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秘め恋 〜その手が奪うもの〜   8

 


「い……れて下さい」
「大丈夫そう?」
「多分……駄目でも、我慢します」
「うん」
 宮間は身体を起こし、デスクの上に置いてあった小さな袋を開けるとその薄い避妊具を自身の固体に装着させた。
 桃花の身体の上に彼の重みが被さる。
 短いキスを数回交わした後に下腹部がゆっくりと重なり合っていく。
「あ、ン……」
「……痛い?」
「大丈夫、です」
 痛みはあるものの、先ほどのように我慢が出来ないぐらいではなく、ゆっくり混じり合っていく内部の感触を桃花は唇を噛んで耐えた。
「……桃花、初めて……なんだよね?」
 彼の問いに、彼女は頷いた。
「初めて男の身体を受け入れる感じって、どう?」
「痛い……です。でも……入っているのが宮間さんだと思うと」
 同時に興奮もした。
 ベッドの上で溶け合うように身体を重ねている状態で、局部に挿れられている男性器が目の前にいる宮間のものなのかと考えると下腹部が熱く疼くような感じがしていた。
「だいぶ、きついな……」
 宮間はそう言って息を吐いた。
「は、入らない、ですか?」
「……入らないってことはないよ、俺が挿れようと思えば余裕で入るけど、ただそれじゃあ桃花が痛いかなって思うだけで」
「痛くても、大丈夫です」
「そう?」
「だから、挿れて欲しい……」
「エロいよね」
 くくっと彼は笑うと腰を揺らした。
「……もっと言って? してって、俺にされたいって。奥まで挿れて下さいって言って」
 最奥まで挿れず、中程の位置で抜き差しをしながら宮間は言う。そうすることで与えられる感覚に焦れるような感じがして桃花は堪らない気持ちにさせられた。
「し……して、宮間さんに……挿れられたい……奥まで挿れて下さい……」
「あぁ……凄く、興奮する……」
「んぁっ!」
 彼は桃花の細い腰を掴むと奥まで自身の欲望を挿し込んだ。
 最奥に男性器が辿り着いた感覚に彼女は震える。内部が全て彼に支配されているように感じ、はまり込んでいる固体の存在感は強烈なものだった。
「入って……る、宮間さんのが……」
「痛い?」
「だ、いじょうぶ……です」
 乱れる呼吸を整えながらも桃花が彼を見上げると、宮間の艶やかな黒い双眸はじっと彼女を見つめていた。見つめられていることに気がつくと途端に身体が熱くなり更なる熱を欲した。
「ふ……ぅ……、宮間、さん」
「うん?」
「身体、熱い……です」
「俺もだよ」
 ゆっくりとまるで潮が満ち引きしているように身体を揺らされているのに体内にある宮間の存在感は圧倒的なもので桃花の意識を溶かしていく。
 自分の身体を往復している男の姿を見上げれば、今まで見たことのない甘く濡れた瞳で睨むようにして見下ろされた。
 興奮が高まっていく。
 荒ぶる意識に平常が崩されていく。
 セックスに大きな期待などしていなかったのに硬く張り詰めている熱で内部を何度も擦られれば、たとえようのない感覚に今まで出した覚えのない声が漏れた。
 子供ではないから行為がどんなものであるかの概要は知っている。
 だけどそこで生まれる感覚のことまでは誰も教えてはくれなかった。
 甘美な感覚に激しく溺れる自分が恐ろしく思える。
 他人の手で奪われていく意識の源は取り返すことが出来なくなっていて、逞しい身体にただ縋り付く自由しか与えられていないように思えていた。
「ああ……ぐしょぐしょだね……ここ……いっぱい血も出てるけど、大丈夫?」
 身体を起こして結合部を見た宮間がそう彼女に言った。
 “大丈夫”とはどういう意味だろうか?
 朦朧とした意識はとっくに異常であり“大丈夫”ではない。
 唇から漏れ落ちる淫靡な啼き声や無意識に流れ落ちる涙も尋常ではなくどうしていいか判らなくなっていた。
「……痛く、ない?」
 言葉を変えて聞いてくる彼に、桃花は頷いた。
「俺……処女の子を抱くのって、初めてなんだよね……なんだか、痛そうで可哀想だなって、ちらっとは思うんだけど……」
 宮間は薄く笑った。
「滅茶苦茶征服欲が煽られて、いつもより興奮して自制効かなくなりそう。せっかく出してもらったのにねぇ」
