そして期待は現実となり、今、彼の目の前にあった。 「桃花……好きだよ。君を愛してる」 「……好きです、愛してます」 心の中がじわりと温かくなり、泣き出したくなるような感覚。これは桃花から流れてくる感情だと宮間は思った。 嬉しくて泣きたくなる感覚は、彼にとって不思議なものだった。 哀しかったり、苦しかったり、辛かったり、そんなことで泣きたくなることは何度もあったが嬉しくて泣き出しそうになるという感覚を彼は今まで経験したことがなかった。 「好きだ」 心が震える。 優しくて、温かいのに切なくて痛くもある。 自分のものではない心の痛みが何故か心地よくて堪らない。 他人が感じている切なさが、甘く心を撫でていく。そんな感覚に彼は支配されかけた。 「……俺も、気持ちがいい」 身体を反転させて、彼の上に乗っていた桃花を下にした。 「もっと見せて、君の感情」 「宮間さん……」 一度短いキスを交わしたあと、貪るような口付けを彼女に与えた。 彼女が直接的な肌で受けているような感覚は知ることが出来なかったが、肌に与えられる感覚で脳が気持ちいいと感じるそれは宮間に伝わっていく。 「おまけ程度で考えていた場所への愛撫でも、君にとっては相当いいものだったりするんだね」 「は、恥ずかしいです」 「でも、言われて悪い気はしていないよね」 ずっと手を握りしめたまま身体を重ね合わせた。 そうすることは初めてだったが、宮間には何のためらいの感情も浮かばなかった。 彼女の全てを知りたいと思う。 身体のどの部分も、そして心の中も全て。 細かな感情の襞のひとつひとつを隈無く知りたい。 探って暴いて、尚も深く入り込みたい。桃花を形成している核の部分まで入り込み知りたかった。 「ん……桃花……」 「……ふ……ぅ……ゃ」 熱杭を奥まで挿し込むと彼女の身体が震えた。 緩やかに桃花を揺らすとそのたびに甘い声が漏れ聞こえ、感情が溢れそうになった。 「……気持ちイイ……桃花。君も、そうでしょう?」 聞かなくても判っているが、問わずにはいられない。 間違いである筈のない感覚の伝達を、本当にそうであるのか彼女の口で言わせたかった。 「ねぇ、言ってよ。聞かせて、君の声で」 心の声は聞こえている。 だけど、それだけでは足りない。 自分が与えているものをどう感じているのか彼女の言葉でも聞きたかった。 気持ちがいいと何度も彼女に言わせ、何度も啼かせ、高めさせたい。そう思うことで己もまた昂ぶり、熱を上げた。 「宮間、さ……ぁっ、や……激し……」 「君が……そう、させるんだよ」 もっともっとと追い立てられる。 何もかもが欲しい。 全部手に入れたい。 貪欲な感情を抑えることが出来ず、宮間は桃花を貪るようにして抱いた。 彼女の昂ぶりを何度も感じ、自分も情欲を吐きだし、だけど飽くことなくまた桃花を求め挿入し続けた。 「こ……われ、ちゃう……」 「壊れていいよ、そうしたら、俺と同じになる」 自分は、もうとっくに壊れていると彼は薄く笑った。 そうしてまた揺さぶり、突き上げては彼女を乱す。 桃花が乱れれば乱れるほど、それを感情として吸収している彼を高揚させた。 「ふ……ぅ、あっ……」 「ん……桃花……また、イキそうなんだね?」 「や……あっ……あぁっ」 「――――可愛い、桃花」 激しく収縮している彼女の内部で、薄い膜越しに彼は今日何度目か判らない飛沫をあげた。 「み、宮間さん……もう」 「うん、箱がね……空なんだよね」 彼は残念そうに避妊具の箱を眺めていたが、桃花はほっと息をつき疲労感で身体をぐったりとさせた。 「……寝ちゃいそうです」 「君に寝られてしまうと、感情を見ることが出来なくなっちゃうんだよねぇ」 「え……あ、そういうものなんですか?」 「うん、寝てる人間の感情は見られない。俺はね」 「んー……」 それでも襲ってくる桃花の眠気に、彼は微笑んだ。 「いいよ、眠っても。起きたらまた見させてもらうから」 「あ、はい……すみません」 「何で謝るのかな」 くくっと宮間は笑い、それでも手を解かないまま彼女を眠りにつかせた。 「……桃、好きだ。大好きだよ」 そう言って、彼も静かに眠りについた。
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