TOP BACK NEXT

LOVEですかッ ACT.5

  

☆★☆★

  仕事が終わり、ワークスペースのあるフロアからセキュリティゲートをくぐ りロッカーのある場所へと向かうと織川が優月を待っていた。 「あ、ごめんね、遅くなっちゃって」 「いいよ」 「ラストのお客さんとの話がちょっと長引いちゃって……」  優月はそう言うとロッカーから鞄を取り出し、ハンガーにかけてあったコー トを羽織る。 「優月って好き嫌いある?」 「特にはないよ」 「じゃあ、場所は俺におまかせでいい?」 「うん」  優月の返事に織川はにこりと綺麗に笑った。 エレベーターホールで、同じプロジェクトの人間と会う。 お疲れ様ですとお互いに言い合い、仕事以外のことは喋らないけれど挨拶は きちんとこなす織川も「お疲れ様です」と彼らに言った。  笑ってはいるものの、優月に向けられる笑顔とは質が違うように見えて、完 全に愛想笑いであることが優月には判ってしまい、それが妙に胸をくすぐる。 「最近、あなたたちって仲がいいわね」  一緒にいた先輩の佐々木がそんなことを言ってくる。 どう答えたら良いものかと優月が思うよりも先に織川が口を開いた。 「優月は俺の嫁にするんで」 「え? 嫁? もうそんなところまで話が……」  驚いている佐々木と同じようにして優月も驚き、だけど慌てて首を振った。 「あ、あの! 嫁って、違うんです! お嫁さんとか妻とかそういうのではな くてですね、お気に入りのキャラクターのことを、なんか、そういうふうに言 うみたいで……って、ちょっと織川君ちゃんと説明をしてよ」 「……瀬那だっての」  やや口を尖らせて織川は不満げに優月を見下ろしてくる。 「せ、瀬那……」  優月が赤くなって言うものだから、周りの人間は微笑ましげにその様子を見 ている。 「まぁ、織川の言うところの嫁はカノジョってことか」  別の先輩の箕輪が笑いながら言った。 「……ちょっと違いますけど、ほぼそんな感じなので、誰も優月には手を出さ ないで下さい」 「はいはい」  箕輪と佐々木が笑い、優月は顔から火が出そうになるぐらいに顔を熱くさせ た。 「……嫁とか……聞いてないし」  彼らとエントランスで別れてから、優月がぽつりと言うと織川は身をかがめ て視線を彼女に合わせてくる。 「ごめんね? 怒った?」 「怒ってはいないけど」 「嘘を言ったり、適当にごまかすのが嫌いだから、ああ言うしかなかった」  優月はどきりとする。 嘘でもごまかしでもないのなら、織川はどんなふうに考えているのかと思え て。   そう思う優月が判るのか、彼は言葉を繋げる。 「俺、優月を自分のものにしたいと思っているよ」 「な、なんで!?」 「好きだから」 「好きとか……簡単に言ったら駄目」 「簡単に言っていると思っているのか?」 「だ、だって」  視線を合わせると、織川はじっと優月を見つめてくる。 レンズの向こうで甘い光を瞬かせている瞳に見つめられて胸が痛くなる。 不愉快な胸の痛みではないから、ずっと見つめられていたいとさえ思ってし まう気持ちを振り切るように彼女は首を振った。  だけど振り切ることを許さないように織川は言葉を重ねた。 「俺は、優月が好きだ」 「……なんでよ」 「好きになるのに理由って必要なの? 雄弁に理由を言えてしまえるほうが俺 は嘘に近いと思ってしまうけど」 「……」 「それでも、優月が理由を知りたいと思うなら考えてみる」 「も、いいよ、ご飯、行こう」  耳朶まで赤くなっている顔を俯かせて優月は言う。 「うん」  織川は何事もなかったかのようにして微笑み、「こっちだよ」などと言いな がら手を繋いできた。  ――――この人はッ。と思いながらも優月はその手を振り払うことができな かった。

 TOP BACK NEXT

-・-・-Copyright (c) 2011 yuu sakuradate All rights reserved.-・-・-

>>>>>>cm:



rit.〜りたるだんど〜零司視点の物語

執着する愛のひとつのカタチ

ドSな上司×わんこOL



Designed by TENKIYA