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● 熱情の薔薇を抱いて --- ACT.25 ●

  

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ふたりだけのお祝いが終わってから風呂に入った。

沙英が風呂から出てきて、俺の部屋に「寝る挨拶」をしに来る。

うん、まぁ…。

別々に寝る気はないんだよね。

一緒に寝ようと提案すると、沙英は躊躇う事なく「はい」と笑った。



「瀬能さんと一緒に寝るの初めてですね」
沙英はそう言いながらベッドに潜り込んで来る。
腕枕をすると彼女はにっこり笑った。

「ケーキの苺美味しかったです、それから初詣の前に食べた、もも
いちごの大福も美味しかったですし」
「そう」
初詣ねぇ。
思わず渋い表情になってしまったのが彼女に伝わったのか、沙英は
にこにこ笑った。
「もう大丈夫ですよ」
「何が?」
「工藤君の事です」
「ふぅん」
「過ぎた事ですからね」
「そう」
「多分、もっとうんと後になったら良い思い出とか言える様になる
と思います」
「…良い思い出?」
こっぴどく振られたせいで、心に傷を作ったっていうのにか?
「高校の3年間、彼を想って幸せだったのは本当の事なので」
「幸せねぇ」
3年もあいつの事を想っていたわけ?
大人げないんだけどなんとなく、面白くない気分にはなる。
「はい、幸せだったり嬉しかった記憶はあるので、だから」
まだまだその話が続きそうな感じだったので俺は遮った。
「沙英」
「は、はい?」
「その話は、もういいよ」
「…あ、はい」
「君の一途さを見せ付けられて、俺はあまり気分良いものじゃない」
「え?」
「君の一途さを量るのに他の男が出てくる必要はないよ」
「一途さって、あの…」
彼女の唇にゆっくりと自分の唇を重ね合わせた。
「俺だけ見てて」

俺を愛して、その一途さを示して見せて。

他人を愛した軌跡で君の一途さを知りたくは無い。

だからもっともっと愛してよ。

沙英の身体を抱き締める。

もう、我慢はしない。


承諾の証なのかなんなのか、沙英はやたら俺の身体に触れてくる。
性的な触れ方ではないからほほえましくなってしまうんだけど、
彼女の好きにさせた。

その代わり、俺も好きにさせて貰う。

触れたり、唇をその身体に寄せるたびに沙英はぎゅっと唇を噛み締
める。

もっと君が啼く声を聴きたいのだけれど。

甘い声で俺を誘ってよ。

俺が沙英を欲しくて欲しくて堪らないと思う様に君も思ってよ。
痛くて心が壊れてしまうと思うほどに。


潤う彼女の体内を感じて、欲望が高まった。

自分の身体のあの部分が熱くて堪らなくなる。
コントロール出来なくなるんじゃないかと思うぐらいの熱さだ。

沙英を一度いかせてから、俺は身体を起こしコンドームをそこに着
けた。

いつもする時よりそれはだいぶ硬く大きくなっている様な気がした。
久しぶりだから”そう”なのか、沙英を抱けるという期待とか喜び
とかからなのかは判断しにくい。

「…好きだよ…沙英、愛してる」

ゆっくりと、彼女の体の中に自分を押し込んでいく。
挿入が深くなる程に沙英の熱が俺のそこに伝わってきて、感覚的に
も彼女を抱いているのだと知る事が出来る。

沙英が苦しそうに小さく震えた。

快楽に悶える表情とは明らかに違う。


予想はしていた。

彼女は、もしかしたら抱かれるのは初めてなんじゃないかって。
俺が少し動くだけでも、沙英の眉間の皺が深くなる。

僅かな声も漏らさない様に唇を硬く結んでいるのは、俺に悟られな
い様にする為か?
沙英は「痛い」と言わない。
言ってはいけないとでも思っているのだろうか?

彼女の最深部に到達し、それからゆっくりと抜き差しを繰り返す。

俺がどんな風に動いても、沙英は黙って受け入れる。

「ごめんね、耐えさせて」
「平気です、何とも無い…です」

何とも無いと言いながらもその声は弱々しく震えている。
本当の事を言ったって良いのに。
「嘘つきだな」
俺はわざと彼女の中に深く差し入れる。
「っい…ン」
さすがに沙英は辛そうな声を上げた。
「本当は辛いんでしょう?」
押し付けたまま腰を揺らす。
多分、こういう動きは痛いのだろうと言う事は判っていた。
沙英の表情もそう言っている。
「止めてって、言えばいい」
もちろんセックス自体を止める気は無かったのだけど、沙英は首を
振った。
「なんで?辛いだろ」
「痛い、のは本当です、でも…抱かれるのは辛い事じゃ、ない」
そんな風に言う彼女が堪らなく可愛く思え、胸の中の愛しいと思う
気持ちがより強くなる。
「でも、早く終わって欲しいでしょ?」
なおも彼女は首を振った。
「ずっと、抱いていて欲しいです…ずっと瀬能さんに抱かれていた
いと、思うのです」
「痛いのに?」
「痛いけど…こうされているのは、幸せだと思えるので…」

幸せ。

その沙英の言葉に、心が震えた。
俺に抱かれる事が幸せだと、言って笑う彼女がどうしようも無くな
る位、愛しくて堪らなくなる。
愛しいと思うのは元々だ。
いつだって、もうこれ以上”愛しい”と感じる気持ちは無いだろう
と思わされるのに、予想に反して沙英が何か言う度に深い想いへと
塗り変えられていく。


どれだけ俺は、彼女を好きになっていくのか。
なんていう底の無い感情なんだ??


「沙英…本当、おまえは可愛いな」

かろうじて感情をセーブし、抽送を続ける。
どんなに激しくしたって彼女は堪えてくれるだろうと思えるけど、
今は辛くさせたいわけではないから。

「瀬能さん、好き…、いっぱい、好き」
言いながら沙英の瞳からは涙が零れ落ちていく。
「好きだよ、沙英」

感情がまた一気に高まってそれと同時に射精感も強まった。

「もう少しだけ、我慢してね」

柔らかい沙英の内壁に何度も自分のものを擦り合わせる。
終わってしまうのは惜しい気もしたがこれ以上は俺も我慢が出来な
かった。

放出されていくもの。

それは体液だけではなく、何かとは言い表せない感情も解き放たれ
ていった気がした。

「ずっと、一緒にいるから」

俺が言うと沙英は頷いた。

一緒にいる?
ううん、そんな優しい感情では正直なかった。

もう絶対に沙英を手放せない。

離さない。

強く強く彼女を抱き締めた。




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