ある日を境に透也が男の子を身近に置くようになる。 …男の子というのは雪乃さんの弟で、名前は唯人(ゆいと)君。 透也が誰かを懇意にするなんて事はあまり見られなかったので意外に思え た。 本当は…透也は情の深い人間なのかな?と考えた。 そういえば彼の後輩に当たる朔さんの事を可愛がっていたっけ。 唯人君は高校を辞めて昼は透也が紹介した会社で契約社員として働いている。 夜はと言うと驚いた事に透也は唯人君に家の留守番をさせた。 留守番と言っても私が居るのだからあまりその意味はない。 透也は自分が留守の間の私の身を案じているのではないかと思った。 そして唯人君は忠実だ。 彼は透也が入っても良いと許した部屋にしか足を踏み入れない。 許されているのは一室だけだ。 寝室は勿論の事、リビングにも入る事を許されていないから私が唯人君と顔を 合わせるには、唯人君の居る部屋に私が行かない限り実現しない。 彼の居る部屋に私が行く事を唯人君は極端に嫌がった。 だから…彼が家に居ても私にとっては居ないも同じだった。 唯人君は言う。 「俺が居る事でみのりさんが不安に思うのであれば、リビングに通じる扉に鍵 をつけて下さい」 そんな心配が必要な人物であれば、初めから透也が家に入れる筈は無い。 唯人君が私との接触を避けたがっているのも、透也に対する忠誠心だと思えた。 透也が彼に右を向いていろと命じたら、唯人君は彼が良いと言うまで右を向い たままで居る様な気がした。 「唯人君、寝る暇ないんじゃないのかな」 私が言うと透也は笑った。 「これで良いんだよ。何かしていないと彼の気持ちも収まりがつかないだろう し、まぁみのりが嫌だと言うのであれば唯人には来るなと言うけど?」 「嫌じゃないよ。って言うか良し悪し以前に唯人君は私と話してくれないし」 「生真面目だからな…彼は」 「だから信頼しているの?」 「…信頼と言うより、僕が唯人だったら自分が良しとする女以外とは接触をし たくないと考えるだろうから」 「…私は唯人君に良く思われていないって事?」 「ニュアンスは違うけど、まぁそんな所かな」 「ふーん」 「だけど、君に何かあれば彼は動くと思うよ」 「何かって?」 「具合が悪くなったりとか」 「そんなの滅多にないと思うけど」 「そうだろうね」 「それが判っていて、唯人君にお留守番をさせているの?」 「先刻も言ったけれど、こうする方が…というよりもこうでもしないと唯人が 納得をしない。ただでお金を貰う事は彼にとって許しがたい事だからね」 「ふぅん」 「君には判らなくても良い問題だよ」 ふっと透也は笑った。 「私だって透也にただで養って貰う事には抵抗があるよ?」 「…言うと思った、だから働きに出たいって?」 「う、うん」 すんなりと彼の口からその言葉が出てきて、意外に思いながらも私は返事をす る。 「君が働きたいと言うのであれば、唯人に同じ職場で働いて貰うだけだ」 「え?だ、だって唯人君には契約している会社があるじゃない」 「唯人に迷惑を掛けられないと思うんだったら働きたいなんて言わない事だね」 「…透也、やり方が汚くない?唯人君を使うなんて」 「どうとでも」 …まぁ、働く事はとっくに諦めているけど。 透也が小さく口付けて来る。 「本当は一日中でも唯人を君に貼り付けておきたい所なんだけどね」 「そんなに私は心配?頼りない?」 「いつ、何があるか判らないし、何より君は僕の大事な人だから」 「…」 彼を見つめると、透也は微笑んだ。 「唯人を独占して、さくらちゃんには悪いと思うけど」 ”さくらちゃん”というのは唯人君の彼女の事だ。 「唯人君が此処に居るっていう事はさくらちゃんが家に一人だって事よね?」 