ｒｉｔ.　〜りたるだんど３〜　STAGE.15

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マンションに帰り部屋に入って、林檎の袋を床に置くなり零司さんに抱き締め
られる。
「れ、零司さん……」
「お帰り」
「え？　あ、はい……ただいま……です」
「うん」
くくっと彼は笑った。
「おまえが家にいないと、落ち着かない」
「……」
笑って言う零司さんの言葉に、心の中がくすぐられたような感じがした。
そっと抱き締め返すと彼の腕の力が僅かに強まる。
呼吸する度に鼻腔をくすぐる彼の香りや、零司さんの体温、その息づかいを身
近に感じるだけで例えようもない幸福感が私を包む。
「花澄」
重なり合う唇。
柔らかな温度なのに、私はそれに溶かされていく。
「……零司さんが欲しいです」
「俺の、なにが？」
「大きいくくりでは全部なんですけど、今は――――」
彼が笑った。
「堪え性がないのは、どっちなんだろうねぇ？」
「零司さんが意地悪だっていうのは判っているので、あなたが仕掛けてくるま
で待っていられないんです」
「俺は仕掛けてたと思うけど？」
「……外では駄目ですってば」
口角を上げて彼は笑い、私の背中を撫でた。それだけでも身体がぞくりとして
しまい、声が出るのを寸前で堪えた。
「出しなよ、声。いい声で啼いて、それを聞かせな」
洋服の中に零司さんの手が入り込み、ゆったりと胸を揉まれる。
多分、服の上からであっても容易く感じてしまうんだろうけれど、彼の体温を
身体に感じるとそれは顕著だ。
広がる感覚に心も身体も震える。
「……ぁ」
「ね？　我慢できなくなってるの、自分だけだと思ってる？」
耳元で、囁くようにして彼が言う。
――――屹立したその部分を私の身体に押しつけながら。
「意地悪するような余裕なんて、こっちにはないんだぜ。言っておくけど」
その言葉が終わると同時に私の身体が浮いて抱き上げられ、奥にあるベッドま
で運ばれる。
重なる身体に心臓が跳ねた。
「おまえがいなかった時間を俺に返して。その身体を代償に」
「……はい」
満足そうに笑った後、零司さんは貪るようなキスをする。
それに私が応えると行為に拍車がかかった。
いつもより少しだけ乱暴に服を脱がされ、全裸にさせられると事を急かすよう
に彼の唇や舌が私の身体のある一部分を執拗に舐め回した。

聞こえてくる水音は、彼の唾液なのか……それとも。

「っ、あ……」
差し込まれた指に、高い声が出てしまう。
「もう、いい？」
指を動かしながら聞いてくる零司さんに私は頷く。
「……欲しい、です」
「やらしい目。だけど、そういうのも含めて俺は」
私の体内に指を差し込み、動かしながら彼は器用に自分の服を脱ぎ捨てる。
零司さんの身体が、その肌が、露わになると急速に私は高まってしまう。
男らしい肉体にも彼が男だと象徴される部分にも、全てに私は欲情させられた。
入り込んでくるその塊を、悦ぶようにして全身が震えた。
「花澄……んっ……」
漏らされる甘い吐息や私の名を呼んでくれる声、全てが愛おしく思える。
「好きだよ」
繰り返される愛の言葉。
どんなに乱されていても、零司さんの言葉は私の心にすとんと落ちてきて埋め
込まれていく。
「……好きです、誰よりも……」
「ああ」
「零司さん、だから……ずっと傍にいて下さい」
答えるようにして彼に強く握りしめられた手が、その強さで痛みを覚えたけれ
どそれすらも愛おしかった。

「どちらかが、いなくなって駄目になるのは俺の方だよ花澄……だから、離さ
ないし……離れるなんてできない。もう、多分、最初から……俺は“そう”だ
った……」
「……嬉しくて、私にはもったいないような言葉です」
「馬鹿かおまえに言わないんだったら、他の誰に……言えっていうんだよ？」
激しくなる抽送に、甘えたような高い声が出る。
そんな私を見下ろしながら、零司さんは綺麗な切れ長の瞳に甘い光を灯す。
「あ……ぁ、もう……全部、欲しいです……零司さんが欲しい」
「もっと、求めな。俺がおまえを求める以上に、俺を求めてきなよ」
「……ぅっ……ん……零司さん」
「……ねぇ？　本当に、俺を愛してる？」
「っ、ん……あ、ぁっ」
囁かれる甘えたような声と内部に与えられている強い快感に、私はあっという
まに上り詰めさせられた。
「愛しているのかって、聞いてるんだけど？」
「い、じ……わる……っ、今、動いたら、あっ」
「動いたら、何？　またいっちゃうって？　そんなのおまえの望むところなん
じゃねぇの？」
くくっと彼は笑う。
それこそ、二重人格者のように。
さっき甘えた声を出した人とは思えない笑顔だから本当にたちが悪い。
「……花澄、もっとやらしいコト言って。俺のが気持ちイイって、俺のじゃな
いと駄目って言いなよ」

彼の望む言葉は私がどんなに羞恥を覚えても、結局おうむ返しのようにして言
わされるはめになる。
そしてそれ以上のことだって次々と要求されて言わされる。

それは堪らなく恥ずかしかったけれど、私がそうすることによって彼が大きく
満足もするし興奮もするということが判ってしまっているから従うよりほかに
なかった。

――――思えばそれは、初めて彼に抱かれたときからずっとそうだったような
気がしたけれど……。




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