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rit.2〜りたるだんど〜 STAGE.15


欲しいと思う気持ちが高まっていく。
そうでなくても、今日一日彼と触れ合う事を考えさせられていただけに、焦が
れていたその身体が目の前にあるのだから触れずにはいられない。
白いシャツ越しにでも判る彼の体温と逞しい身体つきにめまいがした。

緩めていたネクタイを彼が外し、強く抱き締められる。
欲しかった体温に包まれて安堵の溜息が漏れた。

「風呂とか入らないわけ?」
「……これ以上、我慢出来ないです」
「さっきは“我慢した方がいい?”なんて言ったくせに」
「零司さんが言うとおり、私には無理……です」
「……じゃあ……」
耳元に吐息がかかる。
小さく低く囁く彼の声は色っぽいものであったけれど、甘えるような声でもあ
った。
「欲しがって」
堪えていたものが溢れ出す。
欲望に塗れた感情が剥き出しになっていく。
彼の身体を抱き締めて、その形の良い唇に自分の唇を重ねた。

こうしている瞬間は、この人が自分だけのもののように思えて、そういう風に
感じる事にまた感情が煽られた。
「零司さんが欲しいです」
「欲しいのはココだけ?」
掴まれた手が誘導された先にある、硬くなっているその一箇所。
「今凄く欲しいのは、確かにこれなんですけど、でもここだけじゃ嫌です」
「どういう、意味?」
そこを布越しに握らされたまま上下に擦らされる。
触れた時に硬くなっていたそれは更に硬さや大きさを増していく。
「欲しいのは……零司さんの全てです」
「花澄が俺に、おまえの全部をくれるなら、そんなのは容易い事だ」
「全部あげます、だから零司さんを私に下さい」
「ん……いいぜ」
唇が重なる。
押さえつけられていた彼の手が、私の手から離れ服を脱がしてくる。


私を差し出す事で、零司さんを貰うというのは等価交換とは到底言えない。
欲しいと思うものが大きすぎると判っているのに、それでも望まずにはいられ
ない。
そして、諦める事も出来ない。

自分が欲しいと思ってしまえばそれは絶対だから。
強欲で、貪欲で、我侭な私が望んでしまったのは零司さんそのもの。

欲しくて欲しくて堪らない。

艶めかしい唇も、熱をおびて甘く輝く瞳も、全部自分だけのものにしたい。

「んっ、うぅ……っ」
「湿った感じがするな」
下着の上から私の下腹部を指で弄りながら彼が言う。
敏感な突起の部分に指が触れてくるたびに身体が震える。
でも、甘く湧き立たされている快感は滲むような小さなもので一層身体が焦れ
てきてしまう。
胸に触れてきている彼の舌もそうだった。
柔らかな快感が生まれるものの、私が欲しいと望むそれには遠く及ばず気が狂
いそうになる。
気持ち良くないとか、そういうのでは決してない。
ただ、今欲しいものがもっと大きい快感だというだけで。
「も、駄目……です」
「駄目っていう程、何もしてねぇだろ」
「で、でも、辛いんです」
身体を押し付けるようにすると彼が笑った。
「やらしいな」
「我慢出来ないです、零司さん……入れて下さい」
紐でサイドが結ばれているショーツのリボンを彼が解く。
「どれぐらい我慢出来なくなっているのか、見せてみな」
「……ぅ、は、はい…」
服を脱ぎ始めている零司さんの目の前で、私は足を開き身体の中心部が彼に見
えるようにした。
「よく見えないな、そもそも濡れてるわけ?」
――――判っているくせに。
そう思いながらも、私はその部分を指で押し広げ露が滴りそうになっている部
分を彼に見せる。
「ねぇ、自分が今どういう格好をしているのかって自覚してる?」
小さく笑いながら言う彼は心底楽しそうに見えた。
「い、意地悪、です」
「自分で弄って見せて」
「え、え??」
「その、突起してる場所とか、弄って俺に見せろと言っている」
「す、凄い、意地悪、ですよね」
「そうかな」
そんな事は出来ない、と思う気持ちよりも、今この身体の中で燻っているもの
をどうにかしたくて私は言われるがままに敏感な場所を自分で触って見せる。
「足を閉じたら俺から見えねぇだろ? ちゃんと開いて、それから口はこっち
だ」
顎を持たれて向かされた先には、剥き出しになった零司さんのそれがあった。
「あ……ぅ……ふ」
そろそろと、その大きくなっているそれを口に含むと、更に大きさを増した。
口で性器を愛撫させられても、やはり嫌悪はなかった。
零司さんの姿かたちが美しいとはいえ、その部分も美しいかと言えば大きさこ
そ違えど他の男性とそうは変わらない。
(変わらない、筈なんだけど)
そこを見せられての興奮の度合いは格段に違った。
凶暴に見えるほど大きく反りかえったそれは張り詰めていて硬い。
口や舌で愛撫する度に先端から溢れるとろりとしたものにも、私はひどく興奮
させられた。
興奮させられるから、どんどん愛撫の仕方も大胆になり我を忘れる。
「ああ……凄く気持ち良いんだけど、手が休んでるぜ? ちゃんとして見せて」
「ん、ふ」
彼のものを口で愛撫しながら、自分の泥濘に触れる。
欲望が顕著に溢れている部分に触れると身震いがした。
「擦るだけじゃなくて、指を入れて見せて」
零司さんは今どんな表情を浮かべながらそんな事を言っているのだろうか。
今の私は口でしているから彼の表情をうかがい知る事は出来ない。
ゆっくりと濡れている身体への入口に指を埋めていく。
体内への刺激に身体がぶるっと震えた。
「ん、ぁ……ぁ」
声が漏れると、口腔内にある固体が大きさを増す。
「気持ち良い? 自分の指でも感じるんだ」
首を振ると彼が笑う。
「違うって事はないだろ? やらしい光景だな、自分でもしょっちゅうそんな
事やってるの」
言われたくない事を探られて、身体がびくりと跳ねてしまう。
「ああ、してるんだ?」
首を振っては見たものの、もう遅い。
「俺の身体だけじゃ満足してないって事?」
「っ、ち、違います」
口から一度彼のものを出してから顔を上げると零司さんは予想通りに楽しそう
な表情を浮かべていた。
「違うのなら、どんな時にするの?」
「……しょっちゅうとか、したりしないです」
「だから、どんな時にするんだって聞いてるの」
「零司さんに……会えなかった時とか……です」
「俺に会えなかった時って??」
「そ、その……零司さんが出張に行ってたって……時、です」
「ああ……あの時ね、へーえ」
薄く笑う彼を前にしていたたまれない気持ちになる。
「身体が寂しくなっちゃったんだ? それとも快感が欲しかった?」
「……両方、です」
「ふぅん、快感に従順なのはいいけど、危ない女だな」
「え? 危ないって……」
「好きで一週間おまえを放っておいたわけじゃなかったけど、ちょっと今ひや
りとした」
「……何度も言いますけど、私はこれでも誰が相手でもいいわけではないです
よ」
「へーえ、誰でもいいわけじゃないねぇ、じゃあ、ひとりでした時って誰を想
像してしたの?」
「え? あ、そ……そんなの……」
「ああ、想像してやったんだ?」
誰も想像したりしてないと答えなかったから結局私は言いたくない事を全て言
わされてしまう。
「想像の中での俺は優しかった? それとも、酷い事した?」
くくっと彼は笑った。
――――意地悪そうな表情で。






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