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LOVEですかッ ACT.8

「何? どういうことなの、優月」
「……」
「……言えないのか、じゃあ、聞き方を変える、なんで泣いてるんだ? 箕輪
さんに泣かされたわけではないんだろ?」
「ご、めん」
「謝る必要はないけど」
 妬いた。などと、とてもではないが言えなくて優月は俯いた。
「……それに、俺、優月をすぐに切るとかそんなのはないから」
 聞かれていた会話。
  その答えをくれる織川に、優月は頷く。
「信じて……他のヤツを信じられなくても、俺のことだけは信じてよ」
 誘うような甘い彼の声に優月の瞳からまた涙が落ちた。
  その涙を織川が掬う。
「佐々木さんがどうとかって、箕輪さんが言っていたね?」
 びくりと彼女が身体を震わせると、織川は目を細めて笑った。
「俺と佐々木さんが話してるのを聞いたんだ? それが嫌だった?」
「ち、ちが……」
「優月が、他の誰とも喋るなと言うのなら、俺は喜んでそうする」
 彼の言葉に優月は首を振った。
「それで俺の優月を想う気持ちが特別だという証明になるのなら」
 彼女の両手に手を添えて、彼は微笑んだ。
「優月、俺がおまえを想ったらいけないの? この気持ちをおまえは特別だと
認めてはくれないの? だったらどんなふうにすれば認めてもらえるのか教え
てよ」
「……織川君」
「瀬那だって……俺は何度言えばいいの?」
 くくっと彼は笑った。
「何度でも言うけどね、優月がちゃんと呼べるようになるまで。そして俺の気
持ちだって、おまえが信じてくれるまで何度でも言うよ」 
 織川は少しだけ身を屈めて、優月の耳元で囁いた。
「俺はおまえが好きだ」
 彼女の涙が止まるまで、織川は優しく優月の頭を撫で続けた。
  
  
   

☆★☆★

 仕事が終わり、アイスクリームショップでふたりはアイスを食べた。 突然織川が食べたいと言い出したのだ。 「冬のアイスってなんだか……」  冷たさに優月は身体を震わせた。 「ちょっと人恋しくなるだろ?」  そんなことを言って織川は笑った。 「人恋しいって、判らないけど」 「温めてもらいたくならない?」  ふっと彼は笑う。 今日は眼鏡をかけていない分、その瞳の輝きが増して見える。と優月は思い 顔を赤らめる。  そして、テーブルに置かれた彼女の手を彼が握ってくるから余計顔が熱くな った。 「……温める……とか、ちょっと、恥ずかしいよ」 「恥ずかしがる優月には、萌えますねぇ」  織川はくくっと笑ってから、優月の指に自分の指を絡めた。 どきりとする。 彼の温度や仕草に。 「優月は凄く可愛いよね」 「……恥ずかしいから」 「思っていることはどんどん言わないと、優月は俺を信じてくれないだろ。俺 というか、俺の気持ち?」 「……」  赤くなって俯く彼女を織川は微笑んで見ていた。 織川は、深く追求はしてこなかった。 簡単に切られたと言った自分の台詞。ネチネチとまだ前の彼を忘れられない のかと彼は呆れただろうか。  結局ネチネチと思いたくないと考えていても、思ってしまっている事実がそ こにはあるのだと優月は溜息をついた。 「今日はラーメンとかどう? 喜多方ラーメンで美味しいお店があるんだけど」 「あ、ラーメン好きだよ」 「じゃあ、今日の夕飯はラーメンで決定」 「今日は私がおごるね」 「……そう? じゃあ、おごってもらっちゃおうかな」 「うんうん」  優月がほっとしたように微笑むと、彼も笑った。 金銭的負担を、織川にかけたくないと優月は思っていた。 同じ職場で働いているのだから収入は同じで、しかも織川のほうは一人暮ら しだと思えるので余計に。 「ここのおすすめって何?」 「んー、やっぱ、醤油のチャーシュー麺かな、プラス、ネギの入ってるヤツ」 「じゃあ、私はそれにする、おり……」 「オリ?」  正面に座っている織川が頬杖をついてじっと優月を見た。 「せ、瀬那……は何にする、の?」 「俺も同じので」  にこりと彼は笑った。 「優月はすぐリセットかかっちゃうんだな」 「何が?」 「呼び方、ちゃんと瀬那って呼んでくれてるのかなぁと思えばすぐ戻っちゃう」 「ご、ごめん……ね」 「そういうのも、なんか可愛くていいんだけど」  くくっと彼は笑った。 「……瀬那は……その、あ、でも……いいや」 「え? なに」 「ううん、いい」 「なんだよ、気になるから言って」 「……う、ん……その、眼鏡」 「眼鏡?」 「もうかけるのやめちゃうのかなって」 「んー……俺はどっちでもいいんだけど、優月が眼鏡萌えするっていうならか けるし」 「眼鏡萌えって……わけじゃないんだけど」  ちらっと優月は織川を見上げた。 彼の綺麗な瞳とぶつかる。 やはり自分は図々しくて欲張りだ。と優月は小さく息を吐いた。 彼が綺麗な瞳をしていることを誰にも知られたくないと思ってしまうだなんて。

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