「透也」
「…奪ってやる」
そこまで言って、透也は開いていたノートを閉じて鞄にしまった。
彼は私のノートも閉じて私の鞄に突っ込む。
「来い」
彼は私を掴んで席を立たせ、教室を後にした。

******

私は大学の近くにあるラブホテルに連れ込まれた。
あっさりこんな所に連れ込まれてしまう私も私だ。
どうして振り切れないの?彼の腕を
「こんな事、しないで!講義を抜けるなんて…お昼、景ちゃんと一緒に摂るっ
て約束してるのに、こんな…」
「昼までに戻れればいいんだろう?」
「透也!」
私は壁際に追い込まれ、彼の腕が私の両脇に置かれる。
「もうやだ…もうやだぁ」
「みのり…」
ぶんぶんと頭を振るが、その頭を彼の両手で押さえられて動きを制される。
近付いてくる彼の顔。
「や…」
重なり合う唇。
彼は私の唇と擦り合わせるように唇を押しつけてきた。
温かで柔らかな唇の感触に、私はすぐに溺れてしまいそうになる。
はっ、と自分の意識を引き戻して、私は彼の胸を押した。
だけど、彼の身体が私から離れる事はなかった。
より強い力で私を制してくる。
「嫌だってば!透也」
ふふっと彼は笑う。
「君が僕を拒否すればするほど、僕のほうは燃え上がるんだよ」
そんな事を言いながら、彼は私の耳たぶを甘噛みしてきた。
私が痛いと思う一歩手前の絶妙な力加減で。
「ひゃっ…」
熱い吐息が私の耳の傍で漏れる。
耳の皮膚を撫でていく彼の吐息に私の身体がゾクッとした。
「ほら、もう反応する…」
笑いを含んだ声で彼は囁いてくる。
「これは、違う」
「何が違うの?君が僕を忘れていない証拠だ。君は感じ始め、そして淡い期待
を持ち始める。何に対してへの期待かは言わなくても判るよね?」
「誰が…っ、期待なんて」
私は再び彼を押すが、先程と同じように彼はびくともしない。
痩身に見えて、彼は力がある。
男と女の力の差なのだろうか。
「立ったままする?それともベッドに行く?」
「どっちも…っ」
「立ったまま、だね?」
彼は左手で私の両手首を掴むと私の頭の上に持っていく。
そして右手が器用に私のブラウスとカーディガンのボタンを次々に外していき、
私が抵抗し始める頃には、私の肌は露わになっていた。
「キスマークを君の肌に残したら、今夜彼はなんて言うだろうか」
私の首筋に舌を這わせながら彼が言う。
「や…やめて…」
「やめると思う?」
鎖骨に唇を押し当てて、彼は私の皮膚を強く吸い上げる。
「っ…」
赤らんだその跡を透也はちろりと舐めた。
「ふっ…見事に色づいた」
「透也!」
「これでも今夜彼に抱かれるのかな?」
私が眉をひそめて俯くと、彼は耳に唇を寄せてくる。
「欲しいと欲望がわきあがらなくなる位、僕が抱いてあげる」
透也はそう言うと、私のスカートを捲り上げてショーツに手をかけた。
「やだっ」
彼の手を避けるように私は腰をくねらせたが、透也の手はそんな私の抵抗にも
容赦無しに次へ次へとステップを進めていく。
私のショーツは下におろされて、隠しておきたい部分が露わになった。
「透也っ、やめてぇ…」
彼の手が秘部に触れて来て、その芽に与えられた刺激に私の身体は震えた。
漏れそうになった吐息を私は寸前で堪える。
私が声を上げれば、彼が悦ぶだけだ。悦ばせて、あの身体に火を付けるだけだ。
透也の、身体に…
そう考えた瞬間、私の奥底にあるものが情欲を呼び覚ます。
透也の身体。逞しくて貪欲に何処までも私を求めてくる彼の…
身体中の血が一気に沸騰したかのような熱い高ぶりを自分の身に感じてしまう。
透也の、
透也の身体は…
彼に抱かれた昨晩の一瞬一瞬が自分の身体によみがえってくるようで、私の身
体がゾクンっと反応した。
どうして私の身体はこんなにも彼に従順になってしまうのだろうか。
反発しようとする私を押さえつけるように私の身体が火照る。
私の裂け目を前後するように動いていた透也の指がぬるりと滑った。
透也は何も言わずに、ふっと息を漏らして笑う。
おまえの身体はこんなにも意のままになると私を嘲るように。
私の理性が”抱かれてはいけない”と言うのに、本能に近い部分が彼を追い求
める。
透也の唇が私の肌を這い、指先が体内へと押し込まれた。
僅かな抵抗も見せずに、私の内部はすんなりと彼の指を受け入れる。
透也の指は私の上部を擦り上げた。
「ひっ…あっ…」
声を押し殺すことも出来ずに私は情けない声を上げる。
