■■双恋華 2■■


翌日。
滄先輩はあれからどうなったのか。
聞きに行って良いものか、もう関わる事を迷惑がられるのか、判断出来ないま
まお昼休みになった。

そして、私は昨日の滄先輩告白事件によって一部の女子生徒から無視される様
になっていた。

「女ってこわっ」
遠藤君はそう言って私に騒がした原因を作って悪かったと謝ってくれた。
温子ちゃんも気にする事は無いよと言ってくれたのだけど、その女子達は温子
ちゃんの事もなんだか遠巻きに見ている感じが見て取れて…私はグループの子
達に迷惑を掛ける訳にはいかないと思い、自ら輪を外れてお弁当を持って屋上
へと上がった。
屋上の重い鉄扉を開けるとむわっとした熱しられた空気が私の身体を包んだ。
「暑い…」
ふと、目を向けると日陰になっている所に人が居た。
よく見るとそれは浹(とおる)先輩で…タイミングの悪い事に彼は煙草を吸っ
ていた。
眼鏡を掛けているから絶対に浹先輩のほう。
浹先輩はちらりと私の方に目を向けた。
「こんな暑い日に、屋上になんか来る馬鹿はいねぇと思ったけど居たな」
ふぅっと白い煙を口から吐き出して彼はそう言った。
…なんだか…口が悪い気が…
「す、すみません…あの…誰にも言いませんから」
「別に、誰に言っても構わないけど?あんたの言う事を皆が信用するかどうか
は別として」
それもそうだ。
浹先輩は三年の学級委員代表で優等生で一目置かれているのだから。
私如きが何か喚いた所で信用する人なんていやしないだろう。
私は彼に頭を下げて何処で食べるか辺りを物色した。
「日陰はココしかねぇよ、こっちくれば?」
煙草を銜えながら浹先輩がそんな事を言った。
…聞きたい事もあるし…お言葉に甘えようかな…
私は浹先輩の傍に寄り、ちょっと距離を置いた所に座った。
「なんであんたは一人で屋上なんかで弁当喰うわけ?」
私が先に言葉を発する前に彼の方が聞いてきた。
「…それは…その…」
「もしかしてハブられてるわけ?だっせぇ」
滄先輩と同じ声で、なんて乱雑な言葉を吐くんだろうこの人は。
「…」
「黙ってるって事は当たりなの?ふぅん」
浹先輩は私をジロジロ見てくる。
「なんか女子の反感でも買ったのか?」
薄く笑いながら彼は言う。
「……知らないんですか?」
「何を」
「滄先輩が…私に…」
「あんたに何」
「つ、付き合ってくれって言ったから…」
「あいつが、あんたに?へーえ」
またジロジロ見られる。
「滄があんたに告った事を恨まれて、ハブられてんの?それはお気の毒、あい
つ頭足りねぇからな」
「…そういう言い方…」
「滄が誰にも気が付かれない様にあんたに告ってれば、あんたはハブられずに
済んだわけだろ?頭足りねぇじゃんあいつ」
「…それは…」
「スポーツばっかりやってっから気がまわらねぇんだよ、バカだなあれは」
「いくら兄弟でもそういう言い方は無いと思います!」
私がそう言うと、浹先輩が目を細めた。
「”愛しの滄先輩の為ならワタシ、仲間外れになるくらい耐えてみせるわ”っ
て?」
相変わらず人を小馬鹿にした様な物言いを浹先輩はする。
何、この人。
「…そんな事よりですね、滄先輩怪我の具合はどうですか?」
「はぁ?何、怪我って」
煙草を吹かしながら浹先輩はそう言った。
「昨日…病院に行く程の怪我をしたんですよ?」
「ふーん、そう」
「ふーん、そうって…」
「だって、知らねぇもん」
「なんでですか?そういう事話したりとかしないんですか?」
「俺ら、仲悪いし」
意外な事を浹先輩が口にする。
「え?双子なのに?」
私の言葉に、浹先輩がせせら笑った。
「双子だから仲良くしなきゃいけないって法律でもあるわけ?」
「…そんなの…ないですけど…」
アスファルトの床に、煙草をぎゅっと押しつけた。
「だから滄の事を俺に聞いても無駄だぜ」
「…判りました」
浹先輩は小さな缶の様な容器に吸い殻を入れる。
胡座をかいて座っている浹先輩の足元に目が行く。
三年生の上履きにしては真新しい気がした。
私の視線に気が付いたのか浹先輩が言う。
「どっかの馬鹿に悪戯書きをされたんだよ」
「…上履きにですか?」
「そう」
「どうしてそんな事…」
「恨み辛みの嫉妬かなんだか知らねーけど、ま、一度や二度じゃねーし、別に
どうでも良いけどって感じ」
「恨みって…」
「俺、賢いし」
そりゃ…学年トップの成績であるのは聞いた事はあるけど。
「そんなの浹先輩の所為じゃないのに」
「現にあんただって、自分の所為でもないのにハブられてんじゃん。人間って
こえー」
ククッと彼は他人事の様に笑った。
私は溜息をついて、お弁当の蓋を開けた。
もういいや、早く御飯食べちゃおう。
「それっておかーさんに作って貰っちゃってるわけ?」
また棘のある様な言い方をしてくる。
「毎朝、自分で作ってます!」
「へぇ、えらいじゃん」
「…浹先輩が誉めるなんて事もあるんですね」
「たまにはな」
もぐもぐと御飯を食べていると、浹先輩はじーっと私を見ている。
「…なんですか?」
「その変な形の物体は一体何なんだろうと思って」
卵焼きの事を言っている。
失礼な!