「うん、でもまぁ仕方無いよね生活がかかっているのだし」 「…」 「君が気にしても仕方が無いよ」 「…判った」 「良い子だね」 ふんわりと透也が私を包んでくれる。 「私…唯人君に妬いているのかもしれない」 「どうして?」 「透也に信頼されているから」 「君は女性で唯人は男だ。根本が違う」 「…よく判らない」 「みのりが男だったら信頼はするけど愛したりはしないよ」 私が顔を上げると透也は笑う。 「僕に愛されるより、そっちの方が良いの?」 首を振って透也に身を預ける。 「愛されたい…」 呟く私の頭を彼がそっと撫でる。 「それで良い」 「…だけど私が貴方の力になりたいと思う気持ちも本当なの」 「君がね、しなくてはいけないのは僕を愛する事だけだ」 透也は私の手を取り、その頬に寄せる。 「僕が生きられるのは君に愛されているからなんだよ」 「…透也」 「君が愛してくれなければ生きられない」 「うん」 「ずっと僕を愛していて」 「うん…愛してるよ」 穏やかに彼は笑った。 「みのり…」 透也の手が私の胸に触れる。 「…ん…」 「愛してる」 柔らかく揉んでくる感触に息を漏らす。 透也の大きな手。 私は彼の首に腕を回した。 「傍に…居るからね…何があっても離れない」 「うん」 太腿に手を滑らせて敏感な場所に彼の指が触れてくると甘い快感が沸き立つ。 パジャマの上から胸の先端部を唇で弄られ、ぴくりと身体が跳ねた。 「ん…は…」 艶(なまめ)かしく動く透也の唇に翻弄されていく。 「足…開いて」 彼の言葉を受けて足を開くと、パジャマのズボンの中に手が滑り込んできた。 その場所を擦り上げられると私の息が乱れる。 「…此処、触られるとイイ?」 頷く私に透也が笑う。 「そうだね、もう濡れてきている」 「あ…ぁ…透也…」 手を伸ばし、透也のそれに触れた。 もう熱くなっている。 「…欲しい…」 私が小さく言うと彼は耳元で囁いた。 「あげるよ…」 見上げると透也は微笑んで唇を寄せてくる。 「イイ表情…そそられる」 「…透也を…沢山感じたいの」 「ああ」 私の蕾を擦っていた彼の指が体内へと入り込んでくる。 内壁が透也の指を感じて悦びに震えた。 「もう反応してる」 「ん…ぁ…ン」 彼をぎゅっと抱きしめる。 透也の香りがして私は益々興奮した。 「あぁ…透也…」 「内部がひくついてる」 指を私の中から引き抜いて着ているパジャマを脱がしてくる。 息が漏れた。 「何度見てもおいしそうな身体だね」 彼は掌で臀部を撫でてくる。 それから溶けた様になっている身体への入り口周辺を指でなぞり、ゆるゆると 下に滑らせていった。 「…っあ、透也…」 ぴくっと身体が跳ねる。 「此処も欲しい」 「…う、ん…自由にして良いよ」 後孔に触れられる事に対して抵抗感が無いわけではなかったけれど、ゆっくり と動く透也の指に感情は溶かされていく。 ”くすぐったい”と感じていたものが違う色を見せてきた。 こんな場所でも私は…。 「ん…ぅ…」 「どんな感じ?」 「…わ…かんない」 感じているという風には言えなくて私は誤魔化す。 透也はそれ以上追求してくる事はなく頭を下げて胸の先端部に口をつけ、舌先 で転がした。 「あぁ…ん…」 与えられる快感に身体が震えてくる。 柔らかな唇が何度も肌に触れ、時にはきつく吸い上げられた。 胸の愛撫をしている透也の頭を抱きしめ、さらりとした髪に自分の指を梳き入 れる。 艶やかな髪から香る匂いに私は酔わされていく。 「とう…や」 朦朧とする意識。 身体の芯が熱くなって自分が何者かという事でさえ見失いそう。 早く貴方で繋ぎ止めて欲しい。 「あ…あ…や…ん」 滲んで濡れる睫に彼がそっと口付けて来る。 