自虐的に笑い、俺は何度も彼女を貫いた。 「ん、い……や、ン」 甘い声を上げて啼くみなみさんの身体にキスをする。 柔らかな肌の感触も、唇に伝わってくる温もりも、全てが欲しくて堪らない。 到底手に入らないものだと思うから焦がれる気持ちが強くなる。 「されるのが……好きだって、言ってよ」 突き上げられて高い声は上げても、彼女は決して応じずに首を振り続けた。 じゃあ、何故、縋るように濡れた瞳を俺に向けたりするの? あなただって欲しいんじゃないの? 求めているものがお互いに合致していなくても。 「あなたは嘘つきですね」 俺は彼女の腰を抱き、みなみさんが良いと思う場所に入り込むとそこを突く ように何度も身体を揺らした。 「みなみさん、ねぇ、あなたが言ってよ」 「……っ、ん……ぅ」 彼女は潤みきった瞳を俺に向けてくる。 「あなたがいつも、俺に言わせている台詞を、あなたが言ってよ。あの言葉、 俺にも頂戴」 「何を、言って……る、の?」 「“命令”ですよ、みなみさん」 彼女の身体がひくりと跳ねた。 「嫌よ、言えるわけないじゃない」 「あなたは俺に言わせるのに?」 「――――そ、それは」 ぐぐっと身体を奥まで入れると、最奥を刺激されて生まれたであろう快感 にみなみさんが声を漏らした。 「あ、あぁっ……」 「ねぇ、言ってよ」 「い、嫌っ」 「他の男には言うのに? あのスーツの男にも言ったの?」 「……言うわけっ……ないでしょ」 「それならいいけど、でも、俺に向けて言ってよ」 「嫌っ」 「ねぇ、みなみさん」 「嫌だってば」 「……好きですよ?」 囁くように彼女の耳元で言うと、みなみさんの体内がきゅっと締まり俺を締 め付けてきた。 「ふっ……ぅ、あ……絢樹」 「あなたも言って」 「嫌、ぁ……」 首を振るみなみさんの身体を抱きしめ、緩やかな出し入れを繰り返しながら 俺は言う。 「ペットには言葉を与える必要もないってことなの? でも」 最奥で一度止まり、そこを小さく何度も擦り上げると彼女は過剰なまでな反 応を見せた。 「あ、ああっ……それ、駄目……」 「もう、俺、ペット辞めるから」 俺の言葉にみなみさんはびくりと身体を震わせ、こちらを見上げてきた。 「俺から言わせるの、あなたが初めてですよ」 彼女の瞳にみるみる間に涙の海が出来て、目尻からいくつもの涙が零れて落 ちていった。 「……最後だと、決めてきたならどうして抱いたりするのよ」 みなみさんの言葉やその涙に俺は微笑む。 最後にするつもりで言った言葉ではなかったのに彼女にはそう聞こえてしま ったのだろう、そしてみなみさんが泣くことで彼女がそれが嫌だと言っている ように見えて安堵してしまう。 「何を言ってるんですか」 「私が飼い主に相応しくないと思ったから、ペットを辞めると言い出したんで しょ?」 「違いますよ」 「……私が、今までの人より、劣っているから……」 「違います。みなみさん、人の話を聞いていますか? 俺は最後にしたいなん て言ってないでしょう」 「だって、そういうことでしょ?」 濡れた彼女の瞳を見ながら俺は笑った。 あなたを縛れるのなら、どんな関係でも、どんな言葉で言い繕っても構いは しなかった。 些細なきっかけで始まったような関係だったけれど、俺の執着はあの雨の日 よりも前に始まっていた。 他の女性を抱いても満たされず、渇いた感覚を潤すようにあなたの笑顔を欲 していた俺の心は、やがてはあなたの全部を欲しいと思うようになっていった。 “全部”の意味が掴みきれないまま、他の女性と同じようにみなみさんを抱 いて、だけど結局何も手に入れられずにもがき苦しんで……。 だから俺は、同じ方法では何も手に入れられないのなら、違う方法を模索し ようと思っただけだった。ペットではなく、身体だけの関係ではなく、違う何 かにすることで得られるものがあるのならと思っただけだった。 でも。 俺の身体の下で今にも大声を上げて泣き出しそうな表情をしているみなみさ んを見て、俺はまたしても言葉選びを間違えてしまったことに気がつかされて いた。 みなみさんが今までの人とは違うと初めから判っていた。 判っていたからこそ、彼女に強く惹かれた筈だったのに。 ごめんなさい。 言葉には出来ず、唇だけを動かした。 何度もあなたを傷つけてしまって……。
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