「形は不格好でも、美味しければ良いんです」
「へーえ、美味いのかねぇ」
と、疑わしげに言うものだから私はフォークに卵焼きを突き刺して彼に向けた。
「じゃあ、食べてみたらどうですかっ」
そういう私の言葉に、彼は案外素直に応じて私の卵焼きをぱくりと食べた。
「ふーん、まぁまぁかな」
「…」
一呼吸置いてから、浹先輩が言う。
「滄に逢いたいか」
「え?」
「滄に逢いたいのかと聞いている」
「…わか…んない」
滄先輩の物になる。
私は彼の腕の中でそう言った。
だけど、何が真実で何がそうでないのかが私には判断できない。
滄先輩は私に好きだと言ってくれたけど、でも…だけど…。
「あんたって胸でけぇな」
唐突に浹先輩がそんな事を言う。
「い…一番言われたくない事を見事に言ってくれますね、貴方って人は」
「言われたくないの?ふーん」
「…浹先輩も…」
「なんだよ」
「私が男子とやりまくってる様に見えますか」
私がそう言うと、浹先輩は静かに私を見つめた。
「コンプレックスを持ってるわけ?」
「…私はただ、ちょっとだけ…胸が大きいだけなのに」
「別に胸の小さい女がセックスしてねぇとは俺は思っちゃいねぇよ」
「…」
「セックスすんのってそんなに悪い事?後ろ暗い事か?」
「やりまくってると思われるのは心外です」
「滄に言われたの?」
「…そういう言われ方じゃ…ないですけど」
私はウィンナーを突き刺して、口に運んだ。
…でも、初めての後に”想定外の事だった”なんて言われると胸が痛い。
あっさり彼の誘いに乗った私も私だったのだけれども。
しなければ良かったのかな…
「滄ってなんで怪我したわけ?」
「えっ?あ…そ、それは…」
私は口ごもる。
「あんたが関係しているわけ?」
「…」
私は無言で頷いた。
「俺は別に滄を庇い立てする気もあんたを慰める気もねぇけどよ。だけどさ、
滄がなんで怪我をしたのかっていうのを考えてみたら?そうしたら、少しはな
んかわかんじゃねぇの?」
「…浹先輩…」
「それでもあんたが滄に逢いたいって思わねぇのならそこまでだって事だし」
滄先輩の朱に染まった上履きが思い出された。
私…の、為に滄先輩は自分の身体を傷つけたの?
私の為なの?自分の為なの?
「わかんない…判らないよ…滄先輩が何を考えてるのか」
「ぐずぐずてめぇで考えてねぇで本人に聞けっての、面倒臭いなぁあんたって」
浹先輩はポケットから生徒手帳を取りだして、白いページに何かを書いてそれ
をびりっと破り私に渡してきた。
「え?」
「俺の家の住所、チャリ通してるからここから近いよ。蓮道(はすみち)小学
校のすぐ傍だから、馬鹿でも判ると思う。道案内してやる程親切じゃねーし暇
でもねーから自力で探せ」
「…」
「あんたが言う通り怪我してるってんなら遊び歩いてないで家に居るんじゃね?
