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秘め恋 〜その手が奪うもの〜   9

 



「もっと色々したいんだけどねぇ、さすがに今夜はもう無理か」
 ぐったりしている彼女にブランケットをかぶせ、背後から抱きしめながら彼はそっと呟いた。
「……あ、あの……」
「コンドームもあんまり持ってないしなぁ、残念」
「……」
 桃花はどう答えて良いのか判らずに、黙って彼に抱きしめられていた。
「……確認するけど、これっきりじゃないよね?」
 耳元で低く囁かれ、彼女は顔を赤らめながら頷いた。
「……宮間さんに、求めてもらえるんでしたら」
「求めるよ? 何度でもね」
「……は、い」
「だって、なんかもう、こうしているだけでも」
 臀部に硬い感触を覚えて、桃花は身体をびくりと震わせた。
「二回出したぐらいじゃ収まらないみたい。しばらく女を抱いてなかったからな」
 独り言のように彼は言い、桃花の股の間に男性器を滑り込ませた。
「あっ……」
「……じっとしてて」
 そのまま彼は前後に腰を動かし始めた。
 股の間を行き来する硬さに不思議な感覚に陥りながらも蕾や花芯を刺激されてしまうので彼女の身体も熱くなってくる。
「あ……ふ……ン」
 桃花の蜜が彼の男性器を濡らし、滑りを良くさせた。
 ブランケットの中で、ぬちゃぬちゃといやらしい音が響く。
「この音、桃花が立たせているのかなぁ」
 耳朶を甘く噛まれ、胸を揉まれると彼女は堪らない気持ちになってしまう。
「み……やま、さん……」
「……挿れていいなら、脚、開いて」
「……ぁ」
 震えながら桃花が脚を広げる仕草を見せると、彼はその脚を掴み上げ大きく広げさせるとその中心部で濡れている蕾に男性器を挿し込んだ。
「あああっ」
「……気持ちいい……」
 ふぅっと息を吐き、彼はゆっくりと腰を動かし始める。
「ああ……生で感じる感触、堪んない……」
 ぐぷりと深くまで桃花の中に入り込み宮間は腰を揺らす。
「さっきよりも全然いい……襞の感触まで伝わってくるみたい」
「宮間さ……中で、出しちゃ……や」
「うん、さすがにそれはね……しないけど」
 腰を揺らしながら、彼女の花芯を指で弄る。指で撫でるとその部分は興奮で硬さを増した。
「んんぅ……」
「はぁ、いい……桃花のナカ凄くいいよ」
「ん……ん……ぁ、あ……」
 桃花の頭の中が靄がかかったようにぼんやりとしてくる。
 意識は朦朧としてくるのに感覚だけは鋭敏で、彼が少し揺すってくるだけでも湧き上がる大きな快感に声が漏れ、そして自分でも腰を揺らさずにはいられなくなる。
 彼に合わせるように、或いは乱すように動いてみれば感じる快感は増し、その感覚の虜になっていく。
「桃花、そんなに動かないで? 俺、出ちゃうよ?」
 くくっと宮間が笑う声が聞こえても、身体を揺らすことが止められない。
「だ、って……ぁ、あ」
「動かないでってば」
「無理……です……なんか、もう……」
 意識が全て持っていかれてしまったように、桃花は他のことが考えられなくなっていた。
「そんなに俺の身体、美味しい?」
 宮間が笑いながら言うのを聞いて、彼女は何度も頷いた。
「……やみつきになるのはいいけど、他の男を食べちゃ駄目だからね? 可愛い、この部分で」
 彼の指が、つつっと結合部を撫でていく。
「ふ……ぅ、ン」
「桃花、判ってる?」
「は……い」
「ちゃんと、約束して。他の男とはしないって」
「し……ません」
「絶対?」
「しない……です」
「うん」
 宮間は桃花の腰を抱き、深い部分まで自分が到達するように身体を押しつけた。
 その感覚の強さに悲鳴のような声が上がる。
「奥まで、気持ち良くさせてあげるから……ね?」
「み、やま……さ、ぁ……ン」
「……俺の、奥に当たってる?」
「わかん……な……」
「気持ちいい?」
「……はっ、ぁ……いい……で、すっ」
 ぶるりと桃花の身体が震えた。
 体内に与えられる感覚も、彼に囁かれる言葉にも、どんなことにも神経が過敏になりいつもは深い場所に沈んでいるものがむき出しになっているようだった。
「桃花、俺も……凄くいいよ」
「……っ」
 強い感覚がせり上がってくる感じがした。
 それが弾けるように身体を突き抜けていけば、深い快感が得られることを知っているだけに彼女は追わずにはいられなくなった。
 ぴったりと密着した腰を揺らし、快感を与えてくれる源の彼の男性器を貪った。
「ふ……ぅ……、み、やま……さんっ……ぁあ」
「あー……もう、そんなに動いちゃって、知らないよ? 出ちゃっても」
「だめ……ですっ」
「我が儘だねぇ」
