運転中の洗濯機を眺めながら、みなみは溜息をついた。 邪な感情が無いと言えば嘘になる。 だけれど、それに従順になれるわけでもない。 「さすがにまだ洗濯機は止まってないですね」 「ひゃっ」 不意に背後で声がして、みなみは飛び上がりそうになるぐらい驚く。 「ああ、すみません、驚かせてしまって」 にこりと微笑む絢樹を見ていると、自分がひどく汚れた人間のようにも感じ てしまう。 彼を汚してはいけないと思うのと同時に手に入れたいとも思ってしまう感情 が苦しくて堪らなかった。 絢樹に何かしらの感情を抱いてはいけないと思うほどに揺らぐ心にみなみは 震えた。 「どうしたの? みなみさん、寒い?」 そう言って彼は身体をそっと触れあわせてくるけれど抱きしめはしない。 動けなくなっている彼女の肩に、絢樹は頬を寄せた。 「寒いなら温めてあげましょうか?」 どんな意図をもって彼はそう言うのだろうか? そして、どんな方法で温め ようとしているのだろうか? それらのことを考えるだけでも、みなみの身体 の震えがいっそうひどくなった。 「……みなみさん」 彼女の返答を待たずに絢樹はみなみを背後から抱きしめた。 彼の男らしい身体に包まれて、胸が痛くなる。 ――――これが、絢樹に触れる最初で最後のチャンスかもしれない。 心の中で、もうひとりの自分がそんなふうにみなみをそそのかす。 触れたいと思う気持ちと、そうしてはいけないと自分を戒める気持ちが混ざ り合い、焦燥感だけがやたらと高まってもっと苦しくなった。 「俺にどうされたいですか?」 耳元で囁かれる彼の言葉は優しくもあり、残酷な囁きにも聞こえた。 「藤……君」 みなみの身体の前で組まれていた腕が解かれ、彼の手が彼女の腰に添えられ る。直接的な愛撫は何一つされていないのに、何故か無茶苦茶に組み敷かれた い衝動に彼女は駆られた。 「あなたが決めて、そうしたら……俺は」 誘うような彼の声に、目じりに涙が滲んだ。 それに気がついたのか、みなみの様子をうかがっていた絢樹は慌てて身体を 離す。 「ごめんなさい、俺……調子に乗ってしまった?」 「違う……もう、どうしていいか、判らない」 「……判らないって、どういう意味?」 彼に身体を反転させられ振り返るけれど、心に燻る欲望のせいで絢樹を直視 する事が出来ずに俯く彼女を彼が小さく笑う。 「あなたが触れるなと言うなら触れない。それぐらいの我慢は出来ますよ」 「……」 「触られたくない?」 みなみが首を振ると絢樹は微笑み、彼女の頬にそっと手を置いた。 「じゃあ、キスしてもいいですか?」 彼の言葉に彼女が小さく頷くと絢樹は身を屈め、みなみの頬に唇を寄せた。 「みなみさん、本当に可愛いですね」 「可愛いとか……ないから」 「なんで信じてくれないのかな」 くすっと笑う彼の瞳は甘く妖艶に輝いている。 まるでいつもとは別人のようだった。 「じゃあ、俺があなたを欲しがってるっていうのは信じてもらえる?」 「……」 「ね? みなみさん……ずっとじゃなくていい、雨の日だけは……お願い、俺 をあなたのペットにして」 「え??」 予想もしていなかったような言葉が彼の唇から零れ落ち、みなみは絢樹を見 上げた。 「俺を可愛がって……その身体で」 「ふ、藤く……」 何か言おうとするみなみの唇を彼は唇で塞いだ。そして半開きになっている 彼女の唇の隙間から自分の舌先を潜り込ませ、濡れた舌先同士を絡ませる。 舌が触れた瞬間、みなみの身体が跳ねた。 「ああ、みなみさん……本当、あなたって可愛くて俺を堪らない気持ちにさせ ますね」 そう言って彼はみなみの手をとると、自身の塊へと彼女を導いた。 「……っ」 「ここ……あなたの手でして下さい」 屹立としたその部分に彼女の手を触れさせながら、絢樹は懇願するようにね だる。 「あなたに可愛がられたい」 「ふ、じ……君、私で……いいの?」 「少しでも、あなたが俺に触れたいと思う気持ちがあるなら、ためらわないで」 「触れ……たい」 「じゃあ、俺の事を可愛がって下さい」 彼女の手の上に自分の手を添え、屹立した固体を上下に擦らせるとみるみる うちに彼のその部分からは透明の液体が溢れてきた。 「みなみさんの手でされてるなんて……凄く興奮します」 彼女の頬に唇を寄せながら絢樹は言った。 「みなみさん、契約して? 雨の日だけは俺をペットにするって」 「ペット……って、言われても」 「あなたに可愛がられたいんだ、お願い、断らないで」 愛らしい彼が懇願するように言うからみなみの胸がせつなさで苦しくなった。 「うんって……言って?」 黒く輝く美しい双眸に見つめられて、みなみはうやむやに頷いた。 はっきりとした違和感を覚えながらも、彼を拒むことは出来ないと彼女は思 っていた。
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