俺は今日塾だから、まぁごゆっくり。ちなみに親も日中は家に居ねぇよ」
「浹先輩…あの…」
「後は勝手にやれや、俺は知らねー」
そう言って浹先輩は立ち上がり、扉を開けて出て行ってしまった。
綺麗な字で書かれたメモを、私はじっと見つめる。

私、自分で自分がどうしたいのか判らないよ…
滄先輩とどうなりたいのか判らない。
だけど、滄先輩の物になるって言った時は、本当にそうなっても良いって思っ
たの。
私はメモを握り締めた。

******

結局私は、滄先輩の家に行く事にした。
蓮道小学校の傍っていう事はそれを目印に行けという事よね。
番地と、道にある地図を頼りに私は小学校を目指した。
歩くには少し遠かったけれども、私は滄先輩の家に辿り着くことが出来た。
先輩の家は一軒家だった。

インターフォンのボタンに指を置き、指先に力を入れた。
ぴんぽーんと音がした。
暫くしてから滄先輩が扉を開けて出てくる。
「律花…」
「あ、あの…家まで押しかけちゃってすみません、怪我の…具合が気になった
ので」
私の背の高さ程ある門越しに私が言うと、滄先輩が近寄ってきて門を開けた。
「どうぞ」
「…いえ…あの…」
「ごめんね、足が痛いから座って話をして貰いたいんだけど」
「え、そ…そんなに酷いんですか?」
「入って」
「…」
腕を引っ張られて門の中に身体を引き入れられる。
滄先輩の身体が近くなって、ふわっと良い香りがする。
その身体に抱かれた事を思い出させられて私は身を捩って身体を離した。
「入るの嫌…」
ふたりきりになりたくない。
ふたりきりになったら、私はまた…
「どうして?」
滄先輩は小さく笑う。
俯く私に、彼は私の頬に手の平を置いてそっと撫でる様にした。
「律花はもう俺の物になったんじゃなかったの?君はそう言ったよね?」
「…あれは…」
「うっかり言ってしまっただけ?まぁ…それでも構わないけど…」
つっと指先が顎のラインをくすぐり、持ち上げられてちゅっと短くキスをされ
た。
「だけど、俺が律花に言った好きという言葉はうっかりでも間違いでもないよ」
「…滄先輩…」
「俺は律花が好きだよ」
震える瞼の上にキスをされる。
涙が瞳に溜まって瞬きをしたら零れていった。
「…信じて」
先輩の指先が私の涙を掬った。

滄先輩の部屋に通されて、よく冷えたウーロン茶を出してくれた。
「遠かっただろ?歩きだと」
喉の乾きを潤して、息をついてから私は滄先輩を見た。
「あの…足の怪我は…」
「大した事は無いよ歩くのにも何の問題はないし」
「でも、病院に行ったじゃないですか」
「気にする事はないよ」
「私が気にする必要が無いという意味ですか気にしちゃいけないって事ですか」
私がそう言うと、滄先輩は静かに笑った。
「心配させたくないから言っているんだよ」
「私が心配する程の怪我なんですか」
「どんな怪我だって、心配はするだろう?律花が俺の事を何とも思っていない
なら心配なんてしないだろうけど」
ふふっと先輩は笑う。
「…どうしてあんな事をしたんですか?」
「ああいう方法しか咄嗟に思いつかなかったからかな」
「でも…」
顔を上げて滄先輩を見ると、先輩は私を真っ直ぐに見つめてきた。
「リスクを負わせる事になったのは俺の所為、だからその後処理は俺がしなけ
ればいけないって事だよ。ただそれだけ」
「…私が、ちゃんと言っておけば…」
「ちゃんとって?君が初めてだって言った所で俺は止めるつもりなんて無かっ
たよ」
クスクスと滄先輩は笑った。
「―――――初めてなら尚の事、俺が貰わなきゃって思う…」
先輩はテーブルに手を付いて身を乗り出すと私にキスをした。
「キスは何度目?」
「…先輩が初めて…」
「保健室でって事?」
「え?いえ…あの…その前にもしたじゃないですか…」
「っていうか…律花って本当に男付き合いがなかったんだね」
「…だって…男の子って胸ばっかり見るし」
「あぁ、見るね」
