「ん……リディア、私は、本当におまえを愛しているからね」 短い口付けの後、入り口にあてがわれていたものが僅かに挿入される。 「ふ……ぁ」 ほんの少しだけの挿入なのに、全身がぶるっと震えてしまった。 早く欲しいと急かすように内部は蠢き、蜜が滴った。 抱きしめられると彼がつけている冷たい銀貨の感触が肌に触れたが、もうそんなことを気にする余裕などない。 そしてキースの身体が入ってきていると考えるだけで、どうしようもないくらいに興奮してしまっていたから、痛みがあるのかどうか感じることすらままならなかった。 「キース様……も……っと」 「痛くない? もう少し激しくしても大丈夫か」 彼の言葉に何度も頷くと、キースはふっと笑った。 「……リディア……あぁ、愛している……ずっと、こんなふうにおまえを抱きたかった」 ゆっくりと彼女を揺さぶるように奥まで挿しこみながら、キースは溜息を漏らした。 私も、と言いかけて "ずっと"の時間の長さをぼんやりと考えさせられる。自分が思う"ずっと"と彼が告げた切なげな"ずっと"は同じ長さなのだろうか? 何故だか圧倒的に時間の長さが違うように感じられた。 ――彼はいったい、どこを見ているのだろう? 自分を見ているようでいて、それでいて違うようにも思え、けれど、そう感じてしまうことすらまったくの錯覚のようにも考えられるから、何も言えなかった。 「あぁ……ン」 無意識に一瞬身体をひくと、キースが追うようにして彼女の腰を掴み、ぐぐっと最奥まで自身の身体を挿入させた。 「や……ぁ、あっ」 つま先がひくりと跳ねる。 最奥部にキースの大きく膨らんだ男性器の先端部が当たると、得も言われぬ快感がわき上がり、当てるだけではなく、もっとどうにかして欲しいと思う気持ちに支配される。 「キース様っ」 「痛い? 辛いか」 彼に聞かれてリディアは大きく首を振った。 痛みなどないに等しい。 逆に、小さな痛みは起爆剤にしかならず、膨らみ上がる欲望の渦にただ巻き込まれるだけだった。 「……動くよ」 「あ、あぁ!」 次々にわき上がる愉悦と囁かれる愛の言葉に、それが真実であるかはどうであれ、酔わされていく。 「好きだと言いなさい、ほら……もっとだ」 「好き……キース様……好きです……ぁあ」 彼を好きだと思う気持ちは本当だった。 だけどそれが愛かどうか判らず、そしてキースの感情がどこに向いているのかが判らなかったから、積極的に言うことが出来なかった。 「……っん……ぅ」 彼の陰茎で内部が擦られるたびに、狂わんばかりの快感と小さな痛みが与えられる。 もっとたくさん欲しくなり、そして独り占めしたいという感情が芽生え、リディアはキースの逞しい身体を強く抱きしめた。 「キース様……好き……」 「あぁ、愛しているよ、リディア」 最奥まで突き上げられて激しく揺さぶられれば痛みは増すが、欲しがられていると思えて嬉しさに涙が滲む。 そんな彼女をキースは見下ろした。 「すまない、痛いか?」 「痛くないので、もっと、激しくして欲しいです。もっと、求めて」 ぎこちない動きでリディアが腰を揺らすと、彼は笑った。 「私は、ずっと、おまえだけを求めて生きているよ。私には、おまえしかいないんだ」 心の中でわき上がった甘い痛みが、彼女の全身を支配するように刺激する。 「ふ……ぅ、キース様……」 切ない感覚に涙が溢れて止まらなくなった。 サファイヤブルーの大きな瞳からは、涙が宝石のように煌めいて落ちていく。 「ああ……リディア。そんなふうに泣かれたら……」 眉根を寄せて何かを堪えるようにキースは呻いた。 泣くなと言われても止めようがない。 自分の意思で泣いているわけではなく、ただただ溢れてしまう。 傍にいて欲しい。 そしてその気持ちは永遠なのだと口走りそうになって息を止める。