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秘め恋 〜その手が奪うもの〜   14

 

「い、挿れ……て、下さい」
 彼女の答えを満足そうに聞きながら、宮間は鞄の中に入っている小さなポーチから包みを取り出すと自身のそれに薄い膜を被せた。
「桃の中に入る瞬間って少しどきどきするよ」
 彼は小さく笑いながら、彼女の身体を割るようにして自分の身体を中心に置いた。
「……全部、もっていかれそうになるから」
 唇が重なり合い、柔らかな感触を楽しむように啄んだり舌で舐めたりしながら彼はゆっくりと身を沈めていく。
 濡れた場所をかき分けるようにして、宮間は奥へと身体を進める。内部をふたつに裂かれるような感覚に彼を受け入れている桃花は唇を震わせた。
「……まだ、痛い?」
 彼女の耳朶をゆるく噛みながら言う宮間に、桃花は小さく首を振った。
「痛みは……あまり……」
 大きな圧迫感に息をのむ。
 指を挿れられているときよりも内部に感じる感覚も大きくて彼が少し動くだけでも甘えるような声が出てしまった。
「ん、んふ……ぅ」
「……気持ちイイ?」
 少し掠れたような宮間の声に、全身がぞくりとさせられた。官能のスイッチを無理矢理押されてしまったような感覚が身体に広がり桃花は堪らず、縋るように彼に抱きついた。
「桃の身体、温かくて気持ちいい……溺れそう」
「……み、やま……さ……、っぁ……あぁ」
「ああ、可愛い声……もっと聞かせて? もっと啼いてよ」
 身体を揺さぶられ、内部が圧迫されていく感覚につま先まで痺れていく。先ほど頂点を知ったばかりの身体は鋭敏に快感を貪ろうとしていた。
 濡襞をひとつひとつ広げるように擦り上げていく彼の熱芯の硬さや大きさが震えるぐらいに良いと桃花は感じてしまう。
「……も……っと、深い、場所……」
「奥に欲しいの?」
 桃花が小さく何度も頷くと、宮間は彼女の細い腰を掴み、最奥まで自身の塊を突き挿れた。
「ん……んっ」
「白い肌が、耳まで赤くなってるね。中も、凄く熱いよ」
「……宮間……さん、繋がって……る」
「うん……繋がってるよ。俺が判る? 奥まで入っているのが判る?」
 桃花が頷くと彼は形のいい唇を少しだけ動かし、微笑んだ。
「桃……痛くないなら、もっと激しくしたい、君を貪りたい」
「宮間さん……の、好きにして下さい」
 熱に溺れた瞳を彼に向けると、宮間は妖艶に微笑み色香を振りまく。
 今、この瞬間だけは、彼が自分だけのもののように思えて桃花の奥深い部分が熱く疼いた。
「桃……っ、ふ……好き、だよ……」
「……私も、好き……です」
 律動が激しいものへと変わっていく。
 突き上げられる感覚に、下腹部がきゅっと締まる感じがした。
 もっと欲しい、もっと欲しいと宮間を受け入れている部分が貪欲に熱を求め彼を煽る。
「……っく、桃花……あぁ……」
「み、やまさ……ぁ、ン……声……やらし……」
「君が、出させてるんだよ、判っているの? あ、ぁ、堪らない、声、出すの……我慢出来ない……ン」
 艶めかしい彼の声に情欲が煽られる。
 身体の深い場所を探られて、熱を知らされ、絡み合う吐息も、漏れる声も快感を強めるものにしかならず、行為に溺れてしまう。
「宮間さん……すき……好きっ」
 快感の度合いが強くなると、それに引き摺られるようにして感情も昂ぶった。彼を愛しいと思う気持ち、好きだと思う感覚も強くなる。
 熱を孕んだ身体を混ざり合わせ何処までも溶けてしまいたいと本能に近い部分が要求しているような感じがしていた。
「ああ、桃……好きだ……」
「ふ、ぅっ……ン」
 宮間の欲望の塊が彼女の濡襞を何度も擦り上げ、退いては突き上げ内部を乱す。翻弄される感覚に桃花も腰を揺らさずにはいられなくなった。
「……っ、桃花……ぁあ……腰、振って……そんなに気持ちいい、の?」
「宮間、さんっ、ふ……ぁ……欲しい……」
 感情の高ぶりから桃花が眦から涙の粒を落とすと、宮間はその雫を舌先で掬い取る。
「……何が、欲しいの?」
「宮間さんが、欲しい」
「俺の何?」
「……全部」
「欲張りだね」
 だけど、彼は不愉快そうな表情をすることはなく柔らかく微笑み、律動を繰り返した。
「ん、ん……ふっ……ぁあ」
 桃花は彼の身体をしっかりと抱き締め、宮間の首筋を甘噛みする。
「……ん、ぁ、桃……」
 彼が欲しい。