「先輩の馬鹿っ」
滄先輩はふふっと笑った。
「触りたくなっちゃったな」
「…せ、先輩…」
先輩は立ち上がって私の隣に座ると、私の肩を抱いた。
「俺のも…触らせてあげるから」
滄先輩は私の手をとると、自分のそれに私を触れさせた。
まだ大きくなっていないから、くにゅっと柔らかい感じがした。
「…律花の手が俺に触れてるって考えるだけでも興奮するよ」
甘く囁く様に滄先輩がそう言った。
「握ってみて、服の上からで良いから」
「は…はい…」
彼の声に従う様に私は先輩のその形を探ってそっと握ってみる。
…滄先輩のそこがぴくりと動き、私の手の中で形や大きさを変えていく。
じん…っと、私の体内が甘く痺れる感じがした。
先輩の身体が私の中に入ると気持ちが良いという事を身体が覚えてしまってい
る。
だから、滄先輩の身体の変化に私の身体も変化した。
欲しいって、心が思うよりも先に身体が求めてる。
滄先輩を。
「律花のえっち」
「…えっ?」
「今、俺のが入っている所を想像していたでしょう?」
「そっ…そんな…事は…」
「…目がね…えっちっぽくなってたよ」
そう言って先輩は瞳を細めた。
「違う…」
「えっちになってよ、俺の前だけでは」
滄先輩の唇が私の唇に触れる。
短いキスを繰り返し、それから舌を絡め取っていく。
「ん…んふ…は…」
「キス…好き?結構積極的だよね律花は…」
「す…好き…かも…です…」
「俺の事は?」
「ん…せんぱ…すき…」
くちゅくちゅっと口の中で滄先輩の舌先が動き回る。
足…開かれちゃって…先輩がその間に入ってくる。
指をどうして良いのか判らないまま私は先輩のそれを擦り続けた。
「もう…止めて良いよ」
滄先輩はそう言うと私の両脇に腕を滑り込ませてひょいっと身体を持ち上げる
と背後にあったベッドに私を倒した。
先輩の硬くなっているソコで滄先輩は私の身体の中心を擦ってくる。
「あっ…あふぅんっ…」
「なんだかもう…ショーツが濡れちゃってる感じだよね?本当に濡れやすいな
律花は」
蕾の部分が滄先輩の熱に震えて快感を沸き立たせてくる。
そして私の内部は急速に彼を欲する。
「凄いショーツが滑っちゃってる…ぬるぬるしてるの自分でも判る?」
「あんっ…先輩…せんぱ…ほし…」
「なぁに?」
「欲しいの…」
「もう?」
「身体が…熱いの…中が…滄先輩…お願いです…なんとかして下さい…っ」
「まだ…まだだよ律花」
先輩は私のショーツを身体から抜き取ると、私の濡れている場所に口を付けて
きた。
「せんぱ…あふぅ…やん…あああ…」
にゅるにゅると先輩の舌が私の裂け目を何度も往復する。
「どんな感じがする?律花」
「あぁ…気持ち良い…です…」
「本当に凄い濡れ方だな…」
そう言って滄先輩は蕾を舌先でちろちろと舐める。
優しい愛撫。
だけどそれをされればされるほど身体の欲求が強くなり、今先輩が与えてくれ
ている程度の快感じゃ足りないと思ってしまう。
ひくんって私の内部が動く。
埋めて欲しいの、私の中を先輩でいっぱいにして欲しいの。
「先輩お願い…入れて…私の中に…」
懇願する私に、滄先輩は顔を上げて笑った。
「堪え性の無い子だね」
どう言ってくれたって構わない。
えっちな子だって思われたって良い。
今、どうしても滄先輩の…あの…熱い塊を私の中に埋めて欲しかった。
先輩の指がしゅるんっと私のネクタイを外す。
ブラウスやスカートを脱がされて、私は全裸にされた。
全裸になるのは初めてだったから凄く恥ずかしい気持ちになる。
滄先輩もシャツを脱いで、ズボンやトランクスを脱ぎ捨てて全裸になった。
あ…綺麗な身体だなって率直に思う。
ほっそりはしているけれど痩せているのとは違って逞しさを感じる事が出来る。
左足に巻かれた包帯が目に留まった。
「…先輩…」
私はそっと、包帯に触れる。
「痛いですか?」
「痛くないよ、本当に大丈夫だから」
そう言って先輩は私の背後に回る。
「ん…え?せんぱ…」