 彼の端整な顔立ちが桃花の目の前にあった。
 切れ長の瞳を縁取る睫毛が艶やかさを際立たせ宮間の瞳を見ているだけでどうにかなってしまいそうだった。
 綺麗な男だと思ってはいたが濃艶な彼の様子に心も身体も囚われていくような気がした。
 逃れられない強い引力で否応なしに彼に引っ張られている。
「宮間……さ、ん……」
「ふ……可愛い声、泣いた顔も堪らないね」
 長い指が彼女の頬を撫で、そこにあった涙を拭い取った。
 声のことを言うのであれば彼の声もまた彼女の淫情を煽るもので、宮間が囁くだけでも内側から何かが溢れ出しそうになっていた。溢れ出しそうだと思う感覚を高めるように彼の身体が内部を擦り、襞のひとつひとつが硬さに触れる悦びに囚われている。
「ふ……ぅ、ぁ……ン」
「ああ……気持ちいい……桃花の中は凄くいいよ……」
「……っ、ああ……っ」
「こんなにいいの……初めて……ン……あぁ、なんか……持ってかれそう」
 彼女の腰を抱き、内部をかき混ぜるようにして宮間は腰を使った。
「柔らかくて熱くて……ぁ……いい」
「み、宮間……さ、ん」
「ナカ、やらしい動きしてる……うねるみたいに俺を締め付けてて」
 ぽつぽつと耳元で囁かれる言葉の淫猥さに桃花の身体は興奮で震えた。
「あ、あぁ……ん、宮間さん、やらしい……っ」
「君がそうさせているんだよ?」
 ぐぷりと大きく抜き差しをして宮間は彼女を揺さぶった。
 内部には痛みの感覚はもう殆どなく、奥まで突き上げられれば多少の違和感があるものの、過剰なまでの快楽が桃花にはたえず与えられていた。
「あっ……はぁ、あ」
「桃花……」
「……や、もう……」
 腰が甘く痺れ、宮間が出入りする度にその感覚は強まった。何かに追い立てられるようなその感覚に振り回され自分を保てなくなっていく。
「ん……ふ、可愛い……桃花、独り占め……したくなっちゃうね」
「し、て……下さい」
 宮間の背に腕を回し、身体を寄せる。
 包み込むように抱きしめられる間も、腰は揺れ続け彼女を乱した。
「……これからも、俺とエッチなことをするって意味? これっきりにしないって……こと?」
「ああ……ン」
 浮遊感が強くなり、頭の中が朦朧とした。
 繰り返される口づけや見つめられる瞳に、この時間がずっと続けばいいと望む気持ちが生まされる。
「ねぇ、どうなの?」
「……ず、っと……したい……」
「俺といっぱい、セックスしたいの?」
「したい……です」
「……桃花、俺とセックスしたいってちゃんと言って」
「あ……っ、ぁ……宮間さん、と……セックス、したい……です」
「ん……イイ子だね……」
 彼は薄く笑い、ゆったりと動かしていた腰の動きを早めた。
「こうすると、痛いか?」
「……だいじょう……ぶ、です……ン、あ……ぁっ」
「……ぎゅうぎゅう締め付けてきてる……感じてる……のかな」
「あっ……あ……ぁ」
「頬も上気してて赤いね……俺のが良くなってきてる?」
「宮間さ……ぁ、ああ……」
「ああ……いい。桃花……出ちゃいそう……」
 乱れる呼吸の中で彼女が頷くと、宮間は小さく笑った。
「出してって言って」
「ぁ、だ、出して……出して下さい、宮間……さんっ」
「あぁ……凄く興奮する……桃花……ン……ぁ」
 乱れた宮間の声に、桃花の身体が一気に高まった。
 今までばらばらだった快楽が突然ひとつにまとまりその強さを知らしめながら爆発していく。
「あ……あぁ……っン!」
 びくびくと彼に揺さぶられる度に震える身体を彼女は仰け反らせた。
「ン……桃花……イった……の?」
「わ、か……ん……な……」
 乱れる呼吸を整える間もなく宮間は桃花を揺さぶり続け、唇を重ね合わせると口腔内に舌を這わせる。
「ふ……ぅ……んっ」
「も……、我慢出来ない」
 抽送を激しいものに変え、彼は己の欲望を彼女の体内に何度も打ちつけた。
「……あぁ……、桃花……桃花っ」
「く……ふっ」
 
 桃花を押さえつけた身体の上で、男は終わりを迎えるようにして小さく身体を震わせた。

  

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