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rit.2〜りたるだんど〜 STAGE.36


「今日は面白いぐらいに簡単にイクんだな」
身体が震えるというレベルではなくて、寧ろ痙攣しているんじゃないかという
具合の私を見下ろしながら零司さんが言う。
「ナカがびくびくってしてて気持ち良い」
耳元で笑うように囁かれても息苦しくて答えられない。
「もう、だいぶ辛そうな感じだね」
くくっと彼は笑った。
「じゃあ、ちょっと休憩する?」
ちら、と零司さんを見上げるとまた彼が笑う。
「終わらせる気はねぇよ? だって俺はまだまだだし」
「な……ん、で」
「一度出してるだろ?」
薄く笑って彼は言う。
「休憩をしないんだったら、このまま続けるぜ」
「き、休憩、します」
「ん、じゃあ……水でも飲むか?」
「はい」
私の返事に彼はにっこりと笑って、自身のそれを私の身体から引き抜いた。
「んっ、ぅ」
「ちょっと待ってろ」
ベッドから立ち上がる彼を目で追いながら、体内の喪失感を覚えていた。
身体は楽になった筈なのに、彼が入り込んでいない体内を寂しいと思ってしま
う。
長く繋がっていたからそんな風に感じてしまうのだろうか?

ミネラルウォーターのボトル片手にキッチンから戻ってきた彼は屹立してい
たその部分をジーンズにしまい込んでいた。
「自分で飲めるか?」
「あ、は……はい」
のろのろと身体を起こすと零司さんは私の横に座り、まるで支えるようにして
肩を抱いてくる。
「ん、ぅ」
冷たいミネラルウォーターをひとくち飲んで、私は息を吐いた。
「辛い?」
零司さんは覗き込むようにしてこちらを見てきた。
辛いと言えば、もう終わりにするのだろうか?
彼が入っているときは、もう終わりにして欲しいと思ったりもしたのに身体が
離れてしまうと寂しくて堪らないと感じてしまうのも事実だったので、なんと
もいえない気持ちになってしまう。


手を繋いだりしている時だって確かに彼を感じる事が出来るし温もりも感触も
与えてもらえるというのに、身体を繋げる行為はやはり別物だと思えた。
快感をもらえるという事以上の満足感みたいなものがそこにはあるような気が
して。
「お願い……が、あります」
「なに?」
「零司さんも裸になって、欲しいです」
私の言葉に彼が笑った。
「それって続けるって意味?」
零司さんは私の頬を撫で、キスをした。
触れ合った唇の温度が彼の方が高いと思うのは、冷えたミネラルウォーターを
飲んだせいなのだろうか?
少しだけ唇が離れたとき、彼に聞く。
「やめるつもりだったのですか?」
「いや、そんな気はさらさらねぇよ」
切れ長の瞳を細めて零司さんが笑う。
「意地悪ですね」
だけど、彼がとても好きだと思えた。
激しい感情に振り回される中でも、ぶれずにいる想いが心の中にはある。
零司さんに向けた想い、そして説明しようのない心の熱を手放せないと必死に
護りたがる感情を、私はいつでも抱き締めているような気がした。
身体の昂ぶりは鎮まる事があっても、心の中の熱は消える事がない。

「私は、求められているんでしょうか?」
「……求めているよ、いつだって」

逞しい彼の身体が私を包む。
零司さんの背に腕を回し、彼の素肌の感触を掌で感じた。

失いたくない温もりがはっきりとした形になっているような気がした。

彼に抱かれると“幸せだ”と思える。
与えられる快楽に、いつも姿を潜めてしまうけれども、いつだって私はそう感
じている。
心の中がくすぐったくなるような、そして泣き出したくなるような不思議な感
覚のそれではあったけれど。

「……とても、幸せです」
「え?」
「零司さんが居ると、私はとても幸せだと、思えます」
「それは良かったな」
彼の指が私の頬をくすぐった。
「それじゃあ、おまえはこの先ずっと幸せで居続ける事が出来るわけだ」

零司さんが動き始めると、優しかった感情が激しいものへと変わっていく。
だけど。
心の中に灯っている想いは消える事無く静かにその火を揺らしているような気
がした。


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rit.〜りたるだんど〜の零司視点の物語

 

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