「可愛いね…君は…」 透也は身体を起こすと枕元にある引き出しからセカンドスキンを取り出してそ れを身に着ける。 あてがわれた彼の熱を後孔で感じて震えた。 「力を抜いていて」 「とう…、あ…ぁ」 ずっしりとした彼の存在感を身の内で知る。 思ったよりもそれは容易く進入してきた。 「…痛い?」 ゆっくりと身体を動かしながら透也が訊いてくる。 「だ、いじょうぶ…」 だけど変な感覚。 「…男なら…此処もまた性感帯なんだろうけど…女の子はどうなんだろうね?」 「…は…ぁ…ン」 きゅっと内部が狭くなり透也が眉をひそめる。 「キツ…」 挿入の時には決して触れない蕾の部分に彼は触れた。 甘い感覚を呼び覚まされて私は声を上げる。 「あぁ…透也っ…」 「こうした方が楽?」 「ん…う…」 「少しはイイ?」 私が頷くと透也は息をつく。 「そう…」 指が翻弄させるかの様に蠢き、それに同調しようと熱くなっていく肉体を私は 彼に寄せた。 「透也…」 震える私の身体を彼が抱きしめてくれる。 与えられる言葉は甘く心に染み込んでいき、意識が遠くなりそうになる。 気持ち良い? 判らない…この馴染みのない感覚をどう捉えればいいの…。 最深部まで彼が自分を差し込んできた。 「動くよ」 こくりと頷くと透也はゆっくりと動き始める。 やっぱり変な感じ。 「キツイか?」 私は首を振る。 出し入れを繰り返されて感覚が鋭敏になっていく様な気がした。 「あっ…あぁっ…や…あぁ…」 つぷっと透也の指が身体の中に差し入れられる。 「ひゃんっ…」 「感じていると思って良いの?此処も凄く熱くて君の液体が溢れてる」 「んっ…な、中…だめ…」 「どうして?」 「後ろも前もじゃ…辛いの」 「それはイイって事なのかな」 ぐぐっと彼が深く入り込んできた。 変な感覚は相変わらずあったけど、知らなかった感触に私の身体は馴染んでいこ うとした。 「あっ…」 揺らされるとベッドのスプリングが軋んだ。 「ああん…透也っ」 「みのり、もっと色んな所で僕を感じて」 彼が、ふっと甘い息を漏らす。 「…いっ…ぁ…あぁっ」 透也は身体の動きに合わせる様に私の内部も指でかき乱した。 「あっ…はぁっ…」 「ん…イイよ…君のこっちも…」 「透也の…熱い…」 「興奮…しているからね…」 「…こんな…所でも?」 「あぁ、繋がっているのが君だと思うと…」 逞しい彼のそれが私を攻め立てる。 じん…と、その部分が疼いた。 「ああっ!」 思わず身体を退くと彼が追ってくる。 「逃げちゃ駄目だよ」 「…奥…いや…」 「どうして?」 「…変、な感じなの」 私が言うと透也は指を身体から引き出して腰を抱いてきた。 「変な感じ…そう…」 ゆっくりと出し入れを繰り返していた彼は緩急をつけて私を翻弄しようとした。 「あっ…透也…」 「色っぽい顔…もっと僕に見せてよ」 「ああっ」 「前もぬるぬるだね」 身体から流れ出る体液をさして彼が言う。 「溢れているよ…君も興奮しているの?」 「と…や…」 「もっとイイ声出して…ほら…もっとだよ」 「ああぁんっ…は…ぁ」 顔を隠そうとする私の腕を掴んで頭の上で押さえた。 彼に拘束をされると一層興奮してしまう。 「あ、あ…ふ…」 大きな快感に唇が震えてくる。 その様子を見てか、彼は私を激しく揺さぶった。 「あぁっ…そんなに…したら…」 「痛くは無いんだろ」 「ん…ぁ」 身体に与えられる快楽に内部が応じる。 違和感は薄れていて、あるのは快感だけだった。 「あぁっ…あ…や…んぅ…」 「こっちも…凄いな…君は」 甘く呻いて彼が言う。 「イイ?どうなの」 「良い…の」 「感じているのか」 透也が私と擦れる度に体内の何かが溜まっていく様で、追い詰められていく感 じがする。 