TOP BACK NEXT

恋にならない ACT.13


「絢樹、やめて」
「どうして? しようよ、セックス。いつもしているじゃない、どうして今日
は拒むの」
「雨、降ってないでしょ」
「だから何? そんなの知らない」
 彼女の身体を自身の体重で押さえつけたまま、絢樹は手を伸ばしスカートの
中に入れる。
「や、やだ」
「おとなしくして、ひどいことされたいの? 俺を我慢させたらひどくなるっ
てあなた知っているでしょう」
「雨の日だけって言ったじゃない!」
「雨の日は絶対というふうには言いました。でも雨の日だけだと俺が言ったこ
とはない筈です」
 下着を剥ぎ取られてその心許なさに彼女は震えた。
  それでも彼は何のためらいもなしに、己の欲望をみなみの体内に突き立てる。
「う……っん!」
 痛みを感じたのは一瞬だけ。
  すぐに彼の身体の動きに合わせるように内部は蜜を垂らして絢樹を受け入れ、
内壁は男の肉体を悦ぶようにして収縮した。
 にちり、と彼が動く度に淫猥な音が結合部から響く。
「あなたも俺を捨てるのか」
「……ん、あ……や、ぁ」
 突き上げられる感覚からは甘さしか生まれなくてみなみは声を漏らした。
 漏れた甘い声に絢樹が小さく笑う。
「気持ちいい? 俺は……いいですよ、凄く。あなたの中きつくて、それにぎ
ゅうぎゅう俺を締め付けてくる。ねぇ? 本当は俺にこうされるのが好きで好
きで堪らないんでしょう?」
 みなみが首を振っても彼は笑いながら律動を繰り返す。
「あなたは嘘つきですね」
 彼はみなみの腰を抱え最奥まで入り込み、小さく身体を揺らした。
  そうされることで広がる快感の波に彼女は翻弄され、唇からは甘い声が上が
る。
  絢樹が言う通り、彼女は彼に抱かれることを嫌だとは思ってはなく寧ろ逆で
あるから、内壁だけではなく心も悦びに満ちてしまう。
 彼の体温も、息づかいも、愛しくて堪らない。
  自分だけのものにしたいと狂ったように叫ぶ心に身体が軋んだ。
「みなみさん、ねぇ、あなたが言ってよ」
「……っ、ん……ぅ」
 絢樹の言葉の意味が判らずに見上げると、彼は微笑んだ。
  そして彼女の耳朶を甘く噛みながら、次の言葉を言う。
「あなたがいつも、俺に言わせている台詞を、あなたが言ってよ。あの言葉、
俺にも頂戴」
「何を、言って……る、の?」
「“命令”ですよ、みなみさん」
 彼女の身体がひくりと跳ねた。
「嫌よ、言えるわけないじゃない」
「あなたは俺に言わせるのに?」
「――――そ、それは」
 ぐぐっと身体を奥まで入れられ、最奥を刺激されることにより生まれる快感
に声が漏れた。
「あ、あぁっ……」
「ねぇ、言ってよ」
「い、嫌っ」
「他の男には言うのに? あのスーツの男にも言ったの?」
「……言うわけっ……ないでしょ」
「それならいいけど、でも、俺に向けて言ってよ」
「嫌っ」
「ねぇ、みなみさん」
「嫌だってば」
「……好きですよ?」
 彼の言葉に心が刺激されて身体が震えた。
  途端に甘さが体中を巡り、狂うほどの快感が生まれて声が上がる。
「ふっ……ぅ、あ……絢樹」
「あなたも言って」
「嫌、ぁ……」
 首を振るみなみの身体を抱きしめ、緩やかな出し入れを繰り返しながら彼は
囁く。
「ペットには言葉を与える必要もないってことなの? でも」
 最奥で一度止まり、また彼はそこを小さく何度も擦り上げる。
「あ、ああっ……それ、駄目……」
「もう、俺、ペット辞めるから」
 びくりと身体を震わせ、絢樹を見上げると、彼は薄く笑った。
「俺から言わせるの、あなたが初めてですよ」
 別れの言葉なのだろうか?
  気がつけば、彼女の瞳からは涙が溢れていた。
  いつかそうなると判っていても、言われた言葉は胸に痛くてどうしようもな
かった。
 気まぐれに始まった関係は、こうして呆気なく終わっていくものなのだろう
か?
 終わりたくないと、泣いて叫べば彼はいうことをきくだろうか??
  
  ――――だけど。
  
  ペットを辞めると絢樹が決めた時点で、もう自分は飼い主でもなんでもない
んだろう。

 そう思うと、繋がった身体が痛くて堪らなかった。
  




 TOP BACK NEXT

-・-・-Copyright (c) 2012 yuu sakuradate All rights reserved.-・-・-

>>>>>>cm:



rit.〜りたるだんど〜零司視点の物語

執着する愛のひとつのカタチ

ドSな上司×わんこOL



Designed by TENKIYA