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rit.2〜りたるだんど〜 STAGE.21


「……本当、加減をして下さい」
ぐったりと、零司さんに寄りかかるようにして身を寄せると彼が笑った。
「おまえが望んだ事なんじゃないの?」
「零司さんは、やりすぎなんです」
「やりすぎと言われてもねぇ」
くくっと彼は笑ってから、シャワーのお湯を私に浴びせ、身体にかかった零司
さんの体液を流した。
「加減とか判らねぇし」
「そういうところ、自由ですよね……」
「嫌だとでも言うのか?」
「嫌じゃないですけど、もうふらふらなのは確かです」
「花澄はもっと体力をつけるべきだね」
「……そっちですか」
恨みがましく見上げてみても、彼は鮮やかに笑うばかりだった。
「おまえの事はずっと抱いていたいと思わされるんだよ。抱いてる瞬間は満ち
足りた気持ちになるけど、こうして離れてしまうと心もとなくなる」
「心もとない?」
「ああ、別々の人間なんだなぁって感じてしまうからかな」
浴槽の栓を抜いてお湯を流しながら彼が言う。
「おまえとは、繋がっていたいという気持ちが強いんだよ。身体だけじゃなく
てさ」
彼の言葉は嬉しいと思えるそれだった。
「とても嬉しいです、私には勿体無いぐらい」
「勿体無いとかねぇよ」
零司さんの微笑みに心が温かくなる感じがした。
「俺に一番近い場所には、いつでもおまえに居て欲しい」
「……はい」
こめかみのあたりに、彼の唇が触れた。
「他人を求める気持ちが、こんなに強くなるとはね」


恋愛はしてきたつもりだった。
だから誰かを想う気持ちは知っていると思っていた。

だけど、今の私が抱えている感情は、今までのどの想いとも違うから初めて恋
をした時よりも困惑の度合いが大きいような気がした。

零司さんの傍に居たい。
彼が創る世界の中で生きていたいと強く望んでしまうから、幸せだと思うほど
に泣きたくなるような感情が生まれてしまうのだろうか。

「花澄?」
手を伸ばし、零司さんの身体を抱き締めると彼もそれに応じるようにして私を
抱き締めた。
「……好きです」
口にした言葉がもどかしくさえ感じてしまう。
貴方を強く想う私の感情は、もっと違うものなのだと伝えたくても相応しい言
葉が浮かんでこない。
「俺も、好きだよ花澄」


欲しい言葉には違いないのに足りないと思ってしまう自分もいた――――。



******



翌朝。
ホテルをチェックアウトして自宅に戻るとすぐに、零司さんはギターをケース
から出してスタンドに立てかけた。
「これはおまえのものだから、好きな時に弾けばいいよ」
「あ、はい、ありがとうございます」
「弦もライトゲージならそこの引き出しに入っているから自由に使ってもいい
し、好きなものを買ってきてもいい」
「はい」
「最初のプレゼントがギターってのも、色気がない感じがするけどな」
彼は溜息混じりに笑って見せた。
「とても嬉しいですよ?」
「だったら、良いんだけど」
隣に座る零司さんに私はそっと身体を寄せた。
「何? したいの?」
「……違います」
笑う彼の横顔を見ながら私は聞く。
「零司さんは、プロになる事は完全に諦めたのですか?」
「え? ああ、そうだな。俺には必要ない世界だって判ったし」
「そうですか……」
「音楽に対してがむしゃらにはなれなかったし、何が何でもとは思えない以上
やるだけ時間も金も無駄だろう」
「お金?」
「俺が出すわけじゃねぇけどさ、CDを作って流通させてっていうのには金が
かかるだろ? そういうのがね、無駄だなって思うんだよ」
「……」
「作るのがって意味じゃねぇよ、俺のCDを出すのには無駄だと思うだけだ」
「そうですか」
「まぁ、金がかかる以上、売る為のもんを作らないといけない気持ちは判るけ
ど、許容できないんだから仕方ないだろ」
「そんなにラブソングは嫌いなんですか?」
「嫌い。でも、今は昔ほどは嫌いでもないかな」
そう言って彼は意味ありげに笑った。



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rit.〜りたるだんど〜の零司視点の物語

 

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