 何処から何処までが欲しいという明確な線引きが出来ない。身体だけを一瞬でもいいから欲しいと思った次の瞬間は心も欲しいと思い、その次は何もかもが欲しいと願ってしまう。
 強烈な欲求に身が焦がされる思いがした。
「み、やま……さん……ぅ、ン」
「桃……好きにしていいけど、あんまり、見えるところには跡をつけないで?」
 宮間はそう言って微笑んだ。
「……ふ……ぁ、ご、ごめん……なさい」
「見かけによらず、積極的なんだな……でも、そういうのも、俺は好きだよ」
 欲しいのなら……と言わんばかりに宮間は律動を激しいものに変えた。揺るがされる意識に桃花は甘い声を上げる。
「んんぅ……っ」
「もっと……っ、ン、欲しがって……俺を……」
 甘く掠れた声は誘うように優しかったが、彼女の身体を支配する熱は激しく凶暴だった。ふいに体位を変えられ、ソファに手をつかされると宮間は背後から桃花を突き上げる。
「あ、あぁっ」
 繋がり合っている部分の音がいっそう大きく室内に響き渡る。
「ほら、もっと欲しがって?」
「んんっ……宮間さん……欲しい……欲しいの」
「ああ……桃花……っ」
 彼女の中で宮間の塊が膨らむ。張り詰めた先端部は何度も桃花の最奥を突き上げ絶頂までの道のりを足早に進ませようとしていた。
 蜜の溢れる源をかき混ぜ、或いは掻き出すようにして己の肉棒を動かし、桃花を乱した。
 彼女のほっそりとした足の内側には、透明な露が滴り繋がり合う部分からは男が甘いと感じる香りを漂わせ宮間の興奮を煽っていた。
「ん……ぁっ、や……ぁっ、あ、ぁ」
「桃……いい……興奮して、どうにかなりそうだ……」
「やっ、あ……」
 彼の興奮に濡れた声、切なげに漏らされる吐息。
 そのどれもが“もう一度聞きたい”と願ったものだった。
 自分の身体で彼がそうなってしまっているのだと考えたら桃花は堪らない気持ちにさせられる。
「……ん、ぁ、セックス……したかった……です」
「んー? 何、やらしいこと……言ってるの?」
 宮間は後ろから桃花をすっぽりと抱き締め、彼女の耳元に唇を滑らせた。
「……誰でもいいから、ヤりたかったの?」
 彼の言葉に桃花は首を振る。
「宮間さんに……抱かれた夜から……ン……わ、たし……また、触れたくて……堪らなかった……です」
「誰に?」
「……宮間さんに……」
「ふぅん……そう、じゃあ、いっぱい……してあげようねぇ?」
 彼の指が桃花の花芯に触れる。僅かな刺激も達するには十分の快感だった。
「あっ、あ、あぁっ」
「可愛いこと……言ってくれるから……ん、俺が先にイっちゃいそう。桃……」
「あ……奥、や……あ、ぁ」
 ぶるりと彼女の身体が揺れた。
「桃……桃……好き、好きだ……あ、ぁ……我慢、出来ない……出したい、桃花」
「んぅ……あ、あああっ、み、やま……さ……」
 花芯からなのか膣の内部が感じたそれなのか判らなかったが、桃花の身体が大きな快感に包まれ背中を引き攣らせた。全身が強ばり、四つん這いにさせられた足のつま先までぴんと伸びる。
 内部の激しい収縮が、彼に達したことを知らせた。
「桃……出すよ? いい?」
 乱れた息の中で彼女は頷いた。
「……ん、はぁっ……桃花……ぁ、こっち……向いて」
「……ぁ、宮間……さん」
 唇が重なり合い、彼女の舌を舐めとりながら宮間は腰の動きを速くしていく。
「ふぅ……っ、ン!」
「……ぁ、あ……出る……桃花っ」
 限界まで彼女の奥に入り込みながら宮間は身体を震わせた。
「……はぁっ……出てる……桃花……の中で」
 びくんびくんと彼の熱の塊が脈打っているのを薄い膜ごしでも彼女は自分の内部でしっかりと感じていた。
「ずっと、抱いていたいよ」
 射精を済ませた熱の塊をゆっくりと彼女の身体から引き出しながら宮間は言った。
 彼の形に変えられていた内部が、その本体を失った喪失感に震える。
「宮間さん……」
「桃花が可愛いから、我慢出来なくなる」
 セックスの最中のように、彼は濃厚なキスを彼女に与えた。
「……俺も、したかったよ。桃花と」
「……嬉しいです」
「ん」
 宮間に頭を撫でられ、彼女は甘えるように彼の胸に顔を寄せた。
「風呂に入ろうか。綺麗に洗ってあげる」
「え、あ、あの……」
「ね?」
 にっこりと微笑む彼は有無を言わさぬ迫力があり、桃花は頬を染めながらも頷いた。


  
  

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