「可愛いな、おまえは」 息を乱す私の肩に、零司さんは小さく口付けてきた。 その僅かな刺激にも、快感に身体が震える。 私の中にある零司さんの固体が、まだその熱も硬さもそのままだったから余計 煽られるのかもしれなかった。 「……れ、いじ……さん、も」 「俺も、何?」 「いって……下さい」 「中で出せって意味?」 「ちっ、ちがいま……」 「そんなに頑なに拒まなくてもいいだろ」 くくっと彼は意地悪そうに笑った。 「もっとゆっくり、楽しませろよ」 そう言って彼は小さく身体を揺らした。 「んぅっ」 「花澄の中は……本当、気持ちが良いな。ずっとこうしていたくなる」 「……れ、いじ……さん」 彼がこのままでいたいという感覚と、私がこのままでいて欲しいと思う感覚は 違うのかもしれなかったけれども、私も同じように思っていた。 ずっと、こうしていたいって。 繋がっている部分は一箇所だけだったけれど、こうやって繋がっている事の安 心感みたいなものはとても大きかった。 人の気持ちは目には見えない。 自分の想いでさえもそうだ。 だけど、こうやっている間は彼のものにされているという実感が大きく感じら れる。多分、それ故の安心感だろうと思えた。 彼に昇り詰めさせられた身体が、またひとつの快楽を求めようとし始める。 心と同じように身体も貪欲だった。 もっと深く、もっと沢山の快感を欲していた。 足りないわけでは決してない。 私が、貪欲なだけ。 思わず動き出す腰に彼が笑った。 「おまえは本当、セックスするのが好きだよな」 「……零司さんに、抱かれるのが……好き、なんです」 「そう?」 「……そ、う……です。でも、そんなの……信じて貰えないかもしれないです が」 再び生まれ始めた快感に意識が朦朧としてくる。 「信じて貰えないと思うんだったら、俺を信じさせるようにすればいいだけの 事じゃねぇの?」 「どうやって??」 「もっと、愛してるって言え」 形の良い唇の端を少しだけ上げて零司さんは笑った。 「もっと俺を欲し、求めろ」 「……愛してます、想いを向けたいのも、向けられたいのも、零司さんだけな んです」 私の言葉に、彼は微笑んだ。 「正面から……抱いて欲しい、です」 「ああ」 後ろから貫いていた固体を、彼は私の身体の中から引き抜く。 湯船の中で座っている零司さんの上に跨るようにして再び繋がった。 彼の手が伸びてきて、私の頬を撫でる。 「花澄……愛してる」 「は、い……」 「……おまえは……ずっと、俺を愛してくれるか?」 「え?」 酷薄そうな瞳が、揺らいでいる。 何故、貴方がそんな瞳をして私を見るの? 愛を乞うているのは私の方なのに、まるで逆のように思えた。 「ずっと、愛します」 私がそう言った瞬間、腰を掴まれ激しく内部を掻き混ぜられた。 どうとも例えられない快感が、彼との摩擦により生まれる。 「んんっ!」 「……花澄、おまえだけは、絶対に手放さない……おまえが俺をどんなに嫌っ ても、逃げ出したいと望んでも、離しはしない」 彼の唇が重なり、私の唇と何度も触れ合う。 それはまるで私が何か言う事を許さない仕種にも思えた。 重なった唇の隙間をぬうようにして彼の濡れた舌先が私の舌に絡んでくる。 ――――離さないで欲しいと望むのは、私の方。その私が何故貴方を嫌ったり、 ましてや逃げたいと思うの? 「……離れないです……私は」 「花澄……」 身体の中にある零司さんの固体がいっそう膨らんだ気がした。 「……好きだよ、愛してる。ずっとおまえが欲しかった……」 「……れ、いじさん?」 ずっと、って? 出し入れされる熱に溺れ、意識が遠くなる。 身体の奥に押し込まれた固体の先端が、私が良いと思ってしまう場所を何度も 擦っていく。 身体に与えられる快感がより強くなって乱される。 「零司……さん、が、私を……欲しい?」 「そう、俺はずっとおまえを自分のものにしたかった。抱きたいという意味で も、それ以外の意味でも」 「そんな様子、全然……ああっ」 彼に腰を掴まれ激しく揺さぶられる。 私を揺するだけではなく、零司さん自身も動いて何度も激しく突き上げてくる。 「こうすると気持ち良いか?」 小さく彼が笑うようにして言った。 「だめ、あたって……」 「気持ち良過ぎる? だったら尚更止められないな」 私の内部いっぱいに彼が入り込んで、その先端が執拗に奥を攻めてくる。 「それ、いや……」 「イイ、の間違いだろ?」 「だめっ……すぐ、イっちゃう」 「いけよ」 「そ……んなに、私、ばっかり……」 「沢山いけばいいだろ? おまえのいく顔ってやらしいからな、煽られる」 くくっと彼は笑った。 「奥を突かれるのがいいんだろ? それから、掻きまわされるのも」 言葉を吐くと同時にそれと同じ動きを彼はしてみせる。 「あっ、ああっ」 固体の先端では奥を刺激し、その側面では私の内壁を刺激してくる。 彼の長さや太さは私を溺れさせるには十二分なそれだった。 「やぁっ……零司、さんも……」 「俺がなに?」 「もっと、感じて……」 「感じてるぜ? おまえの中は、入れるだけでいきそうになるぐらいだからな」 快感がいっそう強くなって、彼に何かされなくても身体が狂ったように動いて しまう。 「あ、ああっ……」 「気持ちいい? イイって言えよ」 「いい……です、凄く……ぁ……」 出し入れされる固体が私の内壁を擦り、甘い快感を生まれさせる。 奥まで差し込まれたらその甘さはまるで凶器のように強くなっていく。 壊されそう。 だけど、その壊されると思ってしまうほどの大きな快感を求めずにはいられな くて、彼の腰の動きに合わせるようにして激しく自分の腰を振ってしまう。 「やらしい動き、するよな、おまえは」 「……だ、って……気持ち……いい」 「俺のコレはそんなにイイか?」 くくっと彼が笑う。 「いい、です……も……、ああ、だめ」 「いきな……花澄」 「ああ、零司さんっ……、い、やっ……あああっ」 びくびくと身体が跳ねる。 深く、そして強い快感が私を襲った。 何かが弾けるようなその感覚に身体が震えた。 「……花澄っ」 私を散々乱していた彼が吐精したのは、それからほどなくしてからだった。
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rit.〜りたるだんど〜の零司視点の物語