「言えないなら、やめるよ」 一度は挿れてきた身体を彼は抜こうとする。 「い……挿れてください、お願いします」 「やらしいね」 彼はくくっと笑い、再び彼女の体内に肉棒を挿れていく。 互いが触れあうことで生まれる甘美な感触に、リディアはくらりと眩暈がした。 「あっ……あ、キース様っ」 ゆっくりと挿入してくる様子に焦らされ、内壁が彼を急がすように蠢く。 「中を動かして、そんなに欲しいの」 欲しいと即座に言えればいいのにためらわれ、頬がいっそう赤らんだ。 「い、意地悪なこと……言わないで、ください」 じわりと瞳に涙が浮かぶと、キースは笑う。 「おまえがそんなふうに泣く姿も、私は堪らなく好きだよ」 「……っあぁ」 一気に最奥まで貫かれ甘美な衝撃に、頭頂からつま先まで痺れた。 焦らされた分だけ、彼のもので埋め尽くされた満足感は大きく思える。 確かに自分は、彼とこうすることがひどく好きなのかもしれない。 ただ、子供を作る行為の一環としてではなく、キースの腕に抱かれ、繋がって、与えられる感触が好きなのかもしれない。 「わ、たし……好きです、こういうこと、するの……」 甘美な感触に耐えながら言葉を告げると、キースは微笑む。 「そうだろうね、私も好きだから」 同じ言葉を返されただけなのに、胸が痛んだ。 セックスがただ子供を作るだけの行為ではないと彼が知っているのであれば、今まではどうだったのかとか、今はどうであるのかだとかの疑念が生まれる。 自分に与えられている狂おしいほどの甘美な感覚は、別の女性にも与えられているのかと考えれば苦しくて堪らなくなった。 そして、彼の肌のぬくもりや身体の逞しさを感じられるのは、いつでも自分でなければ嫌だと思ってしまう。 我が儘な独占欲に支配され、押しつぶされそうな胸の痛みに呼吸が出来なくなった。 「……っ、う……」 堪《こら》えきれずに嗚咽が漏れると、キースが彼女の顔をのぞき込んでくる。 「どうした? リディア」 我が儘な独占欲は口にするのも憚れた。 何も言わない代わりに手を伸ばし、抱擁だけをねだる。 「抱きしめて……欲しいです」 「ああ、いいよ」 素肌同士が触れ合い、伝わってくる彼の体温に切なくて余計に涙が溢れた。 コルトハード伯爵夫人の名は飾りだと判っているからキースを望めない。けれど望めないと判っているのに抗いきれずに、自分は彼に恋をしている。 「私は、キース様が……好きなんです」 「ああ、私も愛しているよ、リディア」 「好きなの」 今は自分の腕の中にあるキースの身体。 だけど、いつまでもこのままでいられないと思えば胸が痛み、焦がれる思いに涙の量が増えた。 「"好き"だよ? リディア……疑わなくていい」 耳元で、キースがふっと笑った。
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