身体を拭くのもそこそこに、ベッドに倒した沙英の中に自分を押し込ん だ。 今度は、コンドームを着けて。 彼女が甘い声を上げて啼く。 腰を掴んで最奥まで届くように抜き差しする。 最奥に俺が届くたびに、沙英の身体が激しく反応した。 緩やかに、抜いて差し込む事を繰り返すと、彼女の内部が俺をじっくり と堪能している事が判る。 ”そんな風に”内部が変化しながら動いているからだ。 俺の形に合わせるようにカタチを変えて、そして中に導くように蠢く。 そんな動きが堪らなく良かった。 彼女の体つきも、良い、と思えたが、例えば胸の薄い子であったとして も、俺は”良い”と思っただろう。 それが沙英であるなら、胸が大きくても小さくても激しく欲情する事に は変わりがないと思えた。 こんなに激しく求めてしまうなら、やはり彼女にも同じように求めて貰 わなければ気が済まないと思ってしまう。 俺なしでは生きられないと、心でも、身体でも感じて欲しい。 甘美な実を貪り喰うようにして、互いの身体を感じ合った。 「も、もう…だ、めです」 「何が駄目?」 「感覚、おかしく、なっちゃいます」 「なるんだったら、なってしまえば?」 彼女の耳元に唇を寄せて囁く。 そう、もっともっと、おかしくなってしまえばいい。 溺れて沈んで、這い上がれなくなるぐらいまで落ちれば良い。 その快楽の沼底に。 「どうせ、過ぎ去ってしまえば、また”欲しい”と思うのだろう?君は」 「そういう、意地悪っ、を…あっ」 沙英が苦しそうに息を詰める。 「ほら、もう、欲しがってる」 深く飲み込んで、快楽を貪ろうとしているその部分に俺も酔わされる。 「だったら、もっと、欲しがれよ」 「和瑳っ…や、ぁ」 「嫌なら抜くって言ってるの」 「いや、止めないで」 「じゃあどうされたい?」 「も、っと」 「もっと、何?」 「深い、ところに、欲しい…です」 「へえ、そこが良い場所だっていうの、判ってるんだ」 沙英が内側でより快感を貪るタイプであるという事は、彼女が言わなく ても、もう判ってはいた。 彼女の細い腰を掴んで、より深い場所に俺自身を押し込み小刻みに揺ら した。 それに応えるようにして沙英も身体を揺らす。 「もっと、淫らに求めて」 「あっ、あぁっ」 彼女が乱れる様子は、いっそう俺の中の雄を駆り立てる。 もっともっと、沙英を狂わせたい。 もっと高めて、そして彼女を深く味わいたい。 もっと、もっと、と結局いつだって俺の方が貪欲に求めてしまう。 沙英に俺を教え、忘れられなくさせたい。 身体のソレだけが全部ではなかったが、そういった部分は目に見えて判 りやすい。 測りやすく、知りやすい。 そして沙英は本当に判りやすく俺に応じてくれていたから、加速してし まうのだ。 人の心の内面が、複雑で判りにくいものだったから、余計にそう思うの かもしれない。 複雑に色んなものが絡み、押し殺し、深く沈みこませた感情を、誰でも 持っているものだから。 沙英も、そして、俺も。 ****** 「何か、飲む?」 半分眠りかけている沙英に声をかけた。 「…いえ、でも、あの…」 「なに?」 「そばに、居て下さい、もうちょっとだけ」 「ああ、良いよ」 彼女はうとうととしながらも、俺の手を握っている。 「…ねえ、沙英」 「…ん、はい」 薄く瞳を開けて彼女はこちらを見た。 「指輪を買いに行こうか」 「え?」 「…どういうのが欲しいか、考えておいて」 「あ、あの……あ、はい」 沙英は小さく微笑んだ。 「指輪、とか、あの…すごく、嬉しいです」 「そうか」 「はい」 沙英がどんな風に思っているか判らないけれど、俺は彼女に目印をつけ ておきたいんだ。 独占欲の塊。 他人から見て、彼女が”俺”のものだとすぐに判らなくても、誰かのも のであるという目印はつけておきたい。 そんな風に、今まで思った事なんてなかったのに。 小さな指輪ひとつで、彼女を護れるとも、縛れるとも思ってはいない。 完全な自己満足のカタチだ。 それでも、君は喜んでくれるのか? 「沙英、愛してるよ」 俺の言葉に、彼女は微笑んだ。 「愛してます、私には、本当に和瑳だけ…なんです」 「ああ」 握っている手を、彼女はいっそう強く握った。 「愛したいのも、愛されたいのも、和瑳だけ」 「…うん」 「信じて、下さい」 「うん、信じているよ」 ただ、それが永遠ではないかもしれないとは思っている。 切ない痛みが、俺の胸を何度も刺していた。