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LOVEですかッ ACT.19


 

☆★☆★

 一日の業務をこなし、優月は小さく溜息をついてロッカーから鞄を引きずり 出した。  織川の家は知っているから行くことは可能だった。 ……だけど、彼はもうすでにそこには居ない可能性が有り、例えば居たとし ても彼が自分に会いたいと思っていないかもしれないと考えると足が重く感じ た。 (好き……とか、やっぱり嘘だったのかな)  優月は、きゅっと唇を噛みしめる。 心の中が激しく揺れていた。今、自分の心が痛いのは好きだと言われた言葉 が嘘かもしれないと思うから? それとも。  瞳を閉じて思い浮かぶものは織川の柔らかな笑顔だった。  誰にも見せない綺麗な笑顔をもう一度見たい。 いつだって自分にだけあの笑顔を見せて欲しい。 滲む涙を拭って、優月はロッカールームをあとにする。 (このまま会えないなんて、そんなの嫌だ)  小さな決意をしてエレベーターホールへ向かうと彼女の携帯が短く鳴った。 鞄から携帯電話を取り出して見てみると、メールが一件受信している。 メールを開くと本文はなく、画像だけが添付されていた。 ――――それは駅ビルのクリスマスツリーの画像だった。 携帯番号を使って送ってきたメールだったので、優月は電話をするか一瞬悩 むも急いでエレベーターのボタンを押し、それに乗る。  色々考えることはあったものの、優月にはメールの送り主が誰なのか確信が あった。  駅まで歩いて2分の道のりを彼女は履いているパンプスのせいでつまずきそ うになりながらも走った。  駅ビルに辿り着くと、予測していた通りの人物が大きなクリスマスツリーの 前に立っている。 「瀬那っ」  息を乱しながら優月が彼の傍に行くと、織川は微笑んだ。 「な……んで、どうして……」  会社を辞めることを言ってくれなかった件に関して問おうとしたとき言葉が 詰まった。  走ってきたせいで一瞬肺が苦しくなり、優月が息を詰まらせると彼は少しだ け首を傾けた。 「ごめん、この前優月がウチに来たときに勝手に携帯番号見ちゃった」 「ば、んごうのことも、そうなんだけど、今はそっちよりも」 「何?」 「会社、辞めるって、決まっていたことならなんで言ってくれなかったの?」 「あー……、うん、言わなかったことに関しては他意はなかったんだけど。入 社の時から三ヶ月って話で契約してたから」 「だから言わなくてもいいって思ったの?」 「言わなくてもいいというふうにも思ってはいないよ、優月」 「じゃあ、どんなふうに思っていたの?」 「優月?」 「何も言われないままに、瀬那が居なくなったら私がどう思うとか考えてはく れなかったの?」  もう会えないと思ったときの感情を思い出し、その胸の痛みに優月は涙を零 す。  そんな彼女の様子を見て織川は小さく笑った。 「考えたよ、俺が居なくなっても優月はなんとも思わないだろうなっていうふ うには」 「なんで? なんとも思わないわけがないじゃない」 「……ねぇ優月、俺がどうしておまえが何かを思うだろうなんて考えられる?  おまえが俺を好きじゃないってことが判っているのに」 「好きじゃないなんてことないよ」 「嫌いってわけじゃない、好きではないというのでもない? それで俺に何か 伝わるとでも思っているの?」 「瀬那が居ないのは嫌なの」  彼女の言葉に、織川は薄く微笑む。 「言葉を遠回しにするな、言いたいことがあるならちゃんと言えよ」  柔らかい言い方であっても語尾が強くて、優月はその声にひくりと身体を強 ばらせた。 「……もういいよ、おいで優月」  優月の次の言葉を待たずに、織川は彼女の腕をひっぱりすぐ近くで停まって いた車の後部座席に乗り込んだ。  運転席にいるスーツ姿の人物は織川が何かを言うまでもなく、車を発進させ る。  「せ、瀬那?」 「折角のクリスマスイブだし、楽しく過ごそうよ」   そう言って織川は優月の手を握り、甘い笑顔を浮かべた。

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