「蒼さんは、私を見て気持ち悪くならないですか?」 「“黒い”から?」 「そうです」 潤んでいた瞳からはまた涙が落ちていく。 そんな桃花の様子を見ながら、宮間は笑った。 「君のソレは、黒いうちには入らないよ」 「嘘です! ちゃんと見てください」 「“見ている”よ。ちゃんと全部見たうえで、黒くないと言っているんだから安心しなよ。桃花が俺の全部を欲しがっていて、どんな些細なことでも誰にも譲れないって思っていることも、判っているから」 「些細なことじゃ……」 「セックスのことを言ってるんじゃないよ」 宮間はふふっと笑った。 「君が俺のことを気持ち悪くないと言ってくれているのに、俺が君を気持ち悪いとか言わない」 「本当……ですか?」 「本当だよ。嘘はつかないって君に言ったよね? だからもっと欲しがって」 繋がっている部分に刺激を与えるような動きを宮間が始めると、桃花の唇からは堪えきれずに甘い声が漏れた。 「刺激が足りなかったら、自分から動いてくれてもいいよ」 彼の言葉に白い頬がいっそう朱に染まる。 「わ、私そんなこと、思ってない」 「これから、思うんじゃないかな?」 宮間の黒い瞳が意地の悪い色で輝き始めると、彼の予言どおりに身体の感覚が仕上げられていく。 緩やかに最奥を刺激するけれど、もう少しだけ強い感覚が欲しいと思う程度にしか彼は動かない。 そもそも分が悪すぎる。宮間にはこちらが思っていることすべて筒抜けなのだから。 「い、意地悪です」 「そうだね。じゃあ、俺が今、何を思っているか言葉にしてあげようか?」 「え? あ……っ」 彼は自分のうえに乗せている桃花の腰を掴んで、深々と最奥まで挿し込んだ。疼いている彼女の体内は、その刺激には弱く、身体がぶるりと震えてしまった。 「や……だ、奥」 「嫌なの?」 「嫌じゃないって、判っているくせに。ずるいです」 「じゃあ、五分五分になるようにしてあげようね」 彼とリンクしていた左手が解かれる。 心の中にあった存在が失われ、通常時であれば喪失感にさいなまれるところだったけれど、身体の内側の壁で感じている大きな存在に、桃花は意識をいっきに持っていかれた。 「これ……たぶん、五分五分じゃ、ないです」 「桃花は賢いね」 妖艶な輝きを増す宮間の瞳に、嫌な予感しかしなかった。 「だってね、桃花が可愛いから、めちゃくちゃ苛めたくなってしまっているんだよね。俺」 長めの前髪をさらりと揺らし、その奥にある彼の黒い双眸は獣のような鋭さで光っている。 全てを食らい尽くそうかと言わんばかりの鋭い瞳の輝きに、桃花は怯んでしまうどころか逆に身体を熱くさせられた。 「……どうしたの? 中、凄い動いてるよ」 低い声で囁くように言われれば、そうでなくても類い稀な美貌を持つ彼に妖艶さや色気が加わって、胸が高まり、心で感じた切なさが、身体にも広がっていくようだった。
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