「は……っ、はぁっ、う」 ベッドに倒れこんだ私の頭を零司さんが撫でた。 「何か飲むか?」 頷くと、彼はベッドから降りて小さな冷蔵庫から飲み物を取り出し、戻ってく る。 「起き上がれる?」 笑いながら彼はそう言った。 「…………ぅ、は、い」 すっかり重くなってしまった身体を起こすと、キャップを開けたミネラルウォ ーターのボトルを零司さんが渡してくれる。 「……ん」 冷たい水が喉を通っていく感覚が気持ちよく感じた。 「大丈夫か?」 「……の、わけ……ないですよね」 「あぁ、そう?」 ひょいと私からボトルを取り上げ、零司さんもひとくち水を飲んだ。 「じゃあ、あとはもう寝てるだけでいいから」 「……え?」 「“え?” じゃねーよ」 キャップを締めたミネラルウォーターのボトルをベッドの傍に置いてあるサイ ドテーブルに置くと、彼は私を押し倒した。 「俺がまだだっての」 「……は、はい」 「ん」 コンドームの小さな袋を破いて手早くそれを装着させると、零司さんは自身の それを私の身体に宛がってくる。 そしてゆっくりと身体を繋げてきた。 「もう少しだけ耐えて」 耳元で優しく囁かれる。 「……もう、ひどくしたりしないから」 とく、と胸が高鳴る音が聞こえた気がした。 ついばむような小さなキスを彼は何度も繰り返す。 ――――こんな落差、ずるい。 狂うような快感で散々いたぶっておきながら、まるで別人のように優しく身体 を撫でてくる。 相手が零司さんだから、どんな風にされても結果的に私は夢中になるのだけれ ど、堪らない気持ちになってしまう。 「零司……さん」 「好きだよ、花澄」 「好き、です」 一度は手放した快感が再び戻ってきて、思わず息を詰める。 「……ぅ、う……零司さ……ん」 「感じるんなら感じていい、だけど……俺も、そうはもたないからな」 「わ……たしは、もう、いい……んです」 「充分に感じてくれた? 足りたのかな」 「その質問は、いじ……わるです」 彼は、ふっと笑った。 「我慢させたのが俺である以上、満足させるのも俺の役目だろ」 「ん……ぅ、でも……限度、とか……ありますよね?」 「限度? なにそれ」 私の片足を肩に担ぎ上げて、彼は深い場所に挿入してくる。 「あっ……ぅんっ」 「……イイ声だされちゃうと、出しにくいな」 「……す、すみません」 「ん。いいけど……でも本当、もう我慢出来ないから」 小さく息を吐いてから、彼は屹立したその部分を抜き差しさせた。 我慢しようと思っても甘えるような声が零れてしまう。 「あ……ぁ、あっ……ふ」 「……可愛い声、出しちゃって」 内壁が大きく膨らんでいる零司さんの欲望と擦れあっているから、どうしても 切ない快感がそこから生まれてしまう。 「ん……んっ」 彼が達しやすいようにと唇を噛んだり口を手で押さえてみても甘えたようなく ぐもった声が出てしまった。 「……なんか、それ、イケナイ事してるみたいで凄い煽られるな」 「ん、ぅ……?」 「はっ……、ぁ……花澄」 「……っ」 切なく漏れる彼の吐息が私の耳をかすめる。 「……花澄、ん……滅茶苦茶、気持ちいい……」 そうでなくても普段からその声は艶っぽさが含まれているのに、今は艶めいた ものが際立って聞こえてくる。 零司さんの声に下腹部がきゅっと切なくなった。 「く……っ」 「れ、じ……さん……ぅ、ン」 「……あぁ……おかしく……なる……花澄っ」 強く身体を抱き締められる。 私の内部も、何度もいかされているというのに、もうその直前が見えていた。 でも“近い”事を言ってしまえば、彼が自由に出来なくなってしまうと思えて 唇を強く噛み締める。 「花澄、好きだよ」 強く噛んだ唇は、零司さんの口付けによって甘く解かれる。 「ぁ……零司さんっ……す、き」 「……おまえ、ずっと俺を好きでいてくれる?」 「ず……っと、です、変わらない……んぁっ」 小刻みに揺らすような律動が、大きく抜き差しするものへと変えられる。 「は、ぁあっ……ン!」 「おまえは、ずっと俺のもの?」 「そ……で、す……ぁっ」 「花澄……愛してる」 重ねられた唇を割るようにして舌が入り込んでくる。 柔らかな濡れたその舌に、私は自分の舌を絡めた。 「ん、んふ……ん」 おかしくなる。 どんな卑猥な攻めよりも、今こうして甘く囁かれ、見詰められながら貫かれて いるほうが狂いそうな情欲に煽られてしまう。 「や、ぁっ……あ」 「……っん、花澄……こっち、見て……俺を見て」 「ぅ……零司、さ……ぁ、ごめ……な、さい」 「な、に……が?」 「い、きそう……なの」 「ああ、そう……だろうね」 「や、ぁ……ん、あっ、あぁ」 「目、閉じるな……ちゃんと、俺を見て」 目を閉じると彼はそう言って自分のほうを向くように命じてくる。 甘い光で満ちた切れ長の瞳と視線がぶつかるといっそう身体は高まり、意識が ぶれていく。 「零司さん……っ」 「……何度だって、いいよ、いかせてやるから」 余裕なさそうに眉根を寄せる彼の表情が堪らなく色っぽいと感じた。 「……ぃ、ちゃう……っ」 「ああ……イって……花澄っ」 気が触れそうなくらいの強い快感に襲われる、強くお互いに抱き締めあって、 やがて零司さんの身体が震えた。 「……死ぬ……やばい」 「……え?」 「って、思った」 大きく息を吐いてから、彼は私の体内から自分の身体を抜き出した。 そこからばたりと覆いかぶさるようにして私の身体の上に倒れてくる。 「れ、零司……さん? 大丈夫ですか」 「おまえ、本当……気持ちよすぎなんだよ」 「え? あ、あの……」 「俺を殺す気?」 そう言って顔を上げた零司さんは、もういつもどおりの彼だった。
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rit.〜りたるだんど〜の零司視点の物語