「あぁ…欲し…もっと…」 追い詰められていくのに、同時に欲求もする。 自分の限界まで透也が欲しかった。 甘い渦が私の中に出来上がる。 何がどうだか判らなくなっていく。 「もっと感じろ…僕を」 「透也…あぁ…透也…好きっ」 彼の手が私の手を開放するとその腕で透也をぎゅっと抱きしめる。 「愛してる…透也…」 「…あぁ…愛しているよ…」 乱れる吐息が絡み合い、瞳を開けると彼が私を見下ろしていた。 「いつでも君だけを愛している」 「…んっ…ぁ…好き、大好きよ…」 その感情に私の全部が支配される程に。 「あっ…ああっ」 溢れる。 想いや感情が。 「…っ」 「だ…め…もう…」 自分ではせき止められない物が一気に零れる。 身体が痺れる…指の先端まで。 「ああああっ」 貫かれる快感に全てをもっていかれる。 震える私の身体を透也がしっかりと抱きとめてくれた。 「可愛いよ…みのり」 「ん…ん…とう…や」 唇に激しいキス。 私の舌を絡めとっては吸い上げる。 繋がったまま何度も口付けを交わした。 透也は短く息をつき、やがてゆっくりと身体を引き抜いていく。 「んぅ…っ」 「…こっちも…物足りないだろう?」 セカンドスキンを外した彼は私を一気に貫いた。 「やああっ」 その衝撃に身体がびりびりと痺れる。 敏感になっていた私の内部はまるでそうされる事を悦ぶかの様に彼を締め付け た。 「凄い…な」 甘く呻いて透也は息を漏らした。 内壁が彼の硬さを感じ取って私にまた快感を教える。 「あ…ぅ…ふ…や…」 胸を揉まれ硬くなっている先端部を彼の舌で弄られた。 小さいけれど効果的な快感が私の中に生まれては消える。 「ああ…透也…」 腰を彼につけて透也の性を貪る様に腰を揺すった。 身体の中心が気持ち良くて熱い。 「あ…あん…あぁ…」 「激しい…ね」 くすっと彼が笑う。 「気持ち良い…ああ…透也…凄く…」 「僕もイイよ…もっと動いて…もっと淫らな君を見せて」 「は…ぁ…はぁっ…ああっ」 溶けてしまいそう。 私の内部が。 「凄く濡れているよ」 ふたりが交わる水音が聞こえて余計に私を煽った。 お尻の下が湿っている感じがする。「溢れている」と彼が言ったのでそれが自 分の体液の所為なのだと自覚する。 「ん…あ…シーツ…が…」 「そんなの気にするな」 ふっと透也が笑う。 「君の体液だったら、どんなに濡らされても気にはならない」 「は…ぁ…とう…や」 「そんな事を気に出来る位まだ余裕があるんだな」 掻き混ぜる様に彼は腰を使う。 「ああっ!」 馴染んでいても慣れはしないその快楽に私は震える。 身体を揺すりながら透也は私の肌に唇を滑らせ、色んな場所から快感を教えて きた。 「透也…あぁ…透也…」 「もっと溺れて」 「んっ…くふ…」 否応なしに高まっていく自分をコントロール出来ずに彼の身体の下で乱れる。 彼の名を何度も呼んで喘いだ。 「もう駄目…透也っ…」 身体の奥から湧き上がる衝動に身を反らせたが、透也は更に奥深く自身を差し 入れて激しく腰を揺らした。 「ああっ…い…ぁ…んんっ」 「みのり…イって…僕も…もう…」 「…透也…一緒に…」 びくんっと跳ねる私の身体の中で透也が弾ける。 「んんんっ!」 「…っは…」 先程よりも強い絶頂感に意識を奪われる。 何処かに飛ばされる感じがして一瞬自分を見失う。 「…みのり…」 呼ばれた甘い声音に意識を取り戻し、瞳を開けると透也が私を見つめていた。 そんな彼の唇に指を滑らせる。 「知れば知る程…もっと知りたいという気持ちになるよ」 「…透也…」 微笑んで瞳を閉じる。 透也を想いながら彼の腕の中で眠る。 ずっとずっとこうしていたいと願う気持ちを抱きしめた。 |