彼の指は内壁を刺激するように出入りを繰り返す。
そこへの刺激もそうだが、私の肌に吸い付くように滑っていく彼の柔らかな唇
にも快楽を感じた。
彼の皮膚の質感は堪らなく私を惹きつけるものがあって、それは容赦無しに私
の理性というものを私から奪っていく。
透也の身体の前では、私は抵抗など出来ないのだ。
どれだけ心がそれを拒もうとも。
「…みのり、じっとしているんだよ。いいね?」
彼が小さな子を軽く叱るような口調で言う。
私がなんの反応も見せずにいると、私を押さえつけていた左手が私から離れた。
ぼんやりと彼を見ると、彼は私達が交わるための準備をしていた。
ああ…また彼に抱かれる
ふと頭に浮かんだその言葉は、絶望のそれなのかこれから起こる事への期待が
込められたものなのか。
私の身体は裏返されて壁へと押しつけられて彼の手が腰に添えられる。
身体への入り口に透也の硬い熱があてがわれ、私は息をのんだ。
ゆるゆると彼の身体がゆっくりと私の中に埋め込まれていき、内壁が彼と擦れ
合うたびに私の身体はびくりと反応を示す。
知らず、口からは吐息が漏れる。
深いところに入り込むと、彼はその腰の動きを止めた。
静止した状態でいると嫌でも彼の存在を膣内で感じる。私の体内で大きく勃ち
上がっている彼を。
(透也の…大きい…)
自分の身では受け止めきれないと思えるほどそれは膨らんでいた。
私は侵食されていく感覚を奥歯を噛みしめて堪える。
だけどその甘やかな誘惑は私の忍耐を奪っていく。
私の内壁が締め付けるとぴくんと反応を示す彼のそれは、早く早くと私を急き
立てる。
動いて欲しい。
動いて動いて、昨日の様に求め合って快楽の全てを私に与えて欲しいと願う心
が私を揺さぶる。
私は、たったの一日で、こんなにも彼に溺れさせられてしまったのか
「とう…や…」
「…自分で動いて。君の良い様に君が求めるままに…ね」
余裕たっぷりの彼の口調に屈辱を感じながらも、私は透也の前では膝を折るし
かなかった。
私はゆっくりと腰を動かす。
体内で透也を強く感じて声が漏れ出てしまった。
唇を噛みしめても、混ざり合う感触に息が漏れる。
「…ぅ…ぁ…ン」
「諦めて僕を受け入れるんだよ。そうすれば今ある快楽はもっと大きいものに
なるから」
もっと、大きいものに?
その言葉は何て甘美なものだろう
私はもっと欲しい。今あるものでは全然足りない。
「透也…透也っ…」
私は、ぐっと彼に身体を押しつけた。
最深部に到達する自らの行為に声を荒げて。
「そう…君はもっと貪欲な子だ」
透也は笑って、それから腰を動かしてきた。
快感が強くなる。
それを悦ぶかのように私の内部が彼を締め付ける。
もっと強く擦り上げて。
もっと深く私を突き上げて。
彼の腰の動きに合わせるようにして私は淫らに踊った。
「良いよ…その調子だ…」
透也で身体がいっぱいになって、頭の中も彼の事しか、彼との行為の事しか考
えられなくなっていく。
何て淫らで浅ましい女なのだろう
自分の本性がむき出しにさせられた気分だった。
「少し…反応が悪いね。後ろからは嫌い?」
十分過ぎるほどの反応を見せているのに彼はそんな事を言う。
「前からの方が好き?担ぎ上げてあげようか?」
「…え…?」
透也はくるんと私の身体を反転させると、自分の首に私の手を回させて私を持
ち上げた。
「透也、何を…ひゃあんっ」
私はかつて抱かれたことのない体位で彼に抱かれた。
自分の全体重が透也の一部に集結させられる。
私は落とされまいと、彼の首にしがみついた。
「や…落ちちゃう…っ」
「大丈夫、落とさない」
ふっと、透也は笑うと私を揺すった。
「あっ…ああっ」
私の身体を持ち上げることで硬くなった彼の筋肉質な身体に、私は一層彼に牡
を感じて燃え上がる。
「透也っ透也ぁっ」
「はっ…良い声…」
「もっと…もっと、欲し…」
「もっと犯されたい?この僕に」
「…も…もっと…されたいっ…」
ぶるるっと身体が、心が震えた。
呼応する筈のない言葉に私の全部が反応する。
どんどん私が私で無くなっていく。
自分でも知らない女が私の中にいる。
透也は私を抱え上げたままベッドまで歩いてそのまま私を押し倒し、激しく腰
を使った。
そんな彼の行動に反応するように私は大きく足を広げて腰を揺すった。
「あっ…ああっ」
「これが良いの?この体位が好きなの?」
