「やぁん……」 「……やらしい声出さないで、興奮するだろ?」 「だって、心の中、撫で回されてるみたいで……ぅん」 ぞくりと性的興奮が高まる。 彼女の状態がそうだから、まるで自分のことのように感じてしまうのか、それとも自分だけがそうなのかが彼には理解出来なかった。 「また、勃ってきた。興奮している君のせいで」 そんなふうに彼が言うと桃花の頬が赤らむ。 「誰の、せいだと……」 「なんで、君はこうなってしまうの? 安藤に握られたときは怖かったんでしょう? 俺のほうがもっとクリアに桃花のことを見てしまっているのに」 「わ、わかんな……」 何故かいっそう高まる彼女の興奮に宮間は煽られる。 「あぁ、射精したくなっちゃう」 「み、宮間さんって、本当、綺麗な顔をしながら、言うことがえっちですよね」 「……それ、誰と比べて言ってんの」 ――――刹那。 彼女の心にさぁっと広がったイメージに、宮間は息をのんだ。 伝わってくる桃花の心の中に広がったイメージ。 それは曇りのない空や澄み切った海のような心奪われるぐらいの美しい青。 だけど、それが風景のイメージではないと彼には判ったから感情が一気に溢れた。 広がりゆく色は宮間からみればささやかな彼女の願いの正体で、些末《さまつ》なことである筈なのにそれを願う桃花の心が糖度の高い甘い痛みに揺れている。 切ない痛みは彼女が恋をしていることをあらわしていて、宮間に伝染するように彼の心も揺らした。 青。それは宮間の名の色。 たかが名前。 名前を呼びたいと思うのであれば呼べばいい。なのに何故、そんなふうに心を揺らし甘い痛みを生んでいるのか。 彼女の感情の細やかさなのか、恋する思いの深さなのかは判らない。だけど自分の名を呼びたいと願う桃花の上気し染まった頬を見たとき、我慢という言葉が彼の中から消え、唇に噛みつくようにして宮間は桃花にキスをした。 言葉を失わせ願う思いや恋心を飲み干すように舌を絡めては、自分の渇いた心を彼は潤わせたがった。枯渇寸前だったものはすぐには潤い満たされることはなく焦燥感を生み、もっともっとと性急に求めた。 焦げ付くような感情は新入社員の入社式で宮間が初めて桃花の姿を見たときに感じたものと似ていた。 真白でありたいと願う彼にとって彼女はその理想そのものに見え、桃花に対して憧憬をいだいた。 彼女は妬みや嫉《そね》みを感じない人間ではなかったが、彼女を形成している格となる部分の色は純白であった。 差別を生まない心根の持ち主。それ故の白は宮間にはひどく眩しく見えて桃花が欲しくて堪らなくなった。 深まる思いは振り子時計の振り子のように心が揺らされ、彼女が彼に対して直接何かしていなくても桃花の言動に一喜一憂し振り回された。 自分を見て欲しい。 だけど見られたくない。 知って欲しいのに知られたくない。 相反する思いが心の中に常にあり、どうにもならなくなっていく。 やがて彼の雄の部分が彼女を支配したがり暴れ始めた。感情を抑え込むことに必死でそちら側を抑えることが後手に回っていた為、気が付いたときには大きく膨らみ手の施しようがない状態だった。 ――――酔わせて何かしようと画策したわけではなかった。 あの日、あの夜。初めて桃花を食事に誘った帰りの階段で、考え事をして足早になってしまった自分に気が付き踊り場で立ち止まって彼女を振り返ると、小走りで駆け寄ってくる姿が目に飛び込んできて、それがまるで愛しい男のもとに駆け寄る様子に見えてしまい、錯覚する心が急速に熱をもった。 “止められない”と感じたときにはもう既に彼女は腕の中にいて、壁際に追い込み逃がさない体勢にしていた。少しだけ触れたいと重ねた唇は触れれば触れるほど足りないと思わされて、桃花の抵抗がないのをいいことに長い時間彼女の唇を貪った。 あのとき、遠い場所から聞こえてくる人の声やヒールを鳴らすようにして歩く足音が彼の耳に届いていなければ、彼女をあの場で犯していた。 そう。 丁度、今しているように濡れた蜜源に深く陰茎を突き刺して、肉襞を隈無く犯し……。 宮間が我に返ったときはもう桃花と身体を繋ぎ合わせた後だった。 彼女の身体を押さえつけるようにして背後から貫いている己にはっとする。 「――――あ、ごめん」 「け、獣《けだもの》ぉ」 「うん、ごめんね」 謝罪はするけれど、埋め込んだ陰茎を彼女の体内から抜き出すことなく宮間は身体を揺らし続け、甘い声を上げる桃花を強く抱き締めた。
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