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秘め恋 〜その手が奪うもの〜   48

 

「蒼さんは、私を見て気持ち悪くならないですか?」
「“黒い”から?」
「そうです」
 潤んでいた瞳からはまた涙が落ちていく。
  そんな桃花の様子を見ながら、宮間は笑った。
「君のソレは、黒いうちには入らないよ」
「嘘です! ちゃんと見てください」
「“見ている”よ。ちゃんと全部見たうえで、黒くないと言っているんだから安心しなよ。桃花が俺の全部を欲しがっていて、どんな些細なことでも誰にも譲れないって思っていることも、判っているから」
「些細なことじゃ……」
「セックスのことを言ってるんじゃないよ」
 宮間はふふっと笑った。
「君が俺のことを気持ち悪くないと言ってくれているのに、俺が君を気持ち悪いとか言わない」
「本当……ですか?」
「本当だよ。嘘はつかないって君に言ったよね? だからもっと欲しがって」
 繋がっている部分に刺激を与えるような動きを宮間が始めると、桃花の唇からは堪えきれずに甘い声が漏れた。
「刺激が足りなかったら、自分から動いてくれてもいいよ」
 彼の言葉に白い頬がいっそう朱に染まる。
「わ、私そんなこと、思ってない」
「これから、思うんじゃないかな?」
 宮間の黒い瞳が意地の悪い色で輝き始めると、彼の予言どおりに身体の感覚が仕上げられていく。
  緩やかに最奥を刺激するけれど、もう少しだけ強い感覚が欲しいと思う程度にしか彼は動かない。
  そもそも分が悪すぎる。宮間にはこちらが思っていることすべて筒抜けなのだから。
「い、意地悪です」
「そうだね。じゃあ、俺が今、何を思っているか言葉にしてあげようか?」
「え? あ……っ」
 彼は自分のうえに乗せている桃花の腰を掴んで、深々と最奥まで挿し込んだ。疼いている彼女の体内は、その刺激には弱く、身体がぶるりと震えてしまった。
「や……だ、奥」
「嫌なの?」
「嫌じゃないって、判っているくせに。ずるいです」
「じゃあ、五分五分になるようにしてあげようね」
 彼とリンクしていた左手が解かれる。
  心の中にあった存在が失われ、通常時であれば喪失感にさいなまれるところだったけれど、身体の内側の壁で感じている大きな存在に、桃花は意識をいっきに持っていかれた。
「これ……たぶん、五分五分じゃ、ないです」
「桃花は賢いね」
 妖艶な輝きを増す宮間の瞳に、嫌な予感しかしなかった。
「だってね、桃花が可愛いから、めちゃくちゃ苛めたくなってしまっているんだよね。俺」
 長めの前髪をさらりと揺らし、その奥にある彼の黒い双眸は獣のような鋭さで光っている。
 全てを食らい尽くそうかと言わんばかりの鋭い瞳の輝きに、桃花は怯んでしまうどころか逆に身体を熱くさせられた。
「……どうしたの? 中、凄い動いてるよ」
 低い声で囁くように言われれば、そうでなくても類い稀な美貌を持つ彼に妖艶さや色気が加わって、胸が高まり、心で感じた切なさが、身体にも広がっていくようだった。
  

 
 

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