 そう言って彼は薄く笑った。
 余裕がないと桃花には告げるものの、宮間の表情は彼女を観察しつくそうとしているようなそれで、艶めかしく揺れる細い腰を眺めては満足げに微笑んでいる。
「……覚えたてのなんとかは、極上の蜜の味って……感じなのかな」
 彼女の耳朶を甘噛みしながら彼はそう呟き、唐突に腰をひいて濡れた蕾から男性器を引き抜いた。
「あっ……や、ぁっ」
「本当に出ちゃうから」
 宮間は笑いながら鞄に手を伸ばし、中から小さな袋を取り出すと手早く破って避妊具を自身のそれに装着させた。
「ふー……、はい、桃ちゃん、乗ってきて」
「え?」
「俺の上に乗るの」
「……は、はい」
 誘われるままに彼の身体を跨がすと、宮間が彼女の身体の中心部に男性器をあてがった。
「腰、落としてきて。ゆっくりね」
「はい……」
 濡れた場所はすんなりと彼を受け入れ、僅かな抵抗を内部が見せただけで呆気なく最奥まで貫かれる。
「く、ふ……ン」
「好きなように動いていいよ」
 促すように彼が腰を動かし、彼女が動かずにはいられなくなるような状態まで持っていく。
「ああ……ぅ」
 宮間の身体を真下にして、背後から貫かれる状態とは違い顔がはっきりと判ってしまう分、桃花は羞恥心に震えた。
 美しい顔の男が自分を観察するようにじっと見上げてきている。
「宮間さん……恥ずかしい……です」
「うん? そう」
「これ……いや……」
「俺はイイんだけど、桃花の顔がよく見られて」
 そう言い、彼女の腰を掴んで真下から突き上げる動作を繰り返した。
「や……ぁあっ……駄目ぇ」
「可愛い、良い表情だね」
「や……だっ」
「ほら、さっきみたいに腰を振って見せてよ。ああすると気持ち良かったんでしょう? ほら、やってよ」
 揺さぶられると堪らない気持ちになって、追いかけたい感覚が身体によみがえってきていた。
「宮間さん……意地悪……ですっ」
「ええ? 今更だよね」
 くくっと笑う声が聞こえた。
 楽しそうな様子に彼女がゆるゆると瞳を開けると、宮間はにっこりと微笑んだ。
「こんなのね、まだ優しいほうだよ? 桃花が初めてだって言うから加減してあげてるけど」
「か、加減……って……」
「ほらぁ、はやく動いて?」
「んぅっ」
 突き上げられた衝撃で最奥が甘く疼く。
 それが引き金となって桃花は腰を揺らし始めた。いざ動き始めてしまうと身を焦がすような快感に意識が全て持っていかれ自重することが出来なくなっていった。
「ん……ふ、やれば出来るじゃない? 胸も揺れて、美味しそうだね」
 両胸を少し強めに鷲掴みにされる。
 痛いと感じる一歩手前の絶妙な感覚に声が漏れた。
「そ……んなふうに……した、ら」
「感じちゃう? もっとして欲しい?」
 くくっと宮間が笑った。
「少し乱暴にされたほうが桃花は感じちゃうの? やらしいんだね」
「や……やだぁ……あ」
「だったら、そうしてあげようねぇ?」
 彼の手が彼女の臀部へとするりと滑り、胸を揉んでいたときのようにその部分を掴んで揉み始めた。
「い……ゃ……あ」
 強い快感があるわけでもないのに官能を刺激され、内部に埋め込まれている彼をより強く感じてしまう。
「ん、ふ……すっごい締め付け。やっぱり、こういうのがいいの?」
 ふっと艶っぽい息を漏らす宮間にも身体は感じてしまい、思考能力は益々低下していった。
「いや……いやですっ」
「でも……じゃあ、なんで、こんなに腰を振っちゃってるの?」
 言葉とは裏腹に動く腰を指摘され、桃花の身体がかっと熱くなった。
「気持ちいいからでしょ? 正直に言いなよ、好きですって、こういうふうにされるとイイって」
「宮間さん……っ、やだぁ」
 桃花が嫌がるように首を振ると彼は薄く笑った。
「ん……もー、もっといっぱい泣かせたいんだけどな」
 突如、彼は起き上がり彼女を後ろに倒して体位を正常位に変えた。
「ああ、そっか……桃ちゃん、処女だったんだもんね。夢中になってて忘れてた」
 黒い瞳が濃密な色で輝き、桃花を見下ろした。
「でも……真っ白なら、何が普通かなんて、判らないよねぇ?」
 普段とあまり変わりなく、優しく柔らかな物言いであるのに桃花は何故かぞくりとしたものを感じてしまった。
「……桃花」
 だけど彼の香り立つような色気と端正な顔立ち、男性らしい逞しい身体つきに酔わされ、一瞬感じた信号を桃花は意識の底に落としてしまう。

 たとえば一瞬感じたそれが危険信号でも、もうすでに鎖で囚われ逃れられないようにも思えていた。



  

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