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隷属の寵愛 14

「触れさせて……欲しいです」
「本当におまえは誘うのが上手いね」
 キースは上着を脱ぐと、シャツのボタンを手際よく外し始める。
 例のペンダントはやはり身につけていて、細い鎖の先端で銀色のコインが揺れていた。小さなコインに描かれている紋章をリディアが見つめていると、視界を遮るようにキースが口付けてくる。
「ん……っ」
「見過ぎだよ」
「……私が見ては、いけないんですか?」
「さぁ、どうかな」
 キースは瞳を瞬かせながら曖昧な返事をする。そんなふうに返事をされるとどうしていいのか判らなくなってしまう。
「おまえは私に触れたいのではなかったか」
「え、あ……はい」
 そっと彼の胸元に手を伸ばし、皮膚に触れる。いくらか低いと感じる体温は自分が熱いからなのか、それとも――。
「寒い……ですか?」
「あぁ、少しね」
「すみません、私……あの、気づかなくて」
 リディアが自分の身体にかけられていたバスタオルをはずしてキースの肩にかけようとすると、彼は首を振った。
「愛しい人。これくらいはなんということもないけど、気にするのであればおまえの身体で暖めて」
 彼はそう言ってシャツを脱ぎ、逞しい肉体を彼女の目の前でさらした。
 見ているほうの体温が上がってしまうとリディアは思わされる。
 細身ではあるものの筋肉のしっかりとついた彼の裸体は、自分の身体とはまったく違うつくりに見え、その美しさに息をするのも忘れそうになる。
 そんなリディアをキースが現実に引き戻す。
「触れたいのだろう? ほら」
 思いも寄らないような場所を握らされて、リディアは息を詰まらせた。
「あ……や……」
「ゆっくりと、上下にしごいてみせて」
 トラウザーズから引き出されている男性器を握らされて、彼女はひどく困惑していた。けれど、そのことを気にかける様子もなくキースはリディアの手に自分の手を重ね合わせて動かした。
「あ、あの……キース様」
「おまえは、寒くない? もう一度湯の中に入るか」
「……あ、いいえ、わ、私は」
「ほら、早く」
 リディアの意見を聞かないままに彼女を再びバスタブの中へとおいやり、キースも全裸になると後に続いた。
 背中を向けているリディアに、彼は優しく話しかける。
「リディア、そんなふうに背中を向けずにこちらにおいで。裸で抱き合うのがおまえの望みではなかったのか」
「……そうかもしれませんが」
「握りたくないのなら、もう握らせないからこちらに来なさい」
 単に驚いただけで、握りたくないと思ったわけではなかったから、リディアは振り返り告げる。
「握るのが嫌だというふうには、思っていません」
「では、握らせてあげるから早くおいで」
「……そうではありません……」
 彼女は白磁のような肌を赤らめながら、広いバスタブの中で身体を動かし、キースの傍に寄った。


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