「ちょっと待ってて、コッチ見ないでね。俺コンドームを着けている所を見ら
れるのって苦手なんだ」
あ…そうか…コンドーム…
背中でごそごそしている気配がする。
滄先輩が準備をしているんだ。
「…良いよ、そのまま俺の身体を受け入れて」
「え?そのままって?」
「俺に背中を向けたままの律花に挿入する、おいで」
私は背中を向けたまま先輩に抱きしめられる。
「身体を浮かせて」
少し身体を浮かせると、滄先輩の熱が私の身体への入り口にあたる。
「…あっ…」
「腰…落として」
言われるがままに腰を落とす。
ずるずると先輩が私の中に入ってくる。
「ああっ」
先輩は私の足を大きく左右に開かせる。
私は足を伸ばしている滄先輩の上に乗っかっている状態だ。
先輩が私の最奧に届く。
「あっ…ああ…」
「あれだけ濡れているに…ゆるくないってのが本当に凄いな。キツキツだよ…
律花」
「ん…んふ…あ…」
ぶるぶるっと身体が震える。
「動いて良いよ…」
そう言いながら先輩は後から私の胸を掬い上げるようにして揉み始める。
先端部を、きゅっと摘んだりもした。
「あ、あはぁん!」
「胸も感じちゃう?」
滄先輩は私の蕾の部分にも触れてくる。
くりくりっと敏感な場所を弄った。
「あああんっ…せんぱ…」
「動いて」
滄先輩の言葉に私はゆっくりと身体を上下に動かしてみる。
先輩が私の内壁に擦れて気持ちが良い。
ただの肉体の摩擦なのに、どうしてこんなに気持ち良いんだろう。
「ああ…ああっ…はぁ…はぁ…」
「律花…良いよ…気持ち良い…」
「先輩…私も、凄く…良いの…」
背後から胸を揉む事を先輩は続ける。
強くもなく、かと言って弱すぎる事もなくゆったりと揉む。
胸を揉まれる事も、こんなに気持ちが良かったのかと私は思った。
「乳首…硬くなっちゃってるね…ほら…こんなに」
硬くなっている私の乳首を指先でころころと転がした。
柔らかな快感がそこから広がっていく。
「滄…先輩…」
私が身体を揺らすと、胸が上下に揺れる。
「律花…綺麗だよ…」
先輩はそっと私の耳元で囁く、私が顔を向けるとキスをしてきた。
何度も何度もキスをして、舌を絡めて、私は自分の方から滄先輩の口の中に自
分の舌を押し入れた。
とろっと舌を伝って滄先輩の唾液が私の口の中に入り込んでくる。
私はそれを夢中になって嚥下(えんか)した。
先輩の液体だから、気持ち悪いなんて感情は湧かなかった。
ちゅっと滄先輩が私の舌を吸う。
先輩の唇も舌も、温かくて柔らかくて本当に気持ちが良い。
ああ…私は、キスもセックスも凄く好きかもしれない…
滄先輩が瞳を甘く滲ませて私を見つめる。
「律花…好きだ」
「…私も…」
滄先輩が身体を起こしたので私は前に手を付いた。
バックから先輩は私を攻めてくる。
「あっ…あ…あああっ…や…あああっ」
やだ…凄く気持ちが良い。
滄先輩は色んな腰の使い方をして、私の内部のあちこちを自身の身体で探って
くる。
快感がどんどん身体の中に溜まっていって破裂しそうになった。
なにがなんだか判らない。
先輩が私の中を出し入れしているという事以外には何も理解する事が出来なく
なっていく。
私は滄先輩しか知らなかったのだけど、滄先輩のはとても大きくて硬いものの
様に感じた。私の内部が先輩の大きさに圧迫されて更に押し広げられている。
だから隙間なんて全然ない。
私の内壁全部が滄先輩を感じる。
そしてその内壁は彼の硬さを悦び、私に快感を与えてくる。
大きな大きな快感。
―――――ああっ満タンになっちゃう。
「先輩…私…私…もぅ…あああんっ」
「イッちゃうの?良いよイッて」
ぐぐっと先輩は腰を深く押しつけて、激しく私を揺すった。
最奧の気持ち良い部分を先輩に擦りつけられて、あまりの気持ち良さに私は大
きな声を上げてしまう。
「ああああっ!ああ…ああ…あふぅん…ああっ…イ…っ…あっ…」
滄先輩の身体の動きがどんどん早くなっていく。
