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rit. 〜りたるだんど3〜 STAGE.7


「満足出来た?」
零司さんはそう言って、少し意地悪そうに笑った。
「……判ってるくせに」
「俺はまだ、ヤリたりない感じがするけどな」
「れ、零司さん、最近本当……底がない感じですよね」
「そうだねぇ」
他人事のように呟いて彼は笑った。
「前はこんなんじゃ、なかったんだけどな」
「前って?」
「いつも抱いてなければ気がすまないとか、昔は思った事なかった」
零司さんは私を抱き締めながら言う。
「他人に深い興味を抱く感覚って不思議な感じだな」
「……興味を持ってくれているんですか? それは……私にって意味ですか」
「当然だ、俺はおまえ以外でこれほどまでに興味を持った人間はいないよ」
「嬉しいですね、零司さんにそんな風に言っていただけるのは」
「ああ、そうだろうな」
くくっと彼は笑った。
「だから、おまえにも同じように思ってもらいたいぜ?」
「……思っていますよ、零司さんほど不思議な人はそうそう他にはいません」
「不思議とかってなんだよ」
彼の素肌の胸に顔を寄せる。
肌の感触も、体温も、聞こえてくる心音も、私はその全てが好きだった。
ただ黙って抱き締められているだけで、私は幸せで堪らない。
心の内側から滲み出るようにしてじわりと広がる幸福感は他の誰かでは到底得
られるものではないと思えた。

唯一無二というのはこういう事なのだと感じる。
彼に代わる誰かは居ない。
そう私が思うから、彼にとっての“私”も同じであって欲しいと望み、願う。
ぎゅっと強く彼を抱き締めた。
「花澄?」
「ずっと傍に居て下さいね」
「ああ、望まれなくてもそうする」
くっと零司さんは笑った。
「……どこかひとつでも違ってしまえばおまえとは出逢えなかったのかと思う
と、過去を振り返ってみる事ですら俺は怖いよ」
「零司さん……」
「ま、ちゃんと正しい道を選んできたってわけだな」

重なり合った唇がお互いの体温で溶けていくような錯覚がした。


人生の分岐点は何度も訪れる。
もしも、零司さんがプロのミュージシャンになっていれば私との接点は永遠に
なかっただろう。
出逢わなければ“出逢えなかった”と嘆く事もなかったのだろうけど、だけど
もし彼と出逢えていなければ今私の隣には誰が居たのだろうかと考える事は少
しだけ怖い気がした。

「別の誰かなんて、嫌です」
「そうだな」
零司さんは、ふっと小さく息を吐いた。
「ところでさ」
「はい?」
「挿れてもいい?」
「え?」
気がつけば、私の身体に密着して当たっている彼のその部分の形が変化してい
た。
「……わ、たし、今日ここから帰れるんでしょうか?」
「どうかな」
零司さんは身体を起こし、私を組み敷く。
「でも先に誘ったのはおまえだし、いいんじゃねぇの? 帰れなくても」
「誘ったのは私なんですか? ……っあ」
小さな衝撃が身体にはしる。
その後すぐに大きな存在感が身体の内部を支配した。
一気に貫かれ、最奥にはもう彼がいる。
繋がり合う事で爪先まで痺れるような感じがした。
「んんっ」
「……いつだって、俺を誘っているのはおまえだよ、花澄」
「う……っ、ん……零司、さ……」
「その、甘えるような声も、潤んだ瞳も、俺を誘う為のものだろ?」
小さく私の耳元で囁いてから、耳朶を甘噛みしてくる。
その刺激は内部の交じり合う甘さをより強く感じさせ、私を乱した。
「花澄の、柔らかい肌も……身体の匂いもその全部で俺を誘ってきて堪らない
気持ちにさせる、だから我慢なんて出来ないんだぜ?」
彼が動くたびに結合部から聞こえてくる水音に零司さんは小さく微笑んだ。
「美味しそうな蜜が溢れてきてる、さっきの余韻? それとも」
「ん……ぅっ」
「……もう感じてくれちゃってるの? 挿れたばかりなのに」
大きく抜き差しされれば、擦れ合う具合も大きくなり気が狂いそうになるほど
の甘美な感覚に意識が奪われる。
「可愛いね」
彼の言葉や声に下腹部がきゅっと締まる感じがした。
身体全部が切ない感覚に支配されていく。
「ふっ……ぅ、零司……さん」

私を支配する全ての手綱を握っているのが彼であるなら、どんな風にでも支配
されたいと私は思っていた――――。







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rit.〜りたるだんど〜の零司視点の物語

執着する愛のひとつのカタチ。



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