TOP BACK NEXT

LOVEですかッ ACT.4

  

☆★☆★

『仲良くして』  仲良くって――――? その距離の詰め方が判らない。 同性相手のそれであるなら、考えようもあるけれど、異性が相手の場合は何 処まで近づいていいのだろうか。  優月は会社近くのコンビニで、のど飴の棚を眺めながら考えていた。   好意に甘え、近づきすぎることが迷惑になるのではないかと、色々と考えて しまい頭痛が生まれる。  それでも……と、苺味ののど飴をひとつ棚から取りレジへと向かった。 今日も織川のほうが先に出勤していた。 座席表を見て自分の座る席を確認してから、織川のデスクへと向かう。 「おはよ、優月」  彼のほうから挨拶をしてくる。 「お、はよ……あの、これ」  優月は先ほど買ったスティックののど飴をパッケージごと織川のデスクに置 いた。 「え? くれるの」 「うん、昨日のお弁当……のお礼」 「礼なんていいのに、でも嬉しい。ありがとう」  にこりと笑う織川の笑顔がやはり眩しいように感じてしまい、優月の胸が音 を立てた。 「今日は休憩がずれちゃったな」 「そうだね」 「残念、一緒だったら良かったのに」 「……」 「仕事終わった後って今日は用事ある?」 「え? ううん、別にないよ」 「じゃあ、夕飯食べて帰らないか」  織川はそう言って微笑む。 「あ……う、うん」  優月の返事に彼はまた微笑んだ。 眼鏡のレンズ越しに見える瞳が綺麗で、その瞳が自分を見ているのかと意識 するだけで頬が熱くなるような感じがした。 「苺味なんだ」  織川がのど飴を手に取って眺めている。 「嫌いだった?」 「いや、珍しいなって思った」 「だいぶ甘いから、のど飴の効果は期待できないかも……」 「ふぅん、可愛いよね」 「パッケージが?」 「優月が」  織川は短くそう言うと小さく笑った。 意識しすぎだ、と思うのにスイッチを押されたように優月の顔は赤くなる。 「な、な……っ、んでそうなるの」 彼はにこりと笑った。 からかわれているのかそうでないのか全く判断出来ない。 それとも、自分が赤くなることが彼の想定の範囲内で、反応を楽しんでいる だけなのか。  ちゃんとしたマニュアルがあれば、対応も淡々と出来るのに優月の中にある 対男性用のマニュアルは不完全でどのページを参照しても上手く切り返す方法 は載っていない。  そして優月の想定外だったのが、織川のキャラクターだった。 仕事以外では殆ど喋らない彼だったから対人関係もおとなしいのかと思って いたのに今のこの現状だ。  ためらいや戸惑いが大きいだけで不愉快なことは何一つない。 不愉快ではないけれど――――。 気がつくと、織川がデスクに頬杖をついて優月をじっと見つめていた。 まるで様子を観察しているように見えて彼女は更に赤くなる。 「優月って、本当、かわ」 「わわわーーっも、もう止めて」  おそらく可愛いと言おうとしていた織川の言葉を遮り、優月は逃げるように して自分の座席へと向かった。  想定外。 あの柔らかな声音で、自分を可愛いなどと言い始めるだなんて。 おとなしそうで、それこそ草ばかり食べていそうな印象だったのに完全に優 月は彼を読み違えていた。  それでも、優月以外の人間に対しての行動が変わったかと言えば全く変わっ てはいなくて、彼は他の人間に対しては相変わらず仕事以外のことは喋らない ままだった。

 TOP BACK NEXT

-・-・-Copyright (c) 2011 yuu sakuradate All rights reserved.-・-・-

>>>>>>cm:



rit.〜りたるだんど〜零司視点の物語

執着する愛のひとつのカタチ

ドSな上司×わんこOL



Designed by TENKIYA