ああ…もう…本当に気持ちが良い…
ぐちゅぐちゅと混ざり合う音が卑猥で、それにも私は感じた。
「あーっ…もう駄目…あああっ…」
「…イクって言うんだよ律花」
先輩のその声に、私は何度も何度もその言葉を発した。
「イクイク…先輩…イッちゃう…あああああっ…あああっ!!!!」
びくっと身体が震えて頭の中が真っ白になる。
大きな快感が、膣から頭に抜けていった。
そんな感じだった。
滄先輩は、自分を私の最奧に押しつけて動きを止めた。
ひくんひくんって私の身体が跳ねる。
「あ…ぅ…う…ふぅ…せ…ぱい…」
まだ硬さを保っている滄先輩のそれに内壁がまた絡みついていく様な感じがし
た。
きゅうって先輩のそれを私の内部が押しつけている。
「凄い収縮の仕方だね…強烈だよ…」
「先輩…先輩…好きって言って下さい…私…私…」
瞳に涙が滲んだ。
セックスだけに気持ちがいって、激しく乱れた自分がとても恥ずかしかった。
まだ…たったの二度目なのに、こんなになっちゃって…淫乱だとか思われるの
が怖かった。
「大好きだよ」
そう言って先輩はうつぶせでベッドに身を沈めている私の頬に、ちゅっとキス
をしてくれた。
「…可愛いなぁ…律花は」
滄先輩は軽く身体を揺らした。
少しの動きなのに私の身体は過剰すぎる程にその動きに反応する。
それが今は苦しかった。
「あっ…せんぱ…待って…」
「辛い?」
そんな事を言いながら滄先輩は私の片足を持ち上げると、挿入したまま体位を
正常位に変える。
「いっそうキツクなったよ…律花の中」
先輩はこつんと額を私の額にあてた。
「律花の中は本当に凄い…」
私は滄先輩を見上げる。
「律花…俺は…本当に君が好きだよ…信じて貰える?」
先輩の言葉に、私はこくんと頷いた。
身体を重ねている時だと、どうしてこんなにも言葉を信じる事が出来るのだろ
う。
あれこれと考える余裕がないから?
それとも繋がっている安心感?

先輩は軽く身体を揺らす。
身体の芯が熱くて痛くて…それがきゅうんって切ない痛みで、私の身体が仰け
反る。
甘さがぱっと広がった。
先程の様な激しい快感ではなかったけれど…
「ク…ぅん!」
今度は息を詰めて…言葉もないまま私は呆気なく二度目の頂点に達した。
身体がふるっと震えた。
「…まさか…イッたの?」
驚いた様な滄先輩の声。
「ご、ごめんなさ…」
高まる事を止める事も先輩に伝える事も出来ないままイッてしまった事を滄先
輩に謝る。
それでもまだ体内にある先輩に身体が反応してぶるぶる震えてしまう。
おかしくなっちゃう…本当に。
「謝らなくても良いよ…何度でもイけるんだったらイけば良い」
滄先輩はふふっと笑った。
「…感度も良い、締まりも良い、内部の構造も堪らなく良い…律花は素晴らし
いね」
目尻に浮かんでいる私の涙を指で掬い取りながら先輩がそう言った。
「本当に辛そうだね、快感に馴れていない所為なのかな?もう止めておく?」
「だ…だって先輩がまだ…」
「良いよ、俺は」
「そんなのは、やだっ」
私は首を振る。
「私だったら平気です、だから…先輩も…」
私の中で私の身体で快感を得て欲しい。
「私の…身体で…先輩にも満足して欲しいです」
「…抱きしめているだけで、それだけで俺はもう満足しているよ」
優しい声で滄先輩が言う。
「滄先輩…」
心がきゅうっとした。
向けられている感情に私の心が震える。
「先輩…大好き…先輩の事、何も知らないけど…だけど…だけど…」
「律花」
「…私、簡単な女ですよね…先輩と付き合うの絶対に嫌って言ったのに…」
「俺の事を少し知って、それで俺を良いと思ってくれたんだろ?」
そう言って先輩は頭を撫でてくれた。
「……律花、大好きだよ…」
「先輩…っ…先輩っ」
色々聞きたい事もある。
どうして私なの?
どうしてそんなに想ってくれているの?
私はそれを聞けないまま、滄先輩の身体をぎゅうっと抱きしめた。

BACKTOP小説1目次