私が抱かれ慣れた体位でスムーズに身体をくねらすと彼がそう言った。
目の前に透也の綺麗な顔がある。
嫌でも、この男に抱かれているのだと自覚させられる。
だけど今更引き返せない、最後まで抱いて貰わなければ狂ってしまいそうだっ
た。
私は必死になって彼を求めた。だが、そんな私の行為が彼を変える。
透也は私を押さえつけて、あろう事か私の内部から自身を引きだしていったの
だ。
「このまま止めたらどうする?」
私の心うちを知っているように彼は極めて冷静な声で言う。
「そ…そんな…透也…」
「僕を否定する悪い子、罰が必要?」
私はこれ以上彼が離れていかないように透也の腕に自分の腕を絡めた。
「いや…いやよ…」
「だったらもう一度約束できる?僕の誘いは絶対に拒まないと」
「…っ」
私が、クッと息をのむとその気配を察した透也が目を細めてにやりと笑う。
「ああ、そう」
起きあがろうとする彼を私は必死になって引き留める。
「いやっ、約束…するからっ」
「また同じ事をしたら、その時は許さないからな」
無表情な薄茶の瞳が私にそう言った。
許さないってどんな風に?
私は想像も出来なくてゾクッと震えた。
「う…ウン…」
「……」
彼は私の額に手を置いた。
そして甘く優しく囁くのだった。
「愛しているよ」
再び彼は私の中に戻ってきて、激しく私を前後に揺らした。
「と…やぁっ…」
私は彼の言葉には応じずに自分の腕の中に彼を閉じこめた。
透也はその事は気に留める様子もなく、私を突き上げる。
「ン…ん…あっ…」
「…みのり、僕にキスをしろ」
私の顔の上で彼はそう私に命じた。
私はそれに従い、身体を少し起こして彼の唇に自分の唇を重ねた。
ぬるっと透也の舌が私の唇を割って入ってきて、私の舌を絡め取る。
その彼の行動に自らも行動をとった。
無我夢中で彼を吸い上げ、流し込まれる液体を悦ぶようにして飲み干した。
もうどうなってもいい
自分を手放して、私は透也だけを求めた。
彼は何度も何度も私を突き上げて、私が高い声を上げると一層その動きを速め、
かと思えば、微妙に擦れ合う場所を移動させ緩急をつけて動く。
私がひとつの快感に慣れてしまわない様に。
飽きさせないようにして私に自分を求めさせる。
「あっ…はぁっ…うぅっ」
私がすすり泣くように声を上げると、透也も息を乱した。
眉根を寄せて苦しそうに私を見ている。
「透也…私…私…」
「はっ…もっと好きな様に動いていいよ…大丈夫、どんな風にしても君が終わ
るまでは僕は終わらないから」
限界が近いようにも見えるのに彼はそう言った。
「信用して…それとも僕に終わらせて欲しいの?それでもいいけど」
少し熱に浮かされた様に喋る彼の口調が堪らなく色っぽくてゾクッとした。
あぁ、彼の好きなようにされたい。
そうして昇り詰めさせて欲しい、滅茶苦茶にされたい。
「透也に…透也にされたい…っ」
「OK…判ったよ」
クンッと彼が腰を落とす。
すると、ぴたりと私のポイントに彼のそれがあてがわれる。
その行為に透也の技術が垣間見られた。
二年付き合っている景ちゃんにだってこんな真似は出来ないと言うのに。
「くぅ…ンっ」
強い快感に私が身体を反らせると、それを押さえつけるようにして透也の手が
私の肩に置かれる。逃れることを赦さないようにして押さえつけてくる。
そんな彼の行動が彼の独占欲にも思えて、力で制されているというのに不快に
は思えず、それどころか私は一層の快感を自身に感じた。
「あっ…あっ…ああああっ…とうっ…やっ」
つんとした痛みとも快楽とも言い難いものが私の中を突き抜けていく。
その快感の波は今まで感じた事が無いほど、強烈なものだった。
達した私を見て、透也も己の限界を欲するように激しく腰を使ってきた。
ぐんっと私の最奧に入り込んで、透也自身がぶるっと震える。
彼が私の中に欲望を吐き出した瞬間だった。
透也は私の中に余すことなく全てを出し切るように2、3度軽く腰を振る。
「…ん…っく…はっ…」
透也が短く息をついた。
同じ快楽を共にした。
他人である筈の彼が、自分とシンクロしたかのように思える瞬間だった。

透也が私の頬に短くキスをする。
彼は薄く笑って私を見下ろしていた。

―――――そして私は離れられなくなる…。

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