「びくびくおどおどしないの」 彼は可笑しそうに笑う。 「裸の胸には触れるのに、こっちは嫌なの?」 瀬能さんはそんな事を言いながら私の手を取って自分のそこに触れ させた。 「っ、い、嫌とか、じゃないです、けど」 手の中に熱い塊がある。 皮膚の表面は柔らかいのに、固いと感じてしまう。 私の持っていない最たるもの。 改めて、瀬能さんは”男”なのだと認識させられる。 「この部分も含めて、沙英のものなんだから責任はとってね」 にっこりと彼は笑った。 私が少し握り返すだけで、そこは固さと大きさを増している様で不 思議な感覚だった。 「…ん、沙英が触れてるのかと思うと、それだけでも凄く興奮する」 小さく溜息をついて彼が言った。 その部分も、ひくっと動くので思わず手を放してしまう。 「もうお仕舞い?」 彼は笑って身体を起こし、私の股の間に顔を埋めた。 「え、っ…ぁ」 瀬能さんの舌が、私のその部分を舐めている。 強い快感が沸き起こる。 生暖かくて柔らかいものが上下に行き来し、 体内へ続く場所にも触れてくる。 また追い詰められる感じが強くなって来ていた。 あんな場所を見られている恥ずかしさでも気が遠くなりそうだった。 ちろ、と芯の部分を小さく舐め上げられて私は思わず声を上げる。 「ここ、好きなのかな?舐められるの」 私の反応を良しとしたのか、彼が執拗にそこを攻めてくる。 出したくないと思っても、声が漏れて息も乱れた。 心拍数が快感と比例して増えていく。 血液の温度が上がったのかと思えるぐらい身体は熱かった。 ひくっと身体が跳ねる。 緩やかだと思われた快感が急激に強くなっていった。 何かがせり上がってくる。 それに私はどんどん追い詰められていく。 「や、だ…だめ、瀬能、さん…あっ」 言葉を返さない変わりに舌と唇での愛撫を強くしてくる。 強い快感。 「あっ、あぁっ…っ」 ほんの一瞬の出来事。 瀬能さんが愛撫している部分から大きな快感が沸き起こり、身体を 突き抜けていく。 痛いぐらいの快感に全部の神経を持っていかれた様な感じだった。 「良い声…気持ち良かった?」 彼は息絶え絶えになっている私を見下ろして言った。 頷くと瀬能さんは微笑んだ。 「沙英の女の匂いは凄く俺を興奮させる」 彼は取り出した薄いセカンドスキンを自身のそれに着けていた。 「…好きだよ…沙英、愛してる」 敏感になっている私の身体の入口に彼は自分を当ててくる。 瀬能さんに抱かれるんだ。 その事を自覚したら余計に身体が震えた。 大好きな、大好きな瀬能さん。 誰よりも愛しいと思える人で、そして私の想いを受け止めてくれる 唯ひとりの人。 「す、き…瀬能さん、好きです」 ゆっくりと彼の固いそれが入ってくる。 「言葉、足りない…」 艶のある声で、私を誘ってくる。 彼が漏らす小さな溜息に私の吐息が絡まり合う。 「愛して、ます」 「あぁ…沙英…っ」 彼の手が私の腰を押さえつけ、ぐっと一気にそれが入り込んで来た。 「んぅっ!」 あまりの痛みに身体が硬直してしまう。 少しでも彼が動くと痛みが身体の内部で広がった。 痛い、痛い。 でも嫌じゃないから口には出さなかった。 痛みよりも、抱かれている事の大きな満足感が私を包んでいたから。 瀬能さんの逞しい身体に組み敷かれて、私は幸せだと感じていた。 「沙英、沙英…好きだ…好きだよ」 律動を繰り返しながら彼が何度も言う。 「好き、瀬能さん、が…っ、好きです」 私も応える様に言葉を返す。 何度も何度もキス。 「あぁ、沙英……こんなにも俺を、本気にさせて…」 乱れた息で彼が私の耳元で囁く。 私は強く彼を抱き締めた。 「ずっとずっと、私の傍に居て下さい、ずっとです」 苦しい感情が湧き上がってきて涙が零れた。 「離すわけないだろ、何度も言ってる…そんな中途半端な想いは… 持ってない」 彼は遠慮のない律動を繰り返してくる。 痛みは激しくなったけれども、その痛みに耐える事も彼への想いの 一部だと思えた。 そして私の彼に対する愛情の深さを量られているのだとも思えた。 「…ぅ、ん…ぁぁ」 香りがする。 瀬能さんの香り。 シャンプーだとか、ボディーソープの柔らかい香りに混じって、彼 そのものの香りがする。 それもまた私を堪らない気持ちにさせた。 「…余裕、なくなる…こんなの、初めて」 腰を使いながら彼はそんな風に言った。 それから私と目を合わせて苦笑いをした。 「ごめんね、耐えさせて」 「平気です、何とも無い…です」 「嘘つきだな」 彼はぐっと腰を深くし突き入れてくる。 さすがにそれには声が漏れた。 「本当は辛いんでしょう?」 押し付けたまま腰を揺らしてくる。 最深部を刺激されてどうとも言い難い痛みの様なものに翻弄された。 「止めてって、言えばいい」 彼の言葉に首を振った。 「なんで?辛いだろ」 「痛い、のは本当です、でも…抱かれるのは辛い事じゃ、ない」 瀬能さんは動くのを止めて私の頭を撫でた。 「でも、早く終わって欲しいでしょ?」 私はまた首を振った。 「ずっと、抱いていて欲しいです…ずっと瀬能さんに抱かれていた いと、思うのです」 「痛いのに?」 「痛いけど…こうされているのは、幸せだと思えるので…」 私の言葉に彼は小さく笑った。 「沙英…本当、おまえは可愛いな」 彼はまた抽送を始めた。 大きく退いては入り込んでくる動作を繰り返す。 痛みは大きいものの私の身体はすっかり彼を受け容れられる様にな っていて、たっぷりとした液体が身体から出ているのが判る程、そ の水音が響いていた。 私は瀬能さんの身体をしっかりと抱き締めた。 触れたいと思っていた、肌、その温もり。 その全部が今私の腕の中にある。 濡れた様なしっとりとした唇。 何度も重ね合わせた。 唇が触れ、舌を絡め合わせる度に身体の痛みとは別に興奮が強くな っていく。 好きだと言葉を吐き出す度に、切なさで涙が零れる。 ―――――私、沢山この人に愛されたい。 「もう少しだけ、我慢してね」 そっと、小さく耳元でそう囁くと最深部まで自身を突き入れて小刻 みに腰を揺らした。 「ん…沙、英…」 彼が強く私を抱き、限界まで身体を差し込んできた。 行為の終わりを表すかのように。 「ずっと、一緒にいるから」 甘い吐息混じりに彼はそう言った。 その夜、 多少の加減をしてくれるのかと思ったけれども、 それは凄く凄く甘いことで、 結局私は彼の腕の中でうとうとしかける度に起こされる事になった…。