温かく柔らかい彼の唇を感じてしまえば激しい感情がわきあがり、我慢出来ないと思わされてしまう。 ――我慢出来ない。 何を? キースが唇を離すと、リディアはあまりの息苦しさに喘ぐ。 「く、苦しい……です」 「何故?」 「判らないです、だけど……我慢出来ない」 薄い夜着の上から肩に触れられれば、それこそ感情が爆発してしまいそうになった。 爆発しそうになる感情の正体も、何を我慢できないのかも判らないままに。 「求めて、リディア」 「欲しい……です」 押し倒され、真っ白なリネンの海に沈められる。 欲しいものの正体は判らないが、身体にキースの重みを感じると、いくらか満足するように思えた。けれど抱きしめられたり抱きしめたりしているだけでは補いきれず、身体の芯が疼き始めた。 「……キース……様っ」 これ以上ないというくらいに強く彼を抱きしめ、身体を重ね合わせる。 逞しい腕や身体ですっぽりと抱きしめられていても、圧倒的に何かが足りない。 唇が触れあっていても満足出来なかったけれども、自分が求めたいものの正体が判らないからキースに願い、乞うことも出来なかった。 抱かれればこの感情から解放されるのだろうかとも思えたが、それも疑わしい。 乳母のマリベルは、初夜の営みは相当な痛みと苦痛を伴うものであるから耐えよと言っていた。 痛みや苦痛を欲する筈がないのだから、キースに抱かれたからといって解消できるものではないと思えが、彼の手がリディアの胸を揉みしだき始めると震え上がるほど気持ちがいいと感じてしまう。 「……っや、キース……さま」 「こういうふうに触られるのは嫌か? もっと、優しくされたい? それとも激しく?」 耳元で低い声で囁かれれば、全身から力が抜けていくようだった。 彼が自分の身体のあちこちに、触れたり口付けたりするたびに、甘い感覚に囚われていく。 夜着の薄い生地の下では乳首が硬く立ち上がり、それを狙うようにして指先で転がされてしまうと得も言われぬ快楽に襲われた。 「そ……れ、あっ」 「嫌なら、やめてあげるよ」 リディアが首を振ると、彼は愛おしそうに彼女を見つめた。 「では、どうされたい?」 「も……っ、と」 「もっと、何?」 ヘイゼルグリーンの瞳が意地の悪い色で輝く。 そのことに気がついても、夜着のボタンを彼の指が外していることで甘い期待に意識が揺らぐだけだった。 「触って……欲しい、です」 「触るだけでいいの」 キースの唇が彼女の細い首筋をなぞるようにして動き、鎖骨に舌を這わせた。 生ぬるい濡れた感触に背筋がぞわぞわとさせられる。 他人の舌の感触をこんなふうに感じたことがなかったから、その柔らかさによって立たされる甘い感覚に、すぐさま虜になった。
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