気持ちが無くてもセックスが出来るのが当たり前ではなかったんだ。 俺にとっては長い間それが当たり前だったから、誰もがそうであると思い込 んでいた。 『カレじゃない人とするとか……ない、から』 『本当に、私だけって誓えるの?』 『……好きって言って』 みなみさんが俺に向けて言った言葉のひとつひとつを、俺がちゃんと聞いて いれば、愛されてないだなんて思うことなどなかったのに。 『藤君って、でも、カノジョいるんでしょ?』 あのときのみなみさんの質問に、俺は何て答えた? 『そうだよね、藤君みたいな人にカノジョがいないわけないものね』 みなみさんの哀しそうな表情は見間違いではなかったんだ。 ────みなみさんは、ずっと、俺を好きでいてくれた。 そのことに俺はもっと早く気がつくべきだった。 俺を好きだと言ってくれないから愛してくれていないだなんて思うぐらいな ら、みなみさんが俺に対してどう接してくれていたかをちゃんと考えれば良か った。 彼女に言葉を言わせなくしたのは他でもない、俺で。 カノジョがいたと嘘をついていたのに、契約だけを押しつけて恋人にしなか った理由をみなみさんが考えたらどう思う?? そんな簡単なことに気がつきもしないで、与えられることだけを望んで得ら れるものがあるわけもなく────。 「あなたは、俺を好きですか?」 「……」 俺の言葉に、みなみさんは目を逸らした。 答えてくれる筈はない。 当然のことだ。そういうふうに仕向けてきたのは俺なのだから。 「……ずっとペットとして可愛がりたいと思っていますか? それも思ってい ないですよね」 ゆっくりと身体を動かすと、みなみさんは一瞬唇を噛んでから堪えきれずに 息を漏らした。 落ちていく涙も、抱きしめ合う身体も、そこには意味があるのだと思えば心 が何かに満たされていく。 「……離したくない、離れたくないの」 彼女の声が心に響き、切なさにじわりと痛みが広がる。 その痛みは、苦しさや辛さが含まれてはいない痛みで心地よいとさえ思って しまうものだった。 「俺、離れるとは言ってないですよね」 「絢樹……」 「ん……っ、みなみ、さん」 彼女との繋がりを深くして、俺は一度身体の動きを止めた。 「俺、みなみさんが、好きです」 「……ペットを辞めるのに、命令はきき続けるの?」 みなみさんは俺を見上げてくる。 「命令をきいているわけではないです。俺の感情を言っているんですよ」 「嘘よ」 「なんで嘘にしようとするの? スーツの男はよくて、俺は駄目なの? 自分 の意思をあなたに伝えることすら許してもらえないの?」 俺は小さく笑った。 「みなみさん、あなた……」 彼女の小さな手を握りしめる。 「俺のこと、好きなんでしょう?」 返事はない。 だけど今は逆にそれが肯定のように思えてしまう。 雨の日じゃないからと拒絶する言葉は言っても、みなみさんは俺を嫌いだと か好きではないとは一度も言ったことがなかった。 「違うの? 好きじゃないの?」 身体をひく俺を彼女は見上げてくる。 「抜かれたくないの?」 みなみさんは頬を染め、顔を背けた。 もうやめろとも嫌だとも彼女は言わない。 俺は再び突き上げて身体を揺らした。 「好きなんですか? 嫌いなんですか? はっきり言って下さいよ」 「嫌い……じゃない」 「じゃあ、好きなの? ねぇ……ちゃんと言ってよ……好きだって、俺が好き だとあなたが言ってよ」 彼女の身体を揺らし、内部をかき混ぜるようにして動くと甘い声を上げた。 落ちていく涙はそのままにみなみさんは俺を強く抱きしめ、そして言った。 「私は……あなたと、